「日本の30年前と似てきている」中国で深刻化するデフレで“信用危機”も?【Bizスクエア】

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2026-03-11 07:00
「日本の30年前と似てきている」中国で深刻化するデフレで“信用危機”も?【Bizスクエア】

中国の全国人民代表大会が開幕し、注目の経済成長率の目標が引き下げられた。深刻化するデフレの出口が見えない中国経済。今後懸念される“信用危機”とは?

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中国で人気が高まる「倒産車」

中国東部・江蘇省の自動車販売会社。店頭に並ぶのは“AIを搭載した新車”ばかりだが、どれも破格の値段だ。

自動車販売会社・社長
「23万元(約506万円)から25万元(約550万円)が元の値段だが、14万元(約308万円)から15万元(約330万円)ほどで売っている」

“4割引き”で売られている自動車のメーカーは、2024年に事実上の経営破綻。販売店では破綻後に売れ残っていた車を仕入れ、格安で販売しているのだ。

こうした車は「倒産車」と呼ばれ、多くはメーカー保証がないリスクがあるが価格の安さから消費者の人気を集めている。

市民
「倒産車は、若者の消費の現状を反映していると思う」

政府注力「ロボット産業」に懸念

失業率の高止まりなどで消費が冷え込む中国。

企業は値下げに踏み切り、売上げは減少。その結果給料が上がらず、さらに消費が冷え込む“デフレスパイラル”に陥りつつあり、デフレが深刻化している。

また、消費冷え込みの大きな要因となっているのが、長引く不動産不況だ。

首都・北京の中心部でも工事がストップしたビルが目につき、中国メディアによると、広西チワン族自治区にある建設工事がストップしたビルが“ダイバーの名所”になっているという。ビルの地下に水がたまり、そこに潜って楽しんでいるのだ。

中国政府が国を挙げて推し進めている「ロボット開発」でも懸念が生じている。

2025年に中国国内で発売されたAIロボットは330種類以上で、いわば“ロボットバブル”状態。

中国国内のロボット企業はいまや140社以上に上るが、企業数やロボットの機種が増えることで価格競争が激化し、“一部の企業しか生き残れないのでは”という声があるのだ。

成長率目標を引き下げ

経済への不安が広がるなか、5日に開幕した中国の国会にあたる全人代(全国人民代表大会)では、李強首相が“消費の振興”にさらに力を入れる方針を打ち出した。

李強首相(5日)
「我が国の経済発展は依然として少なからぬ困難と課題に直面している。強大な国内市場の整備に力を入れる。消費押し上げ特別行動を踏み込んで実施する」

また、中国政府は25年まで3年連続で「5%前後」としていた【経済成長率の目標】を「4.5~5%」に引き下げた。

<中国 実質経済成長率>※国家統計局
▼23年:目標5%前後⇒実績5.4%
▼24年:目標5%前後⇒実績5.0%
▼25年:目標5%前後⇒実績5.0%
▼26年:目標4.5~5%前後

目標を実体経済に近づけ、過剰生産などの問題に切り込む狙いなのか。中国経済に詳しい柯隆さんはー

『東京財団』主席研究員 柯隆さん
「そもそも“見通し”ではなく“目標”を出すというのは計画経済のやり方。地方政府に対して一つの目標を見せるわけだが、習近平一強体制のもとで地方政府の首長たちが迷っている。目標を4.5%と設定すると、『頑張る気がない』と自分の首が危なくなる。だから地方は5%を目指そうとするが、実際の全国で見たマクロ経済の場合は、4.5%しかないだろうと言われている。なので今回は少し幅を利かせた目標になっている」

――25年後半は4%台の成長に落ちている

柯隆さん
「2025年の第4四半期が厳しかったのは、トランプ関税の影響が出てきたから。もう一つはサプライチェーンの分散。中国からどんどん企業が出ていく。だから26年は25年の第4四半期の動きを引き継いだ感じで下がってくると思う」

――そもそも5%前後目標で、2年続けて実績5.0%は本当なのか。実際の成長率は?

