「どの選手にもメダルの可能性が」樋口新葉が坂本花織ら日本選手の強みを分析、フィギュア女子の頂上決戦へ「最後は気持ち」

フィギュアスケート北京オリンピック™団体銀メダリスト、女子シングル4位入賞の樋口新葉(25)がミラノ・コルティナ五輪、女子シングル(日本時間18日)の見どころを紹介。
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今大会、フィギュアスケートの日本勢は団体銀、男子シングル銀(鍵山優真)・銅(佐藤駿)、三浦璃来&木原龍一の“りくりゅう”ペアが悲願の金メダルに輝いた。ここまで全ての種目でメダルを獲得し、快進撃が続いている。
“大トリ”の女子シングルでは、坂本花織(25、シスメックス)、千葉百音(20、木下グループ)、中井亜美(17、TOKIOインカラミ)が出場。前回の北京五輪では、坂本が銅メダル。樋口もショートとフリーでトリプルアクセルを決めるなど4位入賞。表彰台入りに迫る好演技を披露した。全体的に世界のレベルが高いと感じている樋口は、「どの選手にも(メダルの)可能性がある大会になる」と分析し、各選手の特徴に迫った。
坂本花織の突出したスピード感「ほとんど止まらない」
今シーズン限りでの現役引退を表明している坂本は、3度目の五輪出場となり、今回がラスト五輪。ともに世界と戦ってきた樋口が、盟友でもある坂本の滑りを分析した。
Q)坂本選手の魅力は?
樋口:スピードを落とさずにジャンプを踏み切り、着氷まで持っていくというのが一連の流れになっているので、そこが坂本選手の魅力に。スピードがあればあるだけ、踏み切りのタイミングだったり、高さを出すのが難しかったりするんですが、そのタイミングを全て合わせて跳んでくる。流れと高さが同時に出せて、GOE(出来栄え点)でプラスを取るために必要なポイントなので、そこをしっかり押さえているところが特徴かなと思います。
Q)坂本選手は他の選手と比べてもスピードが速い?
樋口:そうですね。ほとんどずっと止まることがないというか、速いスピードに乗ってジャンプを跳ぶっていうのが、昔からの魅力。ジャンプの前にスピードが落ちてしまう選手もいるんですけど、そこをスピードを落とさずに飛んでるところが坂本選手の魅力です。
そのスピードを維持するための足の力や、一歩で進む「蹴り」の長さ、氷に足が乗っている時間が長いことも、スピードを維持できる要因と分析する樋口。
Q)樋口選手から見た坂本選手らしい滑りとは?
樋口:やはりすごくパワフルで、スピードもそうなんですけど、全体的に体を大きく使って滑っているイメージが。なんだろう。見ているとすごく元気になるというか、そういう滑りをしているなと思います。最後のシーズンの一番大きな大会だと思うので、前回よりも高い位置(メダル)を狙っていると思うので、私もそこを応援したい。
千葉百音の高速スピン「体から音が出てるような感じ」
Q)千葉百音選手の特徴は?
樋口:千葉選手はスピンとステップでレベルを絶対に落とさない部分。そこでまず、他の選手との差がついて、さらにその出来栄え点でプラスがつくとまた総合の点数が高くなってくるので、しっかりレベルを取るというところが魅力。あとは本当にスピンの回転も速く、軸も真っ直ぐ。姿勢も綺麗に保てるというところがポイントかなと思います。
Q)ステップの魅力については?
樋口:千葉選手のステップは結構細かい動きが多いと思うんですけど、その中ですごく音に合わせてステップを踏んでいるところが魅力だなと。
Q)音に合わせて滑るというのは難しい?
樋口:同じリズムでステップを踏むということは、それも難しいんですけど、それをリズムを変えてステップを踏まなければいけないというのは、かなり難しい。
Q)ショートも急に変わる部分が...
樋口:ステップは後半の盛り上がる部分だと思うので、割とアップテンポでステップを踏まなければいけないので、見ててもすごく難しそうだなと。
Q)本人に話を聞いたときに“音をまとう”と表現されていて。
樋口:特にショートプログラムでは音をまとってる感じが見えるなというふうに思います。
その曲に合わせて、自分の体から曲が出てるような感じで滑っているように。もちろん最後のスピンでも特に(ボーカルの)声が出ている部分に合わせて回転を速くすることも難しいので、それが音に合ってるっていうのは、何か本当に自分の体から(曲の)音が出ているみたいに見えます。
Q)オリンピックで期待する部分は?アドバイスなど
樋口:やっぱり緊張すると思うんですけど、ここ数年で大きい大会、グランプリファイナルも出て結果を残している選手なので、オリンピックという舞台でも安心して試合が見られるのかなと。私もオリンピックに出たときはすごく緊張して、他の大会、世界選手権と比べても全然違う緊張感があったので、独特な雰囲気に飲まれずに自分のペースで頑張って欲しいです。
中井亜美の最大の武器「“フワっと浮く”ようなトリプルアクセル」
五輪イヤーの今シーズンにシニアデビューを果たした17歳の中井。いきなりGPシリーズ初戦のフランス杯(10月)で初優勝を飾り、同シリーズ上位6人で争われるGPファイナル(12月、名古屋)で銀メダルを獲得した。
Q)中井選手のすごさとは?
