宇宙が原因で停電も!?遠くて身近な宇宙のお話【気象予報士・森朗のお天気タイムマシン】

今週月曜(2025年9月8日)の未明、約3年ぶりに「皆既月食(かいきげっしょく)」が日本各地で観測されました。夜空を見上げると、宇宙の遠さと広さを感じますが、実は私たちの生活に影響を及ぼす、意外と身近な存在だったんです。
(アーカイブマネジメント部 萩原喬子)
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宇宙が原因で放送事故に!?
昨年7月、民放局でCMが放送されないトラブルがありました。この原因は「宇宙」が関連していたことをご存じでしょうか?
番組やCMを送り出す機器に異常が発生したのですが、その原因は「中性子線の影響」でした。中性子線は宇宙から地表に降り注ぐ宇宙線が大気中の原子に衝突することで発生します。その中性子線が機器の半導体に衝突し、機器が誤作動を起こしたのです。
この事態を受け、現在は再発防止のために対策が講じられています。
気象予報士 森 朗氏:
宇宙にはたくさんの粒子が飛んでいるため、ピンポイントの故障もあれば、大規模な障害が起こることもあります。それは宇宙の状態にもよるのですが、宇宙にも地上の天気と同じように「穏やか」や「嵐」などの天気があるのです。
宇宙天気予報で宇宙の状況を知る
宇宙の状況は「宇宙天気予報」で知ることが出来ます。これは情報通信研究機構が宇宙を観測し、影響を予測して、地上の天気予報と同じように発表するものです。1988年から「宇宙天気」の予報が始まり、2019年からは24時間体制で監視されています。
「太陽フレア」って何?
宇宙で私たちの生活に一番影響が出るのは「太陽フレア」です。「太陽フレア」とは太陽の表面、特に黒点近くで起こる爆発現象です。小規模なものではオーロラが見える程度ですが、大規模のものになると電磁波や様々な粒子が地球に届き、私たちの生活に深刻な影響が出てしまいます。
過去の例として1989年3月にはカナダ・ケベック州の電力網に影響を与え、約10時間の停電が発生し、600万人に影響が出ました。また2003年には磁気嵐により多数の人工衛星が機能不全に陥り、NASAによると科学衛星・宇宙機の約59%が影響を受けました。
気象予報士 森 朗氏:
太陽は約11年周期で活動期が変化し、現在は大規模な爆発が起こる極大期に当たります。過去には大規模停電が起こったり、通信機器に影響が出ています。防ぐことは出来ませんが、こういうことが起こるんだということを知っておくのも大切です。
「太陽フレア」どんな影響がある?
太陽フレアが私たちの生活にもたらす影響は以下のようなものがあります。
▼スマホが使えない
▼消防・防災無線が使えない
▼広域で停電発生
▼船舶・飛行機の運航困難
▼カーナビやGPSの誤差
どれも私たちの生活が脅かされるものばかりです。
宇宙のおかげで日々の暮らしも支えられている
宇宙が私たちの生活を脅かす可能性がある一方で、私たちの暮らしを支えてくれる存在でもあります。例えば、私たちが毎日見ている天気予報は、宇宙に打ち上げられた気象衛星「ひまわり」からの情報が活用されています。「ひまわり」は地球全体を10分ごと、日本付近を2分半ごとに観測し、様々なデータを地上に送り続けています。このデータを元に衛星画像や天気図、台風の進路予想などが発表されているのです。
気象予報士 森 朗氏:
宇宙から見た情報がなければ、今の天気予報は作れません。9月12日は「宇宙の日」です。これから星空がきれいに見える季節になります。時には夜空を見上げて宇宙と私たちの生活のつながりに思いを馳せてみるのもいいかもしれませんね。