柔道57kg級の古賀ひより「自分の方が上ですかね(笑)」父・稔彦さんに続き大会最重量の相手に快勝、受け継がれた“三四郎魂”

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2026-06-22 15:00
柔道57kg級の古賀ひより「自分の方が上ですかね(笑)」父・稔彦さんに続き大会最重量の相手に快勝、受け継がれた“三四郎魂”

親子2代で大会最重量の巨漢選手に快勝――。体重無差別で日本一を争う全日本女子柔道選手権(4月、横浜武道館)で、57kg級の古賀ひより(25、パーク24)が3位に入賞した。父はバルセロナ五輪男子柔道71kg級(現73kg級)金メダリストの故・稔彦さん(2021年死去、53歳)。「平成の三四郎」と呼ばれた父も、1990年の男子全日本選手権で準優勝。父娘そろって、大舞台で重量級を打ち破り、「柔よく剛を制す」の神髄を披露して会場を沸かせた。

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36選手が出場した今年の「皇后杯」で、女子体重別7階級の下から3番目に軽い階級になる古賀の登録体重は53kg。同じ57kg級で昨年準優勝した白金未桜(20、筑波大)もいたが、最軽量だった。それでも、試合は闘志満々。スピードと気迫で相手を攻めまくった。

初戦の2回戦で勢いに乗った。78kg級の相手を開始わずか47秒で送り襟絞めに仕留めて一本勝ち。好スタートを切ると、3回戦は60kgの相手に3ー0の旗判定で勝った。最大の見せ場となったのが準々決勝だ。78kg超級の元世界王者で今大会最重量である128kgの朝比奈沙羅(29、FUKUDEN&GRIP)に、ほとんど技をかけさせない。軽快な動きで先手、先手で攻め、主審、副審計3人の判定の旗は、文句なく全て古賀にあがった。

体重差が2倍以上ある相手と距離を取るために、古賀は片手で組んだところから懐に飛び込んで背負い投げ、反対の左の袖釣り込み腰を仕掛ける。上から持たれると、今度は相手の足をつかんだ。そこから足取り、小内巻き込みなどへ変化する。有効以上のポイントは奪えなかったものの、5分間、動きっぱなしで勝利を得た。

優勝した63kg級の渡邉聖子(26、警視庁)に準決勝で敗れたあと、報道陣に囲まれた。

「優勝を目指していたので悔しい。でも、自分が持っているものは出せたかな、と思います。旗判定の試合なので、先に先にと技を掛けようという気持ちが結果につながったと思う」

体重別に完全移行した国際柔道連盟(IJF)のルールで行われているオリンピック、世界選手権は現在、無差別の試合はない。女子の場合、最も重い78㎏超級(78㎏以上なら何㎏でもOK)を除くと、試合をする2人の体重差は最大で8㎏以内。さらにルールも本戦で決まらない場合は、時間無制限の延長となり、どちらかがポイントを奪うか、片方、もしくは双方が反則負けになるまで続く形になっている。

それがこの大会では体重差は関係ないので、普通なら体格の大きい選手が有利。特に腕力の劣る女子では、組み手で相手を制御するのが難しいため、スタミナ面と合わせて男子以上に体重差は勝利に直結する。だが、元々の柔道の試合には延長はない。この大会は国際大会とは違う本来の本戦のみ旗判定方式を採用。明確な技のポイントを奪えなくても、本戦の戦い方次第で勝つことが出来る。

加えて昨年からは、現在IJFルールでは禁止となった相手の足への手での攻撃、防御が認められた。これで相手より下になる可能性の高い小さい選手は、相手の攻撃を受ける前に攻めることが出来、返し技も狙える。古賀も「足を持てることになったので、全日本に挑戦してみたいと思い、2年連続で出場出来た。この舞台で出来るというのは、柔道人生で嬉しいこと。全てを味わい、楽しもうという気持ちで臨んだ」と話した。

笑顔がはじけたのは、やはり父の話題になった時だ。「お父さんの全日本選手権の時と技も似ている」と言われて、「見ている人はそう思うかもしれないが、自分的には意識せず、出せる技で勝負しようと思った。(父の全日本は)決勝で小川直也さん(当時130㎏)に投げられたところ(一本負け)だけ、映像で見たことがある。自分は準々決勝でああいう大きな相手に勝ったので、自分の方が上ですかね」と笑った。

だが、父は実際には初戦で135㎏の相手を下すと、準々決勝はこの時の大会最重量だった155㎏の巨漢選手にこの日の娘と同じ足への攻撃で小内巻き込みなどを仕掛けて勝っている。それを告げられると、「いや、その試合は見ていないのでわかりません。ただ、大きい対戦相手にできる技は限られているので、自然と同じようになったのかな、と思います」と答えた。

朝比奈戦を振り返ってもらうと、闘志だけでなく冷静な試合運びが勝機を生んだのが分かった。「組まれたら投げられる。少し、怖さはあったが、自分のペースでやれた。結構、相手の動きをみることが出来ていたと思います。(延長のない)5分間だけだから、最後にきつくなるのは考えずに、最初から技を出していって動きを止めない。それが判定勝ちにつながったのかな」。まさに作戦通りだったのだろう。

昨年結婚した25歳は、今年限りでの現役引退を決意しており、大会後に全日本柔道連盟から国際大会の強化指定選手の内示を受けたが、断った。指導する元日本代表女子監督でパーク24女子監督の園田隆二氏は、「力を入れるところと、スピードを出すために抜くところのセンスを持っている。それは、教えて出来るものではない。さすが、古賀さんの娘だなと思う」と目を細めた。

3人の子どもがいずれも父の後を追って柔道を志した古賀家で、生前の父は「長男(颯人=神奈川・慶応高教、28歳)は真面目。次男(玄暉=旭化成、27歳)はセンスがある。一番下の娘(ひより)は甘えん坊だが、自分を持っている」と話していた。

現在、シニアの最高峰レベルの大会での無差別を実施しているのは、世界中でこの男女の全日本選手権のみだ。体格差もルールも、柔道本来の形を残す大舞台で、受け継がれた「三四郎魂」が見る者全てを魅了した。

(竹園隆浩/スポーツライター)

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