シビックプライドランキングから読み解く、住みやすさでは測れない街の本当の価値

「住みやすい街」「便利な街」という言葉は、これまで数多くの都市ランキングで使われてきた。しかし近年、その評価軸は静かに変化しつつある。交通利便性や商業施設の充実度といった機能的な指標だけでなく、「その街に住んでいることを誇りに思えるか」「この先も住み続けたいと感じられるか」といった、より感情に根ざした視点が重視され始めているのである。
こうした流れの中で発表されたのが、読売広告社 都市生活研究所による「シビックプライド調査」だ。住民が街に対して抱く愛着や誇り、そして街との関係性を数値化し、ランキングとして示した本調査は、初めて全国278自治体を対象に実施された点でも注目に値する。総合1位に選ばれたのは東京都中央区。銀座をはじめとする華やかなイメージが先行する街が、なぜ高いシビックプライドを獲得したのか。本調査は、街の価値を生活者の視点から捉え直す重要な材料を提示している。
シビックプライドとは何か
シビックプライドとは、自分が暮らす街に対して抱く誇りや愛着、そして「街をより良くしたい」と思う当事者意識を含んだ概念である。単なる満足度調査とは異なり、住民と街との関係性の深さを測る点に特徴がある。
近年では、国土交通省が都市再生の文脈でこの概念に注目するなど、政策面でも重要性が高まっている。成熟社会においては、新たな開発や規模拡大よりも、既存の地域資源をどう磨き、住民の共感を育てるかが問われている。シビックプライドは、そうした時代背景を映すキーワードだといえる。
CIVIC PRIDE(R)ポータルサイト:https://civic-pride.com/
初の全国調査で見えたランキングの全体像

今回の調査は、人口10万人以上の278自治体に住む20〜64歳の男女を対象に行われ、「愛着」「誇り」「エンゲージメント」の3指標を合算してランキング化している。
総合1位となった中央区に続き、港区、高槻市、千代田区、鎌倉市などが上位に名を連ねた。東京都心部が目立つ一方で、大阪府高槻市のように、全国3位へと大きく順位を伸ばした自治体もあり、都市規模だけでは説明できない結果となっている点が興味深い。
注目都市に見る“評価される街”の共通点

中央区が高い評価を得た背景には、商業都市としての華やかさだけではない要素がある。調査では、「歩きたくなる街並み」や「公共施設・公園の充実度」といった、日常生活に密着した項目が高く評価された。
人形町や八丁堀といったエリアに残る歴史的な街並み、住民が主体的に関わる公共施設、地域イベントの存在などが、暮らしの満足度を底支えしているのである。
また、高槻市では歴史資産を活かしたストーリー性のあるまちづくりや、子育て支援策の充実が評価につながった。これらに共通するのは、「生活者の目線に立った継続的な取り組み」である。
世代・性別で異なる「誇りを感じる街」

調査結果を詳しく見ると、世代や性別によって評価される街が大きく異なることも明らかになった。20〜30代では高槻市や明石市、西宮市といった関西圏の都市が上位を占め、地域活動への参加意識やコミットメントの高さが特徴として挙げられている。
一方、50代以上では中央区や文京区など、東京都心部が上位に並ぶ。自分好みの過ごし方ができるか、散策や文化に親しめるかといった要素が重視されている点が印象的だ。
さらに、男性と女性でも評価軸には差があり、街に求める価値が一様ではないことが浮き彫りになっている。
シビックプライドが示す、これからの都市のヒント
今回の調査で特筆すべきは、人口規模が比較的小さい自治体でも高い評価を得ている点である。伊勢市や別府市、生駒市などが上位に入ったことは、都市の価値が必ずしも規模や機能の多さに依存しないことを示している。
住民が街と関わる機会をどれだけ持てるか、地域の物語を共有できているかといった点が、シビックプライドの醸成に大きく影響しているのである。これは、全国の自治体にとって重要な示唆といえる。
誇りは、日常の中で静かに育っていく
シビックプライド調査は、街の魅力を順位で競うためのものではない。本質的には、住民と街との関係性を問い直すための指標である。便利さや華やかさの裏側にある日常の積み重ねこそが、人々の誇りや愛着を育てている。自分の街にどんな魅力があり、どんな関わり方ができるのか。ランキングの結果を通じて、そんな問いを一人ひとりが考えることが、これからのまちづくりにおいて最も重要な出発点になるのではないだろうか。