【全日本実業団ハーフマラソン展望】前回優勝の市山翼が、3秒差で逃した大会記録と優勝に意欲 レース中の“話し合い”は好調の証拠

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2026-02-05 12:00
【全日本実業団ハーフマラソン展望】前回優勝の市山翼が、3秒差で逃した大会記録と優勝に意欲 レース中の“話し合い”は好調の証拠

第54回全日本実業団ハーフマラソンが2月8日、山口市の維新百年記念公園陸上競技場を発着点とする21.0975kmのコースで、2026海外ハーフマラソン派遣選考競技会を兼ねて行われる。男子は前回優勝(1時間00分22秒)の市山翼(29、サンベルクス)が、「大会記録をしっかり狙います。順位は優勝です」と意欲を見せる。前回は3週間後の東京マラソンでも、2時間06分00秒と大幅に自己記録を更新して日本人1位と健闘した。今年も同様に東京マラソンに出場するが、全日本実業団ハーフマラソンに出場する“気持ち”が前回とは異なるという。

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「東京マラソンのためではなく」と言う理由は?

1年前、市山の自己記録は1時間01分11秒で今大会に臨んでいた。今大会は20年以降はすべて、日本人1位タイムは1時間1分を大きく切っている。「優勝とか考えず、61分半くらいで走れればいい」という目標で、どちらかといえば3週間後のマラソンにつなげることを意識していた。その走りでも1時間00分22秒で優勝し、1時間00分19秒の大会記録に3秒と迫っていた。

「前回は調子を上げるための大会と考えていましたが、それでも大会記録近くで走ることができました。今回は東京マラソンのためではなく、大事な大会の1つとして出場したいと思っています」

大きな流れで見れば、東京マラソンで結果を出すための流れを作っているが、3週間前のハーフマラソンは全力で走る。前回は「気持ちの持ち方で、大会新を出せたかもしれない」と感じたが、それでも数秒の違いである。前回も今回も、全力でハーフマラソンを走ることに変わりはない。昨年の経験から、全日本実業団ハーフマラソンで全力を出すことが東京マラソンにもつながる。そう確信できた。

「出場する大会はいつも、その時に出せる100%で走るつもりで出ています。自分の気持ちの持ち方の違いで、実際の走り方に違いはないのかもしれません」

昨年の今大会は、寒さのため路面の凍結がかなりあった。それを避けて走っていたため、最短距離より長い距離を走っていた。「それがなければ3人くらい大会記録を出していたかもしれません」。今年も最低気温が氷点下になる予報も出ているが、路面の凍結がなければ大会記録更新が期待できる。

ライバルと共闘することでレベルアップを

昨年のレース中、市山はライバル選手とコミュニケーションをしながら走っていた。一度、12~15kmの間で先頭集団から離されてしまった。「61分半が目標で、その時点でもう61分を切るペースだった」ため、無理に付こうとしなかった。だが先頭集団との差が徐々に開かなくなった。「15km過ぎてから、同じ集団にいた藤本珠輝(25、ロジスティード)選手と話して、一緒に行こうということになったんですが、自分だけ行く形になりました」。市山のペースアップが、藤本の想定を上回ったということだろう。

16~17kmの間で先頭のS.キプチルチル(24、中電工)と西澤侑真(25、トヨタ紡織)に追いつき3人の先頭集団を形成。そのときも西澤とコミュニケーションを取っている。

「外国人選手のペースが少し落ち着いたので、西澤選手に上げられるか確認したのですが、前に行ってくれ、という合図をされたので、残り3kmか2.5kmくらいで思いきり行きました」

3週間後の東京マラソンでも、日本人1位を争っていた井上大仁(33、三菱重工)が給水を取り損ねたのを見て、自分の給水を手渡している。フィニッシュ地点まで残り5km付近である。

「何が何でも優勝するとか、誰かを蹴落として走るとかではなく、今走っている集団の誰かが勝てばいい、と思って走っています。給水を渡すのも、平等で最後まで勝負をしたいからです。みんなで記録を出せれば嬉しいですし、勝ち負けはその日偶然、元気があった選手が勝つ、という考え方をしますね」

昨年の例では、市山が他の選手に話しかけるのはペースを上げたい時である。今年のレース中も、市山が誰かに話しかけたりジェスチャーでコミュニケーションを取っている時は、スパートの合図と思ってもいいのではないか。

勝負どころは15kmから

全日本実業団ハーフマラソンが行われる山口市のコースは、最初の3~5kmが上りでペースを上げられない。しかし7kmまでが下りで、8kmから折り返しの12kmまでがまたなだらかな上りで、折り返してからは20kmまでなだらかに下る。ただ最初の3~5kmの上り以外は、平坦なコースと感じる選手が多いようだ。

「最初の5kmはペースが上がらないので、みんな付くことができるんです。そこから残りの15kmのレースが始まる感じです。レースが動くのは15kmからだと想定しています。15kmで余裕を持てていれば、前回と同様に追いついたり、ペースアップしたりすることができます。15kmまで余力を残すには前半の走りが重要です。5kmを過ぎて右折したところから下りになってペースも上がるのですが、橋などのアップダウンもいくつかあります。そこの小さな上りを勢いよく走ってしまうと脚を使ってしまうので、最初の5~6kmのように(必要な筋肉など)使うべきところを使って走ることで、後半まで力を残すことができます」

その走り方で大会新記録を目指すが、大会新まで行けば、あと10数秒で59分台に届くことになる。1km1秒の短縮は、ハーフマラソンの距離では簡単なことではないかもしれない。だが「最初の5kmを落ち着いた走り方でも、10~20秒速くなれば、60分切りも大会として可能性はあると思います」と市山は感じている。前回の5km通過が14分36秒。風の吹き方にも影響を受けるので一概には言えないが、14分20~25秒で5kmを通過したときは、59分台の可能性がある。山口のコースで59分台なら、日本記録(59分27秒)に匹敵する価値がある。

そして東京マラソンでは新旧日本記録保持者の大迫傑(34、リーニン)と鈴木健吾(30、横浜市陸協)、昨年の東京世界陸上代表だった近藤亮太(26、三菱重工)と小山直城(29、Honda)たちと対決する。このメンバーで勝てばすごいことだが、市山は勝負にこだわらない。

「誰かが日本記録を出せればいい、一緒に走っている集団の誰かが勝てばいい、と思っているので、敵として走ることはしません。とりあえず、2時間05分30秒を切るタイムを出せたらいいですね。その後の海外マラソンで日本記録を狙えればいいかな、と思っています」

独特のマラソン観で走る市山が、まずはハーフマラソンでどんな走りをするかに注目したい。

(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)

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