驚異の19歳・落合晃が男子800m日本人初の予選通過に挑戦 高校時代の恩師が明かす世界を目指したプロセス【東京2025世界陸上】

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2025-09-16 16:00
驚異の19歳・落合晃が男子800m日本人初の予選通過に挑戦 高校時代の恩師が明かす世界を目指したプロセス【東京2025世界陸上】

落合晃(19、駒大1年)が高校卒業1年目で東京2025世界陸上に挑戦する。落合は昨年高校生ながら日本選手権男子800mに優勝し、インターハイでは1分44秒80と日本人初の1分45秒切りをやってみせた。驚くべきは一昨年の時点ですでに、パリ五輪代表入りを狙っていたこと。今季も3大会で1分45秒台を出し、日本選手権は2連勝。安定した強さでこの種目14年ぶりの代表を決めた。必ずしも世界に近い種目ではない男子800mで、どんな取り組み方をして世界を目指す選手になったのだろうか。滋賀学園高・大河亨監督に落合の高校時代の取り組みを振り返っていただいた。

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高校2年時から本気でパリ五輪を目指していた

男子800mは世界から少し距離がある。
23年までの日本記録は1分45秒75。14年に川元奨(32、スズキ)が、21年に源裕貴(25、NTN)が出したタイムだが、世界記録とは4秒64差があった。世界陸上に出場した日本選手は、11年モスクワ大会の横田真人が最後(五輪は12年ロンドンの横田、16年リオデジャネイロの川元が出場)。

それでも落合と大河監督は本気でパリ五輪を狙っていた。昨年6月の日本選手権で高校生優勝を、それも1分45秒82の高校新で達成しながら、落合の悔しがり方は半端ではなかった。5月の静岡国際で、1分46秒54の高校新(当時)を出したことでパリ五輪を目指し始めたと思われたが、大河監督によれば高校2年時からだったという。

「2年の札幌インターハイに1分47秒92(当時高校歴代3位)で優勝して、次は何を目指すか落合と考えました。パリ五輪の参加標準記録が1分44秒70です。20歳を超えた選手が3秒縮めるのは大変ですが、高校生なら1年で3秒縮められるやろ、と。シニア選手もオリンピックを狙うと思ったので、そういったシニア選手が特別遠い存在と思わず、彼らに挑戦することでオリンピックにも挑戦できると考えました」

周囲からは8割方無理だと言われたが、2人とも無理という言葉は絶対に口にしなかった。

「指導の中で夢を持って、あきらめずに取り組むことの重要性を強調しています。端からできないと決めつけず、努力を続けた落合は素晴らしかったですね。落合のチャレンジは校内にも良い影響を及ぼしました。進路を決めるときに下を見るのでなく、上を目標にする生徒が増えました。甲子園に出場した野球部の生徒も、落合が日本選手権で悔しがっている姿を見て、学ばないといけない、と話していました。相乗効果が滋賀学園内に起きていたと思います」

大河監督は教育者として五輪挑戦を重視したが、今年の世界陸上を目指して選考会などを乗りきる際にも、昨年のパリ五輪を本気で目指した経験が役に立った。

高校生離れした前半のハイペース

落合の目標意識の高さは、前半400mの通過タイムの速さにも表れている。日本記録を出した昨年のインターハイは、F.ムティアニ(18、山梨学院高)がハイペースで引っ張ったこともあり、落合の400m通過は51秒38(日本陸連計測)と速かったが、それ以前から前半を速いタイムで入ることが多かった。前日本記録の1分45秒75を川元が出した時の400m通過は52秒2(筆者計測)だったが、落合は1分47秒92だった一昨年のインターハイも52秒83(陸連計測)で入っている。

大河監督は「1年時のインターハイでポケットされて(数人の選手に囲まれて)前に出ることができず、0.02秒差で予選落ちしたこと」がきっかけだったという。1年時の落合は6月のインターハイ近畿予選に、1分50秒19の高校1年最高記録で優勝し、関係者の注目を集め始めたタイミングでの出来事だった。

大河監督は「どうしたいんや」と落合に話しかけた。大河監督は種目を1500mに伸ばすことも選択肢の1つだと思っていたが、落合は「800mにこだわってやりたいです。今回(インターハイ)のように、人の後ろに付くレースはやりたくありません」と返してきた。そこから落合は、スタート直後から先頭に立つレース展開を行うようになった。

そのレースで勝ちきるためには、「1周目を52~53秒で入らないといけない」(大河監督)と2人は考えた。それを1年時10月の国体で実行し、1周目を52秒台で独走した。このときは2周目でペースダウンして1分56秒67の8位に終わったが、1周目の落合のスピードにスタンドがざわめいた。「落合は清々しい表情で、『僕はこのスタイルで行ききれるようにします』と言っていました」。そこから1周目を52~53秒台で入るレース展開が定着した。「そのペースで入っても、2周目を落ち込まないようにする」(大河監督)ことが、その後の2人の目標になった。

始めた理由は走りやすいレースパターンを貫くことだったが、それが2年時のインターハイ優勝後の目標設定と滋賀学園高の教育方針が相まって、世界を狙う落合が徐々にでき上がっていった。

下駄トレーニングで体幹のぶれない走りに

しかし1~2年時の練習は、そこまで800mに特化した内容は行っていなかった。

「チームで駅伝の練習をやっていて、その後に150mから200mを速いタイムで走っていました」と大河監督。それを2~3年時には、徐々に「パワー系、スプリント系の練習」も取り入れ始めた。「他の長距離選手はジョグを行いますが、落合だけ週に5日、パワー系の練習を行いました」。

ユニークな練習として、下駄を履いてのジョグや動きづくりがテレビ番組などでも紹介されている。腕立て伏せなどの補強メニューも下駄を手足に装着して行う。

「かれこれ8年やっていますが、体幹を中心にスムーズな体重移動をすることが目的です。今の選手はヒザから下で蹴り上げて走ってしまう傾向がありますが、適切なポイントに乗っていく感覚をつかめば、無駄な力を使わずにスピードが出ます。1本下駄と2本下駄がありますが、肩甲骨から骨盤を連動させる体の使い方ができるようになります。落合は抜群に上手かったですが、繰り返し行っていく中でさらによくなっていきました」

そのトレーニングの成果は、走り方にはっきり現れているという。

「1年生の頃は肩が上がって腕を抱え込むフォームで、浮きながら(上方向に跳ぶような走りで)必死な感じが強く出ていました。3年生になると体幹がぶれずスムーズに移動する走りに変わって、ラストになっても頑張っているように見えなくなりました」

大河監督が指摘したように落合の走りは“スパートした感”がなく、本当に全力を出しているのかと疑ってしまうほどだ。その走りでもしっかりとスピードは出ているから、他の選手との差は開いていく。

過去の世界陸上の予選通過ラインは、1分44秒台後半から1分46秒台。これは中・長距離の世界大会予選が、タイムよりも勝ち抜くことが重要になるからだ。そのためにはタイムも必要で、自己記録が1分46秒台では予選を通過する戦いに加わる余裕は持てない。その点で落合は、積極的なレース展開で1分44秒台までタイムを縮め、その戦いに加わる資格を持つに至った。だが世界陸上予選の最後のペースアップは、これまでの落合が経験していないスピードになるだろう。男子800mで予選を通過できた日本選手は過去にいない。落合が予選通過を実現できるかどうかは、“頑張っていないように見える走り”にかかっている。

(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)

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