「相撲をオリンピック競技に」白鵬翔氏が“第二の挑戦” 白鵬杯で女子の部を新設、男女の国際大会も計画へ

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2026-03-04 12:00
「相撲をオリンピック競技に」白鵬翔氏が“第二の挑戦” 白鵬杯で女子の部を新設、男女の国際大会も計画へ

大相撲元横綱の白鵬翔氏が実行委員長を務める世界相撲大会白鵬杯が2月、2日間の日程で開催された。第16回を迎えた今年は、会場を昨年までの国技館から東京都江東区のトヨタアリーナ東京に移し、女子の部を新設。「相撲をオリンピック競技に」との夢に向けて、新たな門出となった。

「君たちは未来への宝だ 相撲のチカラで世界にはばたけ」をキャッチフレーズに19の国と地域が参加した大会。初日は例年通り幼児から小、中学生の約1300人が集い、個人戦予選ブロックと団体戦が行われた。白鵬氏は、土を盛って作ったメインの土俵の正面に陣取り、挨拶にきた1人ひとりと握手。肩を組んで話し、出場する子どもらには「優勝したら、表彰式でまた会えるよ」とウインク。笑顔で写真撮影に応じていた。

会場は1回戦から大盛り上がりだった。国技館よりも観客席が土俵に近く、臨場感がある。ブラジルチームは母国の歌で選手を激励。日本の関係者も声を張り上げていた。小学生も上級生だと体格も、相撲の形も出来つつある。だが、低学年はまだまわし姿が初々しい。痩せた子も多く、遊び感覚だ。勝って胸を張って土俵を降りる子や、負けて父親とみられる男性に抱き着き、泣きじゃくる子も。奉納相撲や村相撲が盛んだった日本の原風景を見るようだった。

そして、2日目。いよいよ女子の部が始まった。小学1年から一般の成人まで約350人がウエアの上からまわしをつけて、土俵に上がった。開始早々、相手ににらまれて泣き出す小学1年生に白鵬氏が土俵下から「ガンバレ~」と激励、勝負が終わると拍手を送った。女の子は泣きながらだが、きちんと礼をして土俵を降りた。だが、こちらも男子と同様に、年齢が進むにつれてしっかりした相撲の形が出来ている選手が登場。立ち合いから激しくぶつかり合う男子と違い、組み合って投げを打ち合う展開が多くみられて、会場を大いに沸かせた。

オリンピックを開催する国際オリンピック委員会(IOC)は男女平等を原則としており、最近は五輪で男女混合種目も増えた。元々は男子のみだった野球と女子のみの参加だったソフトボールは「世界野球ソフトボール連盟」を作り、2021年の東京大会で復活。24年パリ大会では除外されたが、28年ロサンゼルス大会では再び登場することが決まっている。

相撲もオリンピック入りを目指すなら女子の普及は欠かせない。白鵬杯も以前は小学生の部に女子が参加していたが、会場が14年に国技館に移ったことで、土俵への「女人禁制」を掲げる日本相撲協会の方針で男子のみになっていた。それが白鵬氏の協会退職に伴い、支援するトヨタ自動車の豊田章男会長の力で会場が決定。堂々と「女子の部」が始まった背景がある。白鵬氏も「これまでの15年が土台となり、スポーツとしての相撲になった。蓋を開けてみないと分からない部分もたくさんあったが、本当にいい取組が多い。350人の女の子が集まった未来がある」とご満悦だった。

世界相撲選手権を開催し、アマチュアの相撲を統括する国際相撲連盟は豊田会長が昨年の理事会で新会長に就任し、白鵬氏が顧問に就いた。現在90カ国弱の加盟国があるが、世界には約160カ国に日本の相撲に近いそれぞれの国ごとの伝統的な格闘技があると言われている。その一つがこの秋、名古屋で開催されるアジア大会で実施されるウズベキスタンの国技「クラッシュ」だ。寝技のない柔道に近く、投げて相手の背中を着ければ勝利が決まる。中央アジアで人気が高く、日本選手団としては日本レスリング協会が中心になって選考会をして、代表を決める方針でいる。

実はアジア大会は、開催国からの提案による競技が採用されるルールもあり、相撲も候補には上がったと言われる。IOC委員らも来日が予定されており、将来のオリンピック入りを見据えてアマ相撲関係者らは働きかけを強める予定だ。ちょうど大会前の7月には相撲協会が名古屋場所を開催する。白鵬氏はその大相撲の人気にもあやかってアジア大会と同じ時期に、名古屋で相撲の大会が出来ないか、動いているという。

大相撲中継でも活躍した元NHKアナウンサーの刈屋富士雄氏がいう。「相撲は世界のどの格闘技よりもルールが分かりやすく、経験のない外国人でもすぐになじむことが出来る。いろんなスポーツからの転向もきく。練習するにも土俵の広さがあれば、OK。人数も2人で組み合える。オリンピックに入れるスポーツだと思う」

刈屋氏は、2004年アテネオリンピックの体操男子団体決勝の実況を担当。「伸身の新月面が描く放物線は、栄光への架け橋だ」の名調子でも知られる。スポーツ界の国際事情にも詳しく、この2日間は、会場でユーチューブ配信の実況を務めていた。

2日目には女子とともに新たに男子の成人の部も開かれた。これまで子どもの大会を運営してきた白鵬氏だが、今後は白鵬杯はもちろんのこと、それとは別の形で国際相撲連盟加盟国の全部が参加できる男女の国際大会を計画していくという。「女子と男子の成年の国際大会が増えていかないと、オリンピックはない。今年はその第一歩として大きな取り組み。嬉しい気持ちでいっぱいだ」

2日目、都内の天気は雪のち曇り。大会が始まる午前中は会場近くも雪に包まれた。「雪と雨が降れば、地が固まる。きょうは相撲界にとって、とても大切な日。参加してくれた人たちは運がいい」。悪天候までもを味方につけたと言わんばかりの白鵬氏。「第二の挑戦」が始まっている。

(竹園隆浩/スポーツライター)

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