飲食業の倒産が30年で最多 食料品の消費税ゼロで「外食10%」「弁当・惣菜0%」に?飲食業への影響は【Nスタ解説】
過去30年間で最多となった飲食業の倒産件数。倒産件数は長いスパンでみると全体的に右肩上がりになっています。こうした中、衆院選を前に与野党で浮上している「食品の消費税ゼロ」に飲食業界からは心配の声もあがっています。
飲食業の倒産件数は30年で過去最多
井上貴博キャスター:
1996年からの飲食業の倒産件数をグラフで見ていきます。
全体的に右肩上がりとなっている中で、2008年にはリーマンショックで739件、2020年にはコロナ禍で842件が倒産しました。2025年は1002件と、過去30年間で最多となっています。
倒産件数が下がっている年は、政府が措置を講じています。
2008年のリーマンショック時は、倒産が相次ぎましたが、借金の返済期間を変更できる法律「中小企業金融円滑化法」が施行されるなど、国の金融支援がスタートし、倒産数は減少しました。
また、2020年のコロナ禍でも、影響を受けた飲食店に助成金などが出ました。
ですが、その政府の政策がなくなると、物価高もあり、なかなか先が見えないということで、倒産件数が増えていくということです。
飲食業の倒産が過去最多になった背景について、東京商工リサーチの担当者は「コロナに対する国の支援もなくなると、企業体力の低かった飲食店を、急な物価高と人件費の高騰が追い打ちをかけた」と分析しています。
【倒産の原因】(東京商工リサーチより)
1位:物価高 136件(前年比126.6%)
2位:人手不足 55件(前年比161.9%)
「食料品の消費税ゼロ」で飲食業界が危機に?
井上キャスター:
こうした中、衆院選を前に与野党で浮上した「食料品の消費税ゼロ」に、飲食業界からは心配の声が出ています。
食料品にかかる消費税をゼロにするということは、消費税率8%がかけられているお弁当やお惣菜などの食料品に関しては、ゼロにするということになります。
外食は消費税率10%がかかっているので、差が拡大することになります。
野村総研エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏によると、「外食は客足が遠のき、一定程度の打撃を受けるのではないか。顧客を逃がさないため、値段を少し下げざるを得ないという店が出てくる可能性もある」と話します。
中室さんは「食料品の消費税ゼロ」と「外食の消費税」との差をどのように考えますか。
慶應義塾大学教授 教育経済学者 中室牧子さん:
今、外食の倒産が増えているのは、物価高ということもありますし、人手不足ということもありますが、コロナ禍の後に消費者行動が結構変わったんじゃないかなと思います。
要は、コロナ禍の前までテイクアウトやデリバリーをあまり使わなかった人が、コロナ禍を経て、デリバリーなどを使うようになって、コロナ禍が終わった後も使い続けているというようなことです。
なので今回、消費税率が外食と弁当・惣菜で変わるということになると、これが時限的な措置であったとしても、消費者行動が変化することは避けられないのではないかと思います。
出水麻衣キャスター:
変わるというのは、やはり弁当・惣菜の方に流れやすくなるということですか?
慶應義塾大学教授 教育経済学者 中室牧子さん:
そうです。それで元に戻ったとしても、消費者行動の変化というのは、直ちに元には戻らないということなのではないでしょうか。
井上キャスター:
週末の党首討論でもありましたが、「外食産業への手当はどうするか」と聞かれたとき、高市総理は「これからみんなで考えましょう」と話しました。
政府として、飲食産業を救うための手立てやできることは何が考えられますか?
慶應義塾大学教授 教育経済学者 中室牧子さん:
外食産業を救済しなければいけないかということも政策的議論になると思いますが、そもそも「軽減税率」自体が妥当なのかということについては様々な議論があります。
実は、軽減税率が導入されるときに多くの経済学者はこれに反対していました。
「税というのは、やはり中立・簡素・公平であるべきものだ」ということがあるのにもかかわらず、我が国の税制というのはあまりにも複雑になりすぎてしまっています。
消費者も混乱するのではないかと思うので、私は一旦、中立・簡素・公平という税の原則にちゃんと立ち戻って、消費税の減税について各党で考えていただきたいと思います。
“統一価格”への影響は?
井上キャスター:
今、外食業界は様々な知恵を絞っています。
例えば、マクドナルドでは“統一価格”を取っています。これはマクドナルドに限らず、外食業界、特にファストフード店で多く用いられている手法です。
例えば、「マクドナルド 赤坂駅前店」の「ひるまックビッグマックセット 680円」は、テイクアウトだと8%ですが、イートインだと10%です。ですが、合計価格はどちらも同じ680円です。
「税率は違っても価格は同じ」という飲食業の一つの知恵です。
2019年に「軽減税率」が導入され、2つの消費税率が誕生した際、日本マクドナルドは税抜価格を調整することで、「店内で飲食する場合」と「テイクアウトする場合」の税込価格を統一しました。
食料品の消費税がゼロになった場合、どうするか聞いたところ、「今後については議論の行方を注視している」ということです。
経済アナリストの馬渕磨理子氏によると、「経営方針の変更も十分に考えられる」ということです。
例えば、価格の再調整でテイクアウトの値下げなどを行う。また、店内サービスの付加価値を上げ、限定メニューなどを提供していくのではないかということでした。
飲食業界を救うのかどうかを含めた議論は、今回の選挙戦でも議論を深めていく必要があると考えます。
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<プロフィール>
中室牧子さん
慶應義塾大学教授 教育経済学者
教育をデータで分析
著書「科学的根拠で子育て