選挙で変わる?「社会保険料」 実は税金より負担大 各党の訴えは【Nスタ解説】
私たちがもらう給料やボーナスからは決して小さくない額の『社会保険料』が天引きされています。選挙の争点にもなっていますが、少子高齢化が加速するなか、この制度をどうしていくべきなのでしょうか?
【画像を見る】47歳会社員の給与明細 どれだけ「社会保険料」天引きされている?
社会保険料 どれだけ天引きされている?
高柳光希キャスター:
「社会保険料」とは、病気、ケガ、介護、失業、労働災害といった個人では対応しきれない生活上のリスクに備えるため、国が主体となって運営する公的保険制度です。
いったい「社会保険料」はどれだけ天引きされているのでしょうか。
一例ですが、妻と子ども2人がいる男性会社員(47)の給与明細で見てみます。
支給の総額は「76万6800円」。ここから様々なものが引かれていきます。
▼所得税:5万4710円
▼住民税:6万3700円
▼諸控除:1万300円
加えて、健康保険、介護保険、厚生年金、雇用保険の4つを足した「社会保険料」です。
▼健康保険:3万3516円
▼介護保険:9943円
▼厚生年金:5万9475円
▼雇用保険:4207円
合計金額…10万6641円
全てを合わせると、控除総額は23万5351円。
76万円以上稼いでも全体の3割ほど引かれて、手取りは53万1449円になります。
改めて給与明細を見ると、たくさんのものが引かれていることが分かります。
井上貴博キャスター:
消費税は一律に取られるため、消費税を下げると低所得者層ほど恩恵が大きいと言われています。一方で、社会保険料を下げると現役世代や子育て世代の手取りが増えるので、恩恵が大きいと言われています。
お笑い芸人・作家 ピース 又吉直樹さん:
恩恵がある一方で「その後どうするんだ」という問題もある。壺からお金が自然と湧いてくるわけではないので、そこが難しいところですよね。
選挙の争点「社会保険料」各党の訴えは
高柳キャスター:
社会保険料の負担軽減はできるのか。各党の訴えを見てみましょう。
【社会保険料(衆院選公約などから)】
●自民「中・低所得者(若者・現役世代を含む)の負担軽減」
●維新「現役世代1人あたり年間6万円引き下げを目指す」
●中道「現役世代の引き下げにも取り組む」
●国民「『社会保険料還付制度』を創設」
●共産「応能負担の改革をすすめる」
●れいわ「現役世代の負担を大幅軽減」
●参政「削減 減税とあわせ国民負担率を35%に」
●ゆうこく「公約の発表なし(1月28日午後3時時点)」
●保守「外国人の健康保険・年金を別立てに」
●社民「企業と個人の負担割合を変え保険料半額」
●みらい「現役世代の負担軽減」
各党が負担軽減を掲げていますが、実際に可能なのでしょうか。
「社会保険料」実は税金より負担大
TBS報道局 経済部 蓮井啓介 記者:
社会保険料は2000年から比べても年々上がってきており、2040年にはさらに上がるとの試算もあります。
【社会保険料率】
※被保険者負担分 財務省 資料より
2000年:約11.3%(年金6.79%、医療4.25%、介護0.3%)
2012年:約14.2%(年金8.39%、医療5%、介護0.78%)
2025年:約15%(年金9.15%、医療5%、介護0.8%)
2040年:推定 約16.3%(年金9.15%、医療5.9%、介護1.25%)
社会保険料「給与額面の15%程度」>住民税「所得の10%程度」>所得税「5%~(年収により上昇)」
蓮井啓介 記者:
「社会保険料が相当取られている」という意識があり、現役世代にとっては辛いところです。
社会保険料の制度の仕組みは、現役世代が多い時代にできたもので、当時は高齢者が少なかったため社会全体で高齢者を支えることができていました。
しかし、時代に合わなくなってきているため、この仕組みを抜本的に変えることが一つの課題という側面もあります。
また、社会保障サービスは「保険料」と消費税を含めた「税金」で支えられています。
減税ブームの中で、「消費税がなくなる」「社会保険料も下げる」となると、社会保障サービスをどう維持していくのかという課題もあります。
有権者はこの部分を今回の選挙で冷静に見極める必要があると思います。
社会保障関係費が34兆円超 年々増える一方で財源は?
高柳キャスター:
少子高齢化で我々現役世代が支えるべき人の数が増えているということ。
そして重要なのがその財源です。社会保険料にメスを入れるための財源はどこから確保してくるのでしょうか。
蓮井啓介 記者:
社会保険料と税金で支えている社会保障関係費は、医療や年金といったものが増え、34兆円規模になっています。
▼社会保障関係費:約34.7兆円
・年金:13.8兆円
・医療:12.8兆円
・福祉:4.1兆円
・介護:3.8兆円
・雇用:0.2兆円
※2026年度予算案(厚労省)
蓮井啓介 記者:
年々、高齢化が進む中で、社会保障関係費は自動的に増えていきます。
その実情に対し、経済官庁幹部からは「高齢化が進む中で、毎年1000億円、2000億円削るためにどれほど苦労しているか。『数兆削る』なんて規模感が違う」との声が聞かれています。
井上キャスター:
選挙の構造上、今まではどうしても高齢世帯の投票率が高いので、政治家の皆さんも高齢者向けの政策をすることが多かった。そのため高齢世代の窓口負担を引き上げるという話はなかなか出てきませんでした。
しかし、若者の投票率が増えればそういったところも変わっていくので、投票がいかに重要かが分かります。
又吉直樹さん:
以前、年金について街で取材したことがあります。
高齢者の方に「若い人がお金に困っている。高齢者は年金が確保されていることをどう思いますか」と聞いた時に「若者を我々が苦しめているから、自分たちの人生は早く終わった方がいい」という言葉を直接もらい、「この取材辞めさせてください」と言ったことがあります。
世代や立場をそのままぶつけ合うのも苦しい。1つの家族・チームのような発想で、いろいろと選んでいけたらいいなと考えています。
井上キャスター:
そうしていかないと持続可能なものにもならないですよね。
蓮井啓介 記者:
メリハリをつけた改革が必要です。
高齢者の方でも、金融資産や株式で所得を得ている人に対しては、現役並みの3割の負担を求める。いわゆる能力に応じた負担をしてもらう。他にも、OTC類似薬のように、薬局で買える薬は自分たちで買って、少しずつ医療費を削減していくような仕組みの作り方は求められると思います。
井上キャスター:
デジタル化で無駄を削減できるところもあるでしょう。そういったところからどのように捻出していけるのかが重要です。
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<プロフィール>
蓮井啓介
TBS報道局 経済部 財務省担当
財政・税制などの経済政策を取材
ピース 又吉直樹さん
お笑い芸人・作家
小説デビュー作『火花』で第153回芥川賞を受賞