オリンピックで悲願の金!ハーフパイプ戸塚優斗選手(24)に聞く“決勝ラン” ネイル・音楽など素顔も【Nスタ解説】

ミラノ・コルティナオリンピック™、スノーボード男子ハーフパイプで金メダルを獲得した戸塚優斗選手。Nスタでは、戸塚選手と一緒に決勝のランを振り返ります。
【写真で見る】戸塚優斗選手の“願掛け”ネイル 親指にはあのバンドのロゴも
また、表彰式で話題となった「ネイル」や「好きな音楽」など素顔についてもうかがいました。
神奈川から雪があるところに運転してもらい…母親への感謝
【戸塚優斗選手(24)プロフィール】
▼神奈川県出身
▼ルーティンは四股をむふこと
▼2歳:母親の影響でスノーボードを始める
▼9歳:ハーフパイプへ
▼15歳:ワールドカップ金メダル
▼19歳:世界選手権金メダル
▼24歳:ミラノ・コルティナ五輪金メダル
ーーお母様は選手だったんですか?
戸塚優斗選手:
母は選手ではないのですが、趣味でスノーボードをやっていて、その影響で競技を始めました。
2歳の頃は覚えていないのですが、当時の映像を見ると、紐で引っ張ってもらうなどしていました。
ーーお母様はどのような存在ですか?
雪がない地域の出身なので、母には雪があるところに夜に運転して連れていってもらい、寝て起きたら朝にはスキー場にいるという生活でした。本当に支えてもらったなという思いです。
一か八か? 急遽ルーティーンを変更した決勝の舞台裏
ーー決勝2回目では、95.00点を叩き出しました。組み合わせが最高難度といわれているものです。
【戸塚優斗選手 決勝2回目 95.00点】
(1)キャブトリプルコーク1440
(2)フロントサイドトリプルコーク1440
(3)スイッチバックサイドアーリーウーブダブルロデオ900
(4)スイッチバックサイドダブルコーク1080
(5)バックサイドダブルコーク1260
ーースノーボードジャーナリストの野上大介さんは「(1)〜(5)は『地球史上最強ルーティーン』。高難易度な技に挟まれた(3)が決まったのは凄い」とコメントしていますが、いかがでしょうか?
本当に、自分の中のベストを出せたランだったのかなと思います。逆サイドから入るルーティーンでは、これがもう自分のMAXです。
3本目でもトライしたのですが、失敗してしまったので、もう少しグレードアップはできます。
ーー決勝で急遽ルーティーンを変更したそうですが、なかなかすることではないですよね?
最近いろいろな人が同じようなルーティーンを組み始めているなかで、オリジナリティをすごく重視したいなと思っていました。それを出すためには逆から入らなければいけなかったですし、それを大事にしたいなと思って急遽変更しました。
どちらから入るかという2択をずっと考えていたのですが、オリンピックに行く前のスイスでの練習最終日にちょっと変えて、このルーティーンをしっかり組んだのは決勝が初めてでした。
ーーある意味で一か八かだったのでしょうか?
一つひとつの技はできたのですが、練習で繋いだことがなかったので、本当にしっかり繋げたのは決勝が初めてです。
ーーいつもと違うルーティーンだと「次、何やるんだっけ」とはならないのでしょうか?
たまにあります。ワールドカップに出始めのときに数回ありました。自分が今何をしてるのかわからなくなってしまって、同じ技を2回やってしまったりとか、緊張したときはすごく多かったです。今はだいぶ、緊張を良いものに変えられるようになりました。
「自分の好みのタイプ」 ミラノのパイプは何が違った?
ーー「本番は練習の7割くらいまでしか出ないもの」などとよくいわれますが、今回の決勝では「120%出せた」という感じなのでしょうか、それとも「7割だな」という感じなのでしょうか?
120%MAX出せました。決勝でやった一発目の技は、公開練習3日間で何十回打っても1回しか立てていなくて、ちょっと不安だなと思いながら滑りましたが、本番では空中に出たときに「これは立てるな」と確信を得たというか。
ーー「もう1回やれ」と言われてもできない?
映像を見ると「もう1回やるのはやっぱりつらそう」だなという感じですね。
――ジャンプをするとき「これイケるな」「ちょっと違うな」というのは、身体のどの部位で、どのタイミングで感じるのでしょうか?
技では、一番下の低い平らなところから常に身体の動きを意識しています。そこでGで負けてしまったりすると、上手く回せません。
確信に変わるのは空中に出た瞬間で、板の上がり方や回転の速さが、下からすごく伝わってきます。
――パイプとの相性もあると思いますが、今回のミラノ・コルティナオリンピックのパイプは滑っていてどうでしたか?
オリンピックに行く前にスイスで練習していましたが、ミラノ・コルティナオリンピックのパイプは、スイスより少し小さかったです。その分距離があって長かったので、そこにすごく救われました。
形自体もすごく自分に合っていたというか、自分の好みのパイプだったので、ストレスはなく滑れましたね。
――距離があるほうが、技に向けての準備動作ができるということですか?
パイプが小さい分、スピードをつけるために下に下に落として、斜度を使わなければいけません。そうするとパイプが足りなくなってくるので、ミラノ・コルティナオリンピックのパイプの長さには助けられました。
「何もできない、成功できない」 北京大会後の苦悩
【3度目の挑戦で悲願の金メダル】
▼2018年 平昌大会:11位(途中棄権)、決勝で転倒し搬送
▼2022年 北京大会:10位、予定していた技が出せず転倒も
――戸塚選手は前回、前々回のオリンピックでの悔しさを胸に抱え、今回が3度目の挑戦でした。北京大会が終わったあとは何も上手く行かなくて、だいぶ苦しい思いをされたとうかがっています。
もう本当に、技を練習したとしても何もできないですし、成功できないんですよね。いつもできる技が大会で上手く行かないなど、自分の中で「なんでなんだろう」という年がずっと続きました。
――そこから何が変わった、何を変えたのでしょうか?
