【展望】“シン山の神”黒田朝日が別大マラソンに出場 2回目のマラソンで目指すものとは?

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2026-01-31 12:00
【展望】“シン山の神”黒田朝日が別大マラソンに出場 2回目のマラソンで目指すものとは?

2月1日の別府大分毎日マラソン(以下別大マラソン)で、学生記録保持者の黒田朝日(21、青学大4年)が2度目のマラソンに挑戦する。箱根駅伝では2年時にエース区間の2区で区間賞(1時間06分07秒。当時日本人区間歴代2位)、3年時も2区で1時間05分44秒と従来の区間記録を上回った(日本人区間歴代2位)。そして今年は5区で従来の区間記録を1分55秒も更新し、トップとの3分24秒差を逆転。往路優勝と総合3連勝の立役者となった。箱根駅伝から1か月。2度目のマラソンで黒田がどんな走りをするかに注目が集まる。

【写真で見る】学生歴代リスト&3000m障害で2位の黒田

ペース感覚が黒田の武器

黒田は箱根駅伝以外でも強さを見せてきた。昨年11月の全日本大学駅伝では17.6kmの7区で、区間2位の留学生選手に36秒差をつけた。10月の出雲全日本大学選抜駅伝でも、10.2kmの6区で区間2位に23秒差で区間賞を取った。6月の日本インカレ10000mでも28分09秒18で日本人1位。10km~マラソンの距離では学生トップの実績と言っていい。

黒田の武器の1つに、ペース感覚が優れていることが指摘されている。昨年の箱根駅伝2区では前半、個人順位で黒田は12位だった(8.2kmの横浜駅前)。しかし15.2kmの権太坂(15.2km)で6位に進出すると、戸塚中継所ではトップと13秒差の3位に上がっていた。前半では黒田を引き離す選手も視界に入っていたが、自身のペース感覚を信じて走った結果、後半で順位を上げることに成功した。

黒田は時計を付けずに走る。5kmを何分、10kmを何分で通過すると決めず、自身のその日の感覚でペースを決める。結果的にその走りが、その日のベストの走りをすることにつながっていく。

1月25日のサンデーモーニングに出演した三浦龍司(23、SUBARU。東京世界陸上3000m障害8位)が紹介したように、黒田は大学3年時前半までは3000m障害に出場していた。1年時にはU20世界陸上に出場し、2年時のU20アジア選手権には優勝している。3000m障害出身のマラソン選手は、世界的にも例がないわけではない。古くは1976年、80年と五輪を連覇したW.チェルピンスキー(東ドイツ=当時)がそうだったし、最近では25年東京マラソンに優勝したタデセ・タケレ(23、エチオピア)が、21年の東京五輪は3000m障害で出場していた。

3000m障害とマラソンの間に、明確な相関関係が認められているわけではない。距離の違いは大きく、両種目で活躍した選手は珍しい。だが疲れが大きい状態でも、動きを正確にコントロールできることが共通点、という指摘をする指導者もいる。黒田も箱根駅伝5区と2区の終盤で、「意識がないくらい入り込んでいた」と話していた。余力がない状態で走っていてもやりたい動きができて、スピードが出せる選手なのかもしれない。

学生で2度目のマラソンは少数

男子マラソンの学生歴代リストは以下(【写真で見る】参照)のようになっている。

学生選手のマラソン出場は、以前はそれほど多くなかった。1970年代の瀬古利彦(当時早大)は別格だったが(箱根駅伝1か月前にマラソンを走るなど、今では考えられない)、2000年前後は藤田敦史(駒大。現駒大監督)、佐藤敦之(早大。現中国電力監督)、藤原正和(中大、現中大監督)らが学生記録を更新した。現在の学生歴代リストでは上位10パフォーマンス中、藤原以外は2020年以降の記録で占められている。厚底シューズの登場が、学生のマラソン進出のハードルを低くしたのは間違いない。

学生の間に2回以上マラソンに出場した選手は少なく、2度目のマラソンの学生最高記録は横田俊吾(青学大→JR東日本)の2時間07分47秒だ。初マラソンは怖い物知らずで挑戦できるが、2回目で記録を下げる選手が多いと言われている。横田や柏優吾(東洋大→コニカミノルタ)の例を見ると、学生には当てはまらないのかもしれないが、昨年の別大で東京世界陸上代表入りを狙った平林清澄(國學院大→ロジスティード)は、初マラソンより記録を下げている。

黒田は1月8日の取材で、「タイムは走ってみないとわかりませんが、順位が大事だと思うので、初マラソンの大阪(6位、日本人3位)より良い順位を目標に走りたいと思っています」とコメント。先頭集団で勝負を重視して走るつもりだ。

原監督が語る別大マラソンを選んだ理由

初マラソンが2月末の大阪だったのに対し、今回は2月頭の別大を選択した。その理由を青学大の原晋監督は「黒田を遊ばせたいから」と説明した。

「大阪まで引っ張るとその間もトレーニングをすることになります。4年間学生スポーツをまっとうしましたし、4月から社会人になってバタバタすると思うので、春休みの間にリフレッシュ旅行に行かせたり、のんびりさせる期間を作ってあげたいんですね。やっぱり箱根駅伝はものすごい空気感、緊張感のなかでやってきたので、どこかで休まないと体がもちません。でもマラソンはやった方がいい。僕は箱根駅伝からの流れでやるべきだと思うので、別大を選んだわけです」