樋口:中井選手はトリプルアクセルが一番の武器。すごく難しいジャンプなので、そのジャンプを入れた中でも最後まで大きく崩れずに完璧に滑っている姿が今シーズンはとても印象的なので、オリンピックでも強みになるのかなと。
Q)トリプルアクセルの中でも、中井選手ならではの特徴とは?
樋口:中井選手のアクセルは結構軽やかに上がっていく印象があるので、流れがあるというか、フワっと浮くようなジャンプなのかなと。踏切が氷にエッジを引っ掛けて跳ぶっていうよりも、ちょっと“スキッド”させて跳んでいる印象が。
Q)スキッドというのは?
樋口:シュッて止まるような動きがあるんですけど、踏切のときにちょっと横滑りさせて跳ぶんですね。それをスキッドって言うんですけど、そうすると少しスピードが落ちるので、瞬間的に落ちて、上に上がる力が出るので、フワっと浮くようなジャンプになるのかなと思います。つま先で引っかける人とスキッドさせる人と、、ちなみに私はこの跳び方(スキッド)はできませんでした(笑)。引っかけるタイプでした。
Q)初出場の中井選手にエールを
樋口:シニア1年目なので、あまり気負わずに滑っている印象を受けていて、オリンピックも楽しんで滑ってもらえたらいいなと。3選手(坂本、千葉、中井)ともに言えるんですけど、すごくいい流れでここまで来てると思うので、自分の納得のいく演技をしてもらいたいです。
日本勢の前に立ちはだかる海外勢
海外のライバル選手として、25年世界選手権・金メダルのアリサ・リウ(20、アメリカ)、ロシア選手権3連覇中で、個人の中立選手(AIN)として出場するアデリア・ペトロシアン(18)に注目。アリサ・リウは前回北京五輪で16歳ながら6位入賞も、その後に現役を一度引退。24年に復帰し、25年の世界選手権で優勝、12月のGPファイナルも逆転優勝を果たし、トップ選手へと急成長を遂げた。
Q)アリサ・リウ選手の特徴について?
樋口:昨シーズンから復帰して、いきなり世界チャンピオンになったので、ブランクがあってもすぐに戻ってこれるほど素晴らしい選手で、ほとんどの試合でミスをしているところを見ないというか、いつも安定した演技をしているところが特徴。
Q)どのような部分に安定感がある?
樋口:すごくスピードを出してスケートをしているという印象はないですが、スピード出せば出すだけジャンプを跳ぶのも難しくなってくるので。スピードを出さない分、やはりジャンプも安定しやすかったりもする。
Q)世界選手権でも金メダルを取りました
樋口:そうですね。大きな試合でもプレッシャーを感じないのかなというふうに思っていて、いつも試合を楽しんでるイメージが。
Q)そういったメンタルの強さも、演技に表れている?
樋口:何か結果を残すとかっていうよりも、本当に自分のためにスケートをしているんだなというように見えます。
Q)ペトロシアン選手について?
樋口:難しいジャンプを入れることで全体的にプログラムとしての難易度が上がってくると思うんですけど、ロシア選手権の映像を見ると、4回転、トリプルアクセルがまだ安定しきっていないのかなという印象が。ジャンプの前に難しい入り方だったり、ジャンプの後にも難しいステップを組み込んでいるので、出来栄え点が高くもらえるようにプログラム全体を作っている印象を受けました。
Q)ロシア選手権では高得点を出しましたが?
樋口:ロシアの国内でしかまだ戦っていないと思うので、日本の選手だったり世界のトップスケーターと試合をしたときに、どういった違いが出てくるのかは、誰にも分からないところだと思うので、そこはすごく楽しみ。
Q)日本人はどうやって戦っていけばいいのか?
樋口:ペトロシアン選手だけじゃなく、ほとんどの選手が、特にショートプログラムは同じジャンプを跳んでくると思うんですけど、ミスをしないことが大前提で、あとはどれだけ質の高いものを出していけるかというのがポイントになってきます。
Q)ミスをしないようにするには?
樋口:全ての選手がレベルを上げて戦ってくる場面だと思うので、最後は本当に気持ちの部分で持っていくのかなと。3選手ともメダルを狙える選手なので、みんなに頑張ってほしいなと思います。
■フィギュアスケート 女子シングル・ショートプログラム
日本時間18日 午前2時45分スタート