大阪・関西万博が掲げたSDGsと高校生の「SDGs未来宣言」<シリーズ SDGsの実践者たち>【調査情報デジタル】

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2025-11-01 07:30
大阪・関西万博が掲げたSDGsと高校生の「SDGs未来宣言」<シリーズ SDGsの実践者たち>【調査情報デジタル】

大阪・関西万博が10月13日に閉幕した。最終週に行われた高校生による「SDGs未来宣言」と、万博が目指したSDGsとは。「シリーズ SDGsの実践者たち」の第48回。

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大阪・関西万博が掲げていた「持続可能な万博」

大阪・関西万博は158の国と地域が参加して、4月13日から10月13日までの184日間、大阪市の人工島「夢洲」で開催された。一般来場者は2557万8986人と発表され、想定していた2820万人には届かなかった。チケット販売枚数は10月13日時点での暫定値で2206万9546枚となっていて、こちらも目標の2300万枚を下回ったものの、一定の経済効果はあったと見られている。

運営面で掲げていたのは「持続可能な万博」だ。主催する2025年日本国際博覧会協会では、万博のテーマである「いのち輝く未来社会のデザイン」に基づいて、「EXPO2025グリーンビジョン」を策定。SDGsが目指す世界観の骨子を構成するPeople(人間)、Prosperity(豊かさ)、Planet(地球)、Peace(平和)、Partnership(パートナーシップ)の「5つのP」に沿った運営を目指してきた。

具体的な取り組みの一つが、省エネルギーや再生可能エネルギーなどの活用による温室効果ガスの削減。会期中の会場内での二酸化炭素排出量を、取り組みをしなかった場合と比較して3万9133トン削減することを目指した。これは約55万本のスギが1年間に吸収する二酸化炭素量に匹敵する。また、会期前後や会場外では、352万4747トンの削減に取り組んだ。

また、廃棄物の発生を抑制するリデュースや、再利用可能な部材を活用するリユースとリサイクルも進めた。会場内で使われた食器は回収してリユースしたほか、ごみについては再資源化するリサイクルにつなげるため、もやすごみからペットボトルのキャップまで、9項目にもわたる分別回収を行なっていた。 

高校生がこれからの世界を変えるアイデアをプレゼン

SDGsの目標に沿ったもう一つの取り組みが、2050年に向けた脱炭素社会の具体像を提示するなどの情報発信だ。先進的な技術である水素発電やペロブスカイト太陽電池を実装したほか、会場では脱炭素に取り組む中小企業による展示や、フォーラムなど、数多くのイベントが開催された。

イベントのうち、二酸化炭素を吸収して固定するコンクリートで作られたサステナドームを会場に、最終週の10月8日に開催されたのが「SDGs Quest みらい甲子園 Future Session 2025」だ。全国から集まった高校生がこれからの世界を変えるアクションアイデアを考えて発表し、2030年以降の未来を見据えて取り組む「Beyond2030」を意識して「SDGs未来宣言」をするもので、2700を超える応募の中から地区予選で最優秀賞を受賞した22チームと、全国からオンラインで23校が参加した。

参加チームはSDGsの5つの「P」のうち、People、Planet、Prosperity、の3部門に分かれてアイデアと活動実績を発表。どのチームも3分の持ち時間で、スライドを使いながら自らの取り組みを紹介し、「SDGs未来宣言」を行なった。また、会場と全国の高校をオンラインで結び、約700人の高校生がハイブリッドで視聴し、発表に対する感想を伝えていた。

各部門の最も優れたアイデアには賞が贈られた。社会の課題を人の力によって解決することを目指すpeople賞を受賞したのは、山口県立岩国工業高校「車椅子で渡り隊」。山口県岩国市の観光名所である錦帯橋を、車椅子の人でも渡れるようにするモビリティの開発を続けている。SDGs未来宣言では取り組みを世界に広げていく決意を表明した。 

