不足の声相次ぐシンナーや塗料 原因は「目詰まり」だけ?最新の統計から見る原料トルエン供給の減少 【報道特集】

現場で不足の声が相次いでいるシンナーや塗料、不足の原因は「目詰まり」だけなのでしょうか?
原料の1つ、ナフサ由来のトルエンに注目すると、新たに公表された統計データから生産量・販売量ともに減少していることがわかりました。
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必需品不足に先の見えない状況…「精神的に本当に良くない状態」
大阪・豊中市で自動車の修理などを手がける「BIC」。
この工場では、原油から精製されるナフサ由来の製品の入手が、不安定な状況が続いている。車体の塗装などに使うシンナーは一時入手困難となっていたが…。
BIC 細田宗範 代表
「今は大丈夫ですね」
塗装職人
「入ってくるのは、入ってきます。今はもうこの(大きい)サイズで入ってくる。ただ、いつ無くなるかわからない」
「車の血液」とも呼ばれるエンジンオイルも、底をつく前になんとか補充できた。だが今度は、車体の傷を埋めるパテなどの仕入れが、不安定になる恐れがあるという。
BIC 細田宗範 代表
「これもナフサ由来」
――知ってましたか?
BIC 細田宗範 代表
「今回のことで気付いた」
板金職人(68)
「みんなそう。どれもこれも。あれも、それもみたいな」
BIC 細田宗範 代表
「スポーツ選手が、自分の食べる食事をまったく気にせずに食べてたみたいなイメージ」
今、特に懸念しているのは粘着テープの不足だ。ナフサ由来の原料が使われている。
――本当だったらもうちょっとある?
BIC 細田宗範 代表
「あります、あります。(通常は)これの2~3倍ぐらいは在庫持ってます。必需品です」
車体を塗装する際、必要の無い部分まで塗らないようにするために多く使われている。
BIC 細田宗範 代表
「粘着がいい感じに弱いので、ベロッと剥がれるので作業性がいい。どこの板金屋さんも重宝している」
節約しながら使って、在庫は約2か月分だという。販売業者に問い合わせると。
BIC 細田宗範 代表
「テープが欲しいんですけど入りますか」
販売業者
「ほぼ入ってきてないんですよ」
BIC 細田宗範 代表
「いつぐらいに復旧しそうだっていうメドとか立ってないんですか」
販売業者
「そういう連絡はまだもらってないですね。粘着剤がもう全然ない」
テープなどの節約を優先するため、作業効率を落とさざるを得ないという。
BIC 細田宗範 代表
「たとえば、ドア1枚塗るにしても、車についている状態で塗装すると(テープを)すごく使うんですけど、塗る時にドアを外すと(テープで)養生する必要がなくなる。そのかわり、生産性は落ちます。脱着するのに時間がかかるので」
「それは数字に出てます。先月、入庫台数は(通常時と)同じですけど、捌ける(出庫)台数が3割減りました」
何かを入手できたと思えば、次は別の物が足りなくなる。先の見えない状況に細田さんは。
BIC 細田宗範 代表
「先を見通そうとしたり、予測をつけようとすればするほど現状と乖離している。政府の発表も乖離している。トランプ大統領が発信をして『そろそろか』と思ったらまた攻撃する。精神的に本当に良くない状態」
仕入れ先からの供給が半分と通告も... 粘着剤に欠かせない「トルエン」不足
70年以上のロングセラーとなっている輪ゴムで知られる「共和」。この会社では、セロハンテープやビニールテープなど、様々な粘着テープを製造し、その売上が全体の約6割を占めている。
粘着テープは、接着面などにナフサ由来の原料が使われている。
共和 生産部門 小畑大輔取締役
「ゴムを練る工程になります」
――あれはゴムなんですか?
