“比例50減”でどこが得?影響最少は「自民」との試算 定数削減に「明らかな公明潰し」の声も【Nスタ解説】

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2025-11-28 20:30

国会の終盤戦では、衆議院の「議員定数削減」が最大の焦点となる見通しです。実際、削減することになった場合、どのような結果になるのか。JNNが独自に分析しました。

【画像で見る】「定数削減」した場合の各党の議席数 JNNの独自分析

目標は約50人の削減?自維連立の条件

高柳光希キャスター:
日本維新の会が、連立の絶対条件と位置付けている「定数の削減」
連立の合意文書には「衆院議員定数を削減するため『今の臨時国会で法案を提出し成立を目指す』」と盛り込まれています。

現行の衆議院の議員数は465人。目標としては1割(=約50人)の削減で、420人を超えない範囲を目指しているということです。

JNNの独自分析 一番減るのは近畿で「維新が損」とも見えるが…

高柳光希キャスター:
JNNが衆院比例の「新たな議席配分」を独自に分析しました。

【衆院比例『新たな議席配分』】※JNNの独自分析
北海道:8→6
東北:12→9
北陸信越:10→7
北関東:19→14
南関東:23→16
東京:19→14
近畿:28→20
東海:21→15
四国:6→4
中国:10→7
九州:20→14

11の選挙区の中で一番減ると見込まれているのは「近畿」で、28議席から20議席となっています。大阪を中心に関西で強い維新が損をしているという見方もあるかもしれませんが、選挙区の影響を加味するとそうとも言い切れないようです。

「比例定数」50削減したら…公明は「減少率50%」

高柳キャスター:
維新が主張する比例代表50削減が実現し、定数削減に加えて、自公連立解消の効果も加味した場合、2024年の衆院選の結果はどう変わるのでしょうか。

【「比例定数」50削減すると…】※JNNの独自分析
▼自民
24年衆院選:59
試算議席数:47(-12)
減少率:20%

▼維新
24年衆院選:15
試算議席数:10(-5)
減少率:33%

▼立憲
24年衆院選:44
試算議席数:34(-10)
減少率:23%

▼国民
24年衆院選:17
試算議席数:13(-4)
減少率:24%

▼公明
24年衆院選:20
試算議席数:10(-10)
減少率:50%

▼参政
24年衆院選:3
試算議席数:1(-2)
減少率:67%

▼れいわ
24年衆院選:9
試算議席数:6(-3)
減少率:33%

▼共産
24年衆院選:7
試算議席数:5(-2)
減少率:29%

▼保守
24年衆院選:2
試算議席数:0(-2)
減少率:100%

▼社民
24年衆院選:0
試算議席数:0

▼他
24年衆院選:0
試算議席数:0

この試算から、どこが損をしていて、どこが得をしていると言えるのでしょうか。

自民は影響少ない?どこが得でどこが損?

TBS報道局 選挙本部デスク 本杉美樹:
比例のみの減少率、いわば比例の獲得議席におけるインパクトで見ると、「自民党」が一番影響が少なく、ある意味“得をする”と言えると思います。自民は獲得議席が大きいので、1議席減ることのインパクトが少ないということもあります。

また、自民はこれまで、選挙区で公明党に支援してもらう見返りとして、「比例は公明」と呼びかけるバーターを行ってきました。いわば「公明に貸していた比例票」が返ってくるので、その効果も出ているということです。

同じく「立憲民主党」も獲得議席が多いので、影響が少なくなっています。

一方で、“損をする”政党もあります。

「公明党」は、比例の獲得議席の半分を失うという試算になっています。

また、少数政党にも大きな影響が出る見込みで、「参政党」は3議席から1議席に、「日本保守党」は2議席から0議席となる試算になっています。

衆院選は、少数政党にとって選挙区で勝つことが非常に難しく、比例が重要になります。そのため、比例の定数減のあおりも大きく受けて、少数政党はかなり損をする見込みです。

少数政党側からは「多様な民意をすくい上げにくくなる」という反発が出ています。

また、比例は新しい政党が国政に参入する入口という側面もあり、そうした入口が失われるという懸念もあります。

公明票で立憲・国民が逆転の試算も

高柳キャスター:
自民党に入っていた公明票が、連立の解消によって野党に流れた場合、最大でどのような影響があるのでしょうか。

【「定数削減&自公解消」政党の損得は】※JNNの独自分析
▼自民
比例:-12
選挙区:-33
合計:-45

▼維新
比例:-5
選挙区:+4
合計:-1

▼立憲
比例:-10
選挙区:+30
合計:+20

▼国民
比例:-4
選挙区:+3
合計:-1

▼公明
比例:-10
選挙区:-4
合計:-14

▼参政
比例:-2
選挙区:±0
合計:-2

▼れいわ
比例:-3
選挙区:±0
合計:-3

▼共産
比例:-2
選挙区:±0
合計:-2

▼保守
比例:-2
選挙区:±0
合計:-2

▼社民
比例:0
選挙区:±0
合計:±0

▼他
比例:0
選挙区:±0
合計:±0

TBS報道局 選挙本部デスク 本杉美樹:
連立解消によって、僅差で自公が競り勝っていた選挙区は、おしなべて野党側が逆転することになります。その結果として、立憲民主党は30選挙区で逆転、国民民主党は3選挙区で逆転できるでしょう。