「車椅子の方が安心安全に錦帯橋を渡ることができれば、同じような観光地や学校などでも運用できると思います。錦帯橋から世界へバリアフリーの波を広げていきます」

Planet部門では、8チームが気候変動対策や地域資源の活用などのアイデアをプレゼンテーションした。Planet賞を受賞したのは、鳥取県立青谷高校「ソーシャルアクション同好会」。大量のごみが流れ着く海岸を、ごみ拾いやごみを再利用した作品づくりなどを通して、裸足で歩ける海にするための活動を行なっている。

このほか、秋田県立大曲農業高校のチーム「31」は、強酸性の玉川温泉で採取できる湯の花を希釈水にすることで、稲作で使える農薬の代替品を開発。さらに、廃液をブルーベリー栽培に活用することにも成功した。また、渋谷教育学園渋谷高校のチーム「おにぎり」は、稲作におけるメタンを削減するためには温泉水の活用が有効であることを科学的に証明。この2チームにはそれぞれ協賛企業から賞が贈られた。

万博会場から「SDGs未来宣言」をする意義

Prosperity部門では、環境と経済の調和や、地域との共創など、豊かさで未来をデザインするアイデアを7チームが発表した。その中でProsperity賞を受賞したのは、宮城県農業高校「桜プロジェクトチーム」。高温や乾燥、塩害に耐性がある桜色活力剤を開発した。開発に取り組んだのは、猛暑などによって桜が枯れている状況を何とかしたいという思いからだった。

「きっかけは、東日本大震災後に植樹した希望の象徴である桜が、近年の猛暑や乾燥によって枯れてしまう例が相次いでいることでした。このままでは桜が全滅するという危機感を抱え、調査すると高温障害が一因であると判明。私たちは高温、乾燥、塩害に負けない桜の栽培法を構築し、地域と社会に笑顔を咲かせることを決意しました」

実証実験を行なった区では、生存率100%の結果が得られた。研究結果を世界に向けて発表すると、複数の国から桜色活力剤を使いたいと要請があり、作り方から使用方法までを共有している。

参加した22チームはそれぞれ自分たちの「SDGs未来宣言」を発信し、今後も取り組みを続けていく。みらい甲子園総合プロデューサーの水野雅弘氏は、万博の最終週に開催した理由と、高校生たちが発表したアイデアの意義を次のように説明した。

「これからのSDGsを担うのはどう考えても若者たちなので、2030年以降の未来を見据えて取り組む『Beyond2030』を意識して最後の週に開催しました。万博の会場から発信する意義はものすごく大きいと思います。高校生が自らの視点を持って行動に移し、変革する、高校生らしいアクションアイデアでした。自分たちが新しい社会を作るんだと、万博の場所から宣言したことは、自分自身に対するコミットメントになるのではないかと思います」

「持続可能な万博」を評価するためには検証が必要

大阪・関西万博では、出展したパビリオンはSDGsが掲げる17の目標のうち、1つ以上の目標を展示に盛り込むなど、参加した国や企業、団体からSDGsに関する様々なメッセージが発せられた。ただ、SDGsへの取り組みには、閉幕後の対応も重要だ。

「EXPO2025グリーンビジョン」では、施設を解体することなどによって生じる廃棄物について、98.1%をリサイクルするという高い目標を掲げている。

また、リユースが可能な施設や建材、設備機器、什器などについては、売却するためのマッチングサイトが開設されている。施設については一部のパビリオンなどについて入札が行なわれているほか、解体した建材についても購入できる。また、什器や備品については今後民間企業や個人向けにも公募が行われる予定だ。

一方で、万博の象徴だった1周2キロの大屋根リングについては、どれだけ残して、どれだけリユースするのかについての議論が現在も続いている。協会が10月7日に開催した臨時理事会では、北東側の約200メートルは会場跡地に残す一方、当初は残す可能性があるとしてリユースの対象から外していた南西側の350メートルについても公募するかどうかが検討されている。

万博ではSDGsの取り組みについて高い目標を掲げ、多くの参加者が発信もしてきた。ただ、「持続可能な万博」が実現できたのかを評価するには、目標の達成状況も含めた検証を待たなければならないだろう。

(「調査情報デジタル」編集部)

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