総額15兆円投入の“支援”は支持率のため?「6月末に財源枯渇」試算でも電気・ガス・ガソリンの補助を継続する理由【Nスタ解説】

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2026-05-26 20:35

2026年夏の電気・ガス料金の支援が閣議決定されました。
ただ、一律の補助では光熱費を多く払う“所得の高い人”ほど恩恵が大きいという点で、問題になっています。

【写真を見る】電気・ガス代6月使用分から値上がり 家計の負担はいくら増える?

高所得者ほど優遇 電気・ガス料金の補助決定に様々な声 

井上貴博キャスター:
政府は26日、夏の電気・ガス料金を支援するため、2026年度の予備費から、5135億円支出することを閣議決定しました。

7月~9月の3か月、標準的な世帯では、5000円程度の負担軽減となります。(2人以上の世帯目安)

2025年は同じ3か月で3000円程度の軽減だったため、支援額は上回る形となり、これは高市総理が強調している点でもあります。

そもそも、電気・ガス料金の補助はロシアのウクライナ侵攻を受けて2023年1月から開始し、これまで5回行われました。

今回の補助は、2026年4月に組まれた本予算の中の「予備費」、いわゆる“予見しがたい不測の事態”に使う緊急的な財源から5135億円があてられることになります。

これに対して、様々な声も上がっているようです。

TBS報道局経済部 財務省担当 蓮井啓介 記者:
夏の暑さと冬の寒さは通例となっており、財務省幹部からは「暑くなる夏や寒くなる冬に光熱費が上がるのは当たり前。予見しがたい不測の事態に使われるはずの“予備費”からあてるのはおかしい」との声も出ています。

電気・ガス料金の支援は、困っている人たちにとっては即効性のある支援ではありますが、その一方で課題もあります。

高所得者ほど優遇されるという問題や、予備費は国会の事前承認がなくても閣議で決定すれば使うことが可能です。国会の事後承認のシステムの問題も指摘されています。

ガソリン補助も継続の意向

井上キャスター:
さらに、政府はガソリンの補助金も継続する意向を示しました。

ガソリンの補助金は2026年3月に再開され、財源は1兆1600億円でした。

現在は、レギュラーガソリンを1リットル=170円程度に抑えるため、41.8円(1リットル)の補助(5月21日~27日)があり、店頭のガソリン価格は世界と比較しても、日本は突出して低く抑えることができています。

野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミストの木内登英さんによると、「中東情勢が長引くと、原油価格高騰の可能性もあり、このままだと6月末には財源が枯渇する」と指摘しています。

つまり、財政負担がどんどん膨れ上がっていく状況です。

TBS報道局経済部 財務省担当 蓮井記者:
41.8円(1リットル)のガソリン補助は、1か月続ければ4000億円規模の財政負担となります。

財政負担は言い換えれば、税金を投入しているということなので、税金の使い道をどう考えるのかというのは注目すべき点です。

現在は、車社会のアメリカと比較しても、日本のガソリン価格は安くなっています。それについても考えるところがあります。

実は、これまでに電気・ガス・ガソリンの補助金に、15兆円近く投じています。これは今、議論されている「食料品消費税ゼロ」を3年間実施できるくらい巨額な財政負担となっています。

井上キャスター:
目先の生活を考えれば、安くしてもらえるのはありがたいことですが、それには私たちが納めている税金が投入されているわけで、これはどう受け止めればよいのでしょう。

根本的な問題として、1ドル=160円水準という円安が進んでいる状況を抑えることが一番の近道なのではないかと個人的に思います。

ハロルド・ジョージ・メイさん:
消費者としてはありがたいことですが、色々な心配はあります。

夏の電気・ガス料金の支援で標準的な世帯では、5000円程度の負担軽減になるということですが、それで夏は乗り越えられたとしても、9月に入って一気に気温が落ち着くわけではありません。

また、冬になればガスをたくさん使用することとなります。どこか問題を先送りにしているようです。

5000円の負担軽減は、残念ながらそこまで軽減されているという実感は湧きにくく、長期的な目線では解決にはなりません。3か月という短い期間での支援に、どこまでインパクトがあるかどうかだと思います。

出水麻衣キャスター:
世界的に見ても、原油価格や電気、ガスの料金は値上がりしていて、各国の皆さんが頭を抱えている問題だと思います。

海外の事例ではどのように対処しているのでしょうか。

ハロルド・ジョージ・メイさん:
このような補助金での支援はあまり耳にしません。補助金を出すにしても、長期的な目線で考えます。

例えば、エアコンや給湯器を変えることが省エネにつながるので、その補助金を出すということはあります。そうすると10~15年というスパンでメリットも得られ、メーカーの利益にもなります。

そういった形での補助金は聞いたことがありますが、一人あたり、一世帯あたりという単位ではあまり聞いたことがありません。

与野党幹部からも見直しの声ある中 3兆円強の補正予算案も 

井上キャスター:
さらに、与党幹部からもガソリン補助について縮小や見直しを求める声も上がっています。

鈴木幹事長(25日)
「財政的に今の水準で行い続けるというのは、なかなか困難なところもあるのではないか。(継続する場合には)水準について見直しの必要が出てくるのではないか」

萩生田幹事長代行(18日)
「まったく見直しせずに、このまま延々と続けるというのもかなり無理がある

小林政調会長(21日)
「これからもずっと支援し続けていく、まったく見直さないというのは現実的ではない持続可能ではない

その一方で高市総理としては、原油や電気料金の価格が支持率に直結するという思いもあるわけですよね。

TBS報道局経済部 財務省担当 蓮井記者:
高市総理としては、実績として『2025年より家計負担を減らしたい』『物価高対策で後手に回っていると思われたくない』という思いがあるとみられ、この点は支持率に直結する部分でもあります。

さらに、来週(6月1日週)閣議決定される3兆円強の補正予算が組まれることになりました。

その内容は▼電気・ガス支援分の補填として5000億円、▼ガソリン補助費などの補填として2兆5000億円、合わせて3兆円強が新たな予備費として創設されます。

これにはデメリットもあります。

これ以上の財政出動を行えば、財政悪化の懸念から▼長期金利の上昇▼円安が進むことなどが考えられます。

補正予算案の3兆円は、赤字国債に頼ることとなります。

高市総理は、市場に出回るすべての赤字国債の総量を増やさないようにするという一定程度の抑制はしているわけですが、野放図な運営はできない状態にあります。

井上キャスター:
25日の会見でも、相当マーケットを意識した言葉がありました。
両睨みの政策は、これからも続いていきそうです。

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<プロフィール>
蓮井啓介
TBS報道局経済部 財務省担当
財政・税制などの経済政策を取材

ハロルド・ジョージ・メイさん
プロ経営者 1963年オランダ生まれ
現パナソニック顧問・アース製薬の社外取締役など

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