自民と維新の選挙協力はないものとして試算していることもあり、維新は、公明の選挙区で逆転する分と、一部自民の選挙区からも取って4選挙区で逆転をする試算になっています。

一方で、公明党は2024年衆院選で4選挙区で議席を取りましたが、それを全て失うという試算になっています。

自民×維新 “どこまで選挙協力するか”で情勢変化か

高柳キャスター:
さらに、選挙区と比例の試算結果を合わせると、自民党は-45、立憲が+20、維新は-1となっていますが、身を切る改革としてはどう見えますか。

TBS報道局 選挙本部デスク 本杉美樹 記者:
JNNの独自分析では維新は-1と、ほとんど影響がないと言っていいのではないかと思います。

一方で、自民は2024年に獲得した191議席のうち4分の1近くを失う、厳しい結果になる試算になっています。ただ、この試算は2024年の結果をもとに算出していて、“裏金問題”の逆風が吹き荒れていた2024年と現在では状況が違います。

JNNの世論調査では、高市政権の支持率は82%、自民党の支持率もわずかに上がっている状況です。2024年とは風向きが変わりつつあるので、試算結果ほどの負け方にはならないという見方もあると思います。

今後、連立を組んでいる自民と維新の2党が、どの程度の選挙協力を行うかによって数字は変わってくると思いますので、この後の政局によって情勢は大きく変わるのではないでしょうか。

“公明いじめ”の声も そもそも定数削減のメリットとは?

高柳キャスター:
定数削減で大きく損をすると見込まれている「公明党」ですが、自民党と立憲民主党の議員からは、このような声が上がっています。

自民 中堅議員
「小選挙区で強い自民や維新はいいが、あきらかな公明潰しだ。地元の公明から『ありえない』とめちゃくちゃ厳しく当たられた」

立憲 ベテラン議員
「『比例50議席削減』は維新の“公明いじめ”を自民に飲めと言っているような話だ。これが実現したら、公明は完全に自民党と対立することになるだろう」

公明党の斉藤代表は5日、「(比例区のみの削減について)多様性を排除し、少数の民意は切り捨てても構わないという考えで、民主主義の破壊に他ならない」と発言しています。

日比麻音子キャスター:
国民や有権者にとって、議員定数削減のメリットは何なのでしょうか。

「フォーサイト」元編集長 堤伸輔さん:
昭和の時代から“行革ブーム”というものがあり、「省庁や外郭団体を減らしなさい」といった中、国際比較は横に置き、「議員定数も多すぎるのではないか」という声が強くありました。

しかし、ここ10年ほどは、国民は議員定数で何とかすべきだとは思っていないと思います。それよりも重要な政治のテーマがいくつもあるのではないでしょうか。

維新は「身を切る改革」が1枚看板なわけですが、今の結果(JNNの独自分析)を見ると、「他所の身を切る改革」ではないかと感じます。

「他所」というのは、この場合でいう公明党や、あるいは参政党・保守党のように「0」になる見込みの点を含めてです。若い人の言葉でいえば“身を切る風改革”に感じます。

メリットという点で考えると、例えば議員歳費や経費は、日本の国の予算・財政赤字から見たら微々たるものにしかなりません。

それよりも幅広い政策に通じた議員を1人でも増やす方がマシだと思いますし、あるいは、新しい政党が参入するルートがあった方がいいと思います。国民の民意を幅広く吸い上げられるように、多様性のある主張を持った議員たちが待ってくれている方がいいわけですから。

維新は「メリット」を説明しきれていないのではないかと思います。

日比キャスター:
女性議員の割合が増えない中で、定数が削減されるというのも心配です。

「フォーサイト」元編集長 堤伸輔さん:
男女の比率を決めて候補者を立てる「クオータ制」など、この際、そういったものを導入するなども含めて改革すべきだと思いますが、今はただ「数を減らせ」にとどまっているように感じます。

==========
<プロフィール>
本杉美樹
TBS報道局 選挙本部デスク
情勢分析のブレーン

堤伸輔さん
国際情報誌「フォーサイト」元編集長
BS-TBS「報道1930」ニュース解説

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