本当に一つひとつの技を、不安な部分を全部解消しようと思って、技の全部を基礎から始めたという感じです。下から積み上げていこうと思った年でした。
――何かつかめたかもしれないと思ったのは、何年後ぐらいだったのでしょうか?
北京大会が終わって2年後ぐらいですかね。積み上げてきたものが一気に花咲いたというか、「これはイケる」という自信に変わった年がありました。
――この4年間で、メンタル面でのご自身の進化についてはどのようなものを感じますか?
やっぱり、メンタルというのは技の精度から来ていると思っています。不安な部分があるとそれだけ心も不安定になるので、滑りで不安を少なくできたことが一番メンタルに影響しているのかなと思っています。
ミラノでの食事と、帰国後に食べた母親の手料理
――ミラノのご飯などはいかがでしたか?
ミラノの街に行けたのは1日だけだったのですが、観光ができなくて…。ドゥオーモ(大聖堂)なども見られていないです。ずっと雪山にいて、すぐ帰ってしまいましたが、ピザは食べました。
街並みは自分がイメージしていたイタリアというか、すごくオシャレな街だったので、「歩きたいな」と思いながらも、行けずという…。
――帰国後は「まずは母親の手料理を食べられたらいいかな」というお話がありましたが、もう召し上がりましたか?
はい、食べました。いつも大会が終わったあとはすき焼きを作ってくれて、他の料理も出てきます。もうずっと海外にいて食べられなかったので「やっと家に帰ってきたな」という実感が湧きましたね。おいしかったです、やっぱり。
――お母様からはどのような言葉で迎えられましたか?
「本当によく頑張った」と言ってくれました。(母に)メダルもかけて、いいものを見せられたというか、親孝行できたのかなとは思っています。
ネイルのきっかけはMrs. GREEN APPLE 特に好きな曲は?
――ネイルも話題になりましたね?
かわいい色が好きなので、かわいい色によくするんですけど、今回は金メダルをとりたいという気持ちもあって、指にちょっと金色を入れてみました。
――気分は変わりました?
やっぱり変わりますね。ずっと海外にいて爪を直せていなかったので、自爪で本当にテンションが上がらなかったんですけれど、このネイルで「願掛け」というか「もっと頑張れる」という気持ちになりました。
――ネイルを始めたきっかけはMrs. GREEN APPLEということですが?
ライブに行かせてもらったときにネイルをしているのを見て、「かわいいな」と思って1回やったら、もうやめられないというか。爪かわいくて、「このままがいいな」と思って。このままずっとやっています。親指にはMrs. GREEN APPLEのロゴが入っています。
――Mrs. GREEN APPLEで好きな曲として「愛情と矛先」、辛い・やめたくなったときに聴く曲として「ケセラセラ」、テンションをあげたいときに聴く曲として「ANTENNA」を挙げていますね。
本当にどの曲も好きなのですが、特に「愛情と矛先」の歌詞の最後には「大丈夫だよ。安心して。」とあって、自分の頑張っているときに支えてくれるというか、「イケるぞ」となります。
――競技中にも聴いているのでしょうか?
競技中は聴いていないですね。滑っているときは雪の音を聴きたいんです。板の雪と擦れる音を聴くと「上手く踏めてないな」「今、板滑ったな」というのがわかるんですよね。
でも練習中や出発前は、リラックスするためにMrs. GREEN APPLEを聴くようにしています。
ハーフパイプに入ったときに一番Gを感じる部分があるのですが、そこで音がすごく大きくなるというか、「グッ」と音がします。底は加速できる部分でもあるのですが、その音を聴くと「上手く踏めてるな」というのがわかります。
あと、かかと側の板を使っているときに板が滑ると、「ガーッ」と音がします。「これ、もしかしたら踏めてないかもしれないから着地はちょっと返ってくるかもしれない」「出ていくかもいれない」というのを、空中でなんとなく意識して構えておく感じです。
――このスピードで飛んでいると、あまり視覚情報では捉えていないということでしょうか?
回っているときは、着地は何も見えません。空中で抜けと踏みを考えて、どこに落ちるのかをなんとなく予測するのが大事なのかなと。
――空中では何も見えていない?
大きい回転をすると、自分の膝や手は見えます。
――今回のオリンピックの歓声はいかがでしたか?
「うわーっ!」と盛り上がってくれて、自分も「決めたんだな」という実感が湧きました。あとは、来てくれている人の「優斗ー!優斗!」という声が聞こえて、「やったな」となりました。
少年少女たちへのメッセージと、ハーフパイプで表現したいこと
――少年少女たちに伝えたいことは?
自分は平昌大会、北京大会と出てきて、本当に悔しい思いをして、どん底というか、「もうやめたい」というところまでいったんですけど、そこからあきらめずにここまでやってきて、成果が出せたと思っています。
何事もあきらめないでやってほしいし、「やってきたことは最後に必ず報われるんだよと見せられたらいいな」と思っていたので、それが結果として見せられましたし、本当にいいものを見せられたのかなと思います。
――今後ハーフパイプで、どのようなご自身の姿を表現していきたいですか?
今は回転ばっかりじゃなくて、自分のオリジナリティやスタイルというものが主流になる方向に変わっていくと思います。
そういった部分も織り交ぜながら自分のできることを探していきたいですし、ハーフパイプのレベルを最前線でどんどん引き上げていけたら一番嬉しいです。
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<プロフィール>
戸塚優斗(24)
2001年生まれ 神奈川県出身
ミラノ・コルティナ五輪で金メダル