青学大は過去にも別大で好結果を残している。東京世界陸上マラソン代表に成長した吉田祐也(28、GMOインターネットグループ)は当時の初マラソン歴代2位&学生歴代2位で走った。前述の横田、昨年学生記録(当時)で走った若林宏樹ら、別大に合わせるノウハウが青学大にはある。

にもかかわらず、原監督の目標設定が少しずつ下がっている。1月8日には「2時間06分05秒と同等の記録を出し、初マラソンがまぐれではなかった、マラソンもしっかり走るランナーということを見せてほしいですね」と話していたが、1月25日には「2回目のマラソンは厳しい。私としては2時間10分を切ってくれればいいと思っています。少し欲張ればMGC出場権獲得を目指して頑張ってほしい」とトーンダウンした。

MGCは27年秋開催予定のロサンゼルス五輪最重要選考会で、G1カテゴリーの別大マラソンでは日本人6位以内で2時間09分00秒以内の選手が、7位以下でも2時間06分30秒以内で走った選手が出場権を得る。世間の黒田への注目度が高く、ファンに過剰な期待をさせないことと、黒田自身へのプレッシャーを和らげようとしての発言だろう。

苦しい走りになる可能性もあるが、そういった経験をしておくことが、実業団で「日本記録を目指して行きたい」と言う黒田にプラスに働く。状態の良い時しかレースに出場しない習慣をつけてしまうと、代表選考レース前に状態が悪い時に対応できなくなってしまう。黒田にとって、マラソン選手としての幅を広げるレースになるのではないか。

期待が持てる部分もある。この1年間のトラックと駅伝は、3年時よりもレベルが上がっていた。箱根駅伝5区ではスピードは遅いが、そのなかでも押し通す走りでレベルの違いを見せた。別大のシーサイドコースが向かい風になった時、そのときの経験が生きるだろう。万全の状態でなくても黒田は強い。2度目のマラソンでその評価を得られたら、最高の卒業記念となる。

(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)

  1. 栃木強盗殺人の“主導役”か 40代男の逮捕状取得もすでに東南アジアに逃亡の可能性…“指示役”男の知人か 「トクリュウ」による事件とみて捜査
  2. 【 ダレノガレ明美 】 学歴と職業差別に持論「自分の発言が1番ださくて恥ずかしい事を忘れないで」
  3. 【たつの市・母娘殺害】指名手配中の男の新たな写真を公開 現場から南に2kmほど離れた場所で撮影 兵庫県警
  4. 原子力規制委員会が虚偽申請に対し罰則を検討へ 浜岡原発データ不正問題をめぐり
  5. 韓国外務省「イランによるミサイル攻撃の可能性高い」 ホルムズ海峡で韓国船火災
  6. 「目詰まり解消を一つずつ取り組む 何とか情報提供のお力添えを」 高市総理が全国市議会議長の会合で呼びかけ
  7. ふいに椅子に乗ってしまった大型犬→降りるのが怖くなり…『抱っこで降ろして』とおねだりする光景が赤ちゃんすぎると反響「甘えてて可愛いw」
  8. 横浜市のアパートで女性に性的暴行を加えようとした疑いなどで40代の男2人を再逮捕 同じ日に別の女性に性的暴行を加えようとした事件などでも逮捕・起訴
  9. 顧客の“専属金融アシスタント”に? 銀行が生成AI活用で目指す新たなビジネス像 AI活用加速の裏で「クロード・ミュトス」悪用などの懸念
  10. 自民 ストーカー被害防止へ 加害者にGPS機器装着を高市総理に提言
  1. 新たに40代男に逮捕状 栃木・強盗殺人事件で“指示役”竹前海斗容疑者を通じて少年ら“実行役”を集めたか 東南アジアに逃亡した可能性
  2. 介護が必要な犬が『子犬の時に優しくしてくれたおじいちゃん』と再会した結果…あまりにも『感動的な光景』が6万再生「涙が出た」「愛伝わる」
  3. 「普通の精神状態じゃいられない」たびたび強盗狙われた住宅…被害者が語る恐怖 標的情報がトクリュウの間で出回っている可能性 東京・小金井市
  4. サングラスの色は薄めが良い!?「目の日焼け」白内障や疲労の原因にも…眼科医の教える対策は【ひるおび】
  5. 客室乗務員が“過度の飲酒”で乗務できず…出発が40分ほど遅れる 交代の確保に時間かかる 日本航空が明らかに「大変重く受け止めている」
  6. 群馬県桐生市の住宅に侵入した容疑でベトナム国籍の男3人逮捕 前橋、桐生、伊勢崎などでは3月以降空き巣被害相次ぐ
  7. 43歳・上野由岐子、7大会連続選出!7連覇目指すソフトボール日本代表候補17人発表【9月開幕アジア大会】
  8. 【 窪塚洋介 】最初に身につけた時計は「腹時計?」ワイルドな高級時計に〝冒険に出たくなる〟
  9. 【ハッカーvs被害者】チャット記録に残された“生々しいやりとり” 自分を狙った理由を聞き出す“猛者”…ハッカーの答えは?【シリーズ・サイバー攻撃③】
  10. 「被告が両手で押した」共謀の女が被害者の落下状況を証言 内田被告は殺人など否認【旭川女子高校生殺害】
  11. 「今後の資材調達に不安」農水省と経産省が食品関連の業界団体と初の“情報交換会” ナフサ使用量減らすパッケージ変更などの動き広がる
  12. 【ダイアン津田】目指せ太宰治 50歳の誕生日に初の単著 今後の抱負を涙ながらに訴える〝過酷なロケは卒業したい〟