柯隆さん
「アメリカのロジウムグループという有名なシンクタンクが世界主要国の経済成長の統計を検証していて、中国の25年の成長率は2.5%ぐらいだろうと推計している。私の体感としても5%より2.5%の方がしっくりくる」

深刻化する「若者の失業率」

GDPの約3割を占めるとされる【不動産開発投資】は、2021年頃から毎年2桁のペースで減り、25年は「前年比-17%」。柯隆さんは、「実質的にクラッシュしている状況」だと話す。

また、【若者の失業率】も依然高い状況だ。

<中国 26年1月の失業率>※国家統計局
▼全体⇒5.2%
▼16-24歳⇒16.3%
▼25-29歳⇒6.8%
▼30-59歳⇒4.0%

『東京財団』主席研究員 柯隆さん
「この若者の失業率こそ問題。公式統計は16.3%だが、北京大学の研究チームのサンプリング調査だと46%。要するに出稼ぎの失業者も全部ひっくるめて入れるともっと高いということ」

経済の屋台骨「輸出」にも異変

失業率が高い状況では、消費も伸びず需要が弱くなる。そうなると物価も上がらない。卸売物価の生産者物価指数もマイナスが続いている。

2026年1月※前年同月比
▼消費者物価指数:0.2%
▼生産者物価指数(PPI):-1.4%

『東京財団』主席研究員 柯隆さん
「生産者物価指数(PPI)がマイナスというのは、要するに企業の取引が停滞していくこと。全人代で出された26年の目標物価上昇率は2%前後だが、PPIがマイナスで本当に達成できるのか。乖離が大きすぎる」

経済の屋台骨である【輸出】でも2024年から25年にかけての対米輸出が-20%と急落しているが、柯隆さんは“別の問題”を指摘する。

柯隆さん
「対米輸出は-20%だが、一方で2025年の中国の貿易黒字は1兆2000億ドル。とんでもない数字だが、つまりはアフリカやグローバルサウスへの輸出が増えたからだ。ただこれを本当に喜んでいいのかは疑問。25年のアフリカ経済はすごく悪かったが、どうしてアフリカへの輸出が増えたかというと中国からの援助と、一帯一路プロジェクト」

――いわゆる“ひも付き援助”

柯隆さん
「ひも付きというか、ほとんど工事のプロジェクトを請け負ったのは中国企業。結局、中国企業が中国から輸入してやっているわけだから、右ポケットから左ポケットに入れているだけ。なので、1兆2000億ドルの貿易黒字なのに25年の外貨準備の増加はわずか1000億ドル。これは喜べない数字だと思う」

力を入れるべきは「需要サイド」

経済の苦境を打破するため全人代で出された「第15次5か年計画」。そこで打ち出されたのが【自立自強】・【新質生産力】・【内需拡大】だ。

『東京財団』主席研究員 柯隆さん
「自立自強と新質生産力は、AIや半導体など先端技術の国内自給率を強化するということだが、重要なのは低所得層の社会保障、賃金の引き上げなのに全くやってない。今の中国経済は需要不足で、需給ギャップが大きすぎるところが問題。需要サイドをやらなきゃいけないのに、供給サイドばかり力を入れていくから、ますます需給ギャップが大きくなる」

デフレ深刻…“信用危機”の懸念

柯隆さんは、中国のデフレ経済を「日本の30年前とよく似てきている」と話す。

『東京財団』主席研究員 柯隆さん
「デフレに陥って不動産が売れなくなり不良債権化する。日本と違って不良債権の数字は表に出てこないが、どんどん負のスパイラルにはまってしまっている感じだ」

【過剰投資・過剰生産】【値下げ競争】
 ↓
【デフレ深刻化】
 ↓
【企業 債務不履行】収益悪化
 ↓
【銀行 貸し渋り・不良債権処理】経営悪化
 ↓
【信用危機】

――色んな大手不動産デベロッパーが潰れたという話はあるが、連鎖して金融機関が倒れたという話はあまり聞かない

柯隆さん
「大手国有銀行は国が守るから絶対潰れないが、たくさんある中小の金融機関はM&Aで吸収合併させる。ただ、吸収合併しても不良債権は残るわけで、最終的には国債をたくさん発行して引き当てていくのだが、やりすぎるとハイパーインフレになる。バランスシート上は不良債権の金額が縮小するが社会不安は残る」

――信用危機になったときには、もう駄目だという企業は潰して不良債権を表に出して、公的資金を金融機関に注入して残す金融機関を決めていくということを早くやらないと手遅れになるというのは、日本から学んだのでは

柯隆さん
「当時の日本を知っている中国人はみんな高齢化している。だから習近平政権の中にはおそらく専門家がいない。現役の政策立案者たちは、『少し時間がたてば景気が良くなるだろう。良くなればまた復活してくるだろう』という考え。楽観的に期待しながら、結局時間をロスする。そうするとますます信用の収縮、貸し渋り貸し剥がしがどんどんこれから起きる」

(BS-TBS『Bizスクエア』 2026年3月7日放送より)

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