「天然ゴムになります。ゴムを溶かすためにトルエンを使います」
粘着剤を作るためには、こうした天然ゴムや樹脂を溶かす必要がある。その溶剤の一つがナフサ由来の「トルエン」。天然ゴムなどを、トルエンで溶かしてできたドロドロとした液体が粘着剤となる。
――トルエンの供給が難しかった時期はあるんですか。
共和 生産部門 小畑大輔取締役
「3月の中旬ぐらい。調達している仕入れ先から(4~6月は)50%しか供給できませんと」
イラン攻撃の半月後、仕入れ先からトルエンを半分しか供給できないと通告された。
共和 生産部門 小畑大輔取締役
「これは非常にまずいと。正直どうしようかと社内で早急に検討しまして」
急遽、輸入しなければと動いたが、第一陣がようやく届いたのは5月20日だった。
共和 生産部門 小畑大輔取締役
「今回調達した中国のトルエン。まだ分析中、試作中で使えてないですけど」
中国産のトルエンの輸入は初めてで、品質が国産と同じかどうかを確かめる必要がある。検査には数週間かかる。
さらに、輸入にかかった費用は…
共和 生産部門 小畑大輔取締役
「コスト面は中東情勢の影響の前、2月と比較して(輸入品は)4倍。国産のトルエンも、ちょうど先週入ってきたんですけど、(価格は)2月と比べ2倍を超えています」
共和では医療用テープを作っているため、4月に国から働きかけがあり、結局トルエンは前年並みに調達できている。
5月20日に開かれた粘着テープメーカーを中心とする業界団体の定期総会でも、中東情勢の影響が色濃く見えた。
日本粘着テープ工業会 高橋健征 事務局長
「引き続き供給量は不安定な状況で、まだ解決には至っていない」
出席した企業からは、トルエンの供給不足に関する声が次々とあがった。
菊水テープ 西澤大輔 代表取締役
「この1か月半ぐらいで一番困ったのはトルエンです」
リンレイテープ 近畑陽平 取締役
「ゴムを溶かすのに溶媒でトルエンを使う。トルエンがないとまず粘着剤も入ってこない」
オカモト 半澤弘幸 粘着製品部長代理
「中東悪化の当初はトルエンとか、かなり入手困難、危機的な状況だった。今はあらゆる材料が、これがということではなくて、色んなものですね」
生産・販売ともに減 最新統計から見えるトルエン不足の実態
トルエンは粘着テープだけではなく、塗料やシンナーにも使われている。建設現場では4月からシンナー不足の声が上がっていた。
塗装職人 横山直樹さん(報道特集 4月11日放送)
「(シンナーは)問屋でない、建材屋行ってもないと言って、一日一日がゆとりがないんですよね。受けられないですよね仕事、その物がないと」
防水工事“一人親方” 工藤修司さん(報道特集 5月23日放送)
「最初に足りなくなり始めた代表格がシンナー。このシンナーがないと仕事にならない」
政府は、ナフサ由来の石油製品について、「日本全体として必要な量は確保できている」として、現場で製品が不足しているのは、「流通の過程で目詰まりが起きているため」などの説明を繰り返している。
高市総理(5月25日)
「年を越えて供給継続は可能であり、足りています。一方で、供給見通しの共有不足や実績以上の発注などで、現場では物資不足が発生しています」
さらに、トルエンの状況について。
高市総理
「ナフサを精製する一部の分解炉の定期修理が終わったということから、ナフサ輸入が増加したということから、トルエン、エチレンなど、川上製品の生産も4月半ば以降から再び増加しております」
こうした中、経済産業省が29日に公表した4月の統計をみると、トルエンは2025年に比べて生産量も販売量も減少していることがわかった。
トルエンの国内生産量は、▼2025年4月は約10万2800トンだったが、▼2026年4月は約5万9100トンと43%減少。さらに、2026年4月のトルエンの販売量は2万3200トンと、前の年の同じ月と比べると67%減少した。
輸入の増加と輸出の減少を加味して、番組で試算すると国内向けの販売量は前の年の同じ月に比べて約22%減少したことになる。
塗料やシンナー、粘着テープなどが現場で不足していた原因を考える上で重要な数字だと、物流専門誌「LOGISTICS TODAY」の赤澤裕介編集長は指摘する。
LOGISTICS TODAY 赤澤裕介編集長
「非常に重要な変化・動きだと思う。政府は『全体が足りてる』と言っているのに、『俺たちの手元にはないんだ』という状況が、サプライチェーンを見ていたら、はっきり見える。はっきり見えるけど、政府は言わない。頑なに言わない。供給量(販売量)が細らざるを得なくなっているとちゃんと言わなきゃだめ」
4月の統計で、トルエンは生産量・販売量とも減っていたことについて経産省に聞いたが…
経済産業省
「企業へのヒアリングでは、シンナーや塗料に使われるトルエンはきちんと出ているということが確認されています。個社のデータは出せないのですが、前年以上の量を出していると」
広がるナフサ製品の不足と価格高騰で、企業は対策に乗り出している。
イトーヨーカ堂は、総菜をプラスチック容器から袋でのばら売りに変更。ローソンは、店頭で販売するコーヒーの蓋について、紙製への切り替えを2026年度内に100店舗まで拡大するとしている。