フジテレビ“ドラマ制作過程”めぐる文書…“ハラスメント評価”をめぐり食い違う言い分、発端は“配慮”伝えず「ボタンの掛け違い」か【Nスタ解説】
フジテレビは7日、俳優の佐藤二朗さん、橋本愛さんが主演するドラマの制作過程をめぐる経緯について文書を公表し、2人に「負担と心労をおかけする事態」になったとして謝罪しました。
演技への影響を懸念し…橋本さん側の要請を佐藤さんに伝えず
井上貴博キャスター:
俳優の佐藤二朗さんと橋本愛さんとの間のハラスメント報道を巡って、7月7日、フジテレビは「ドラマ制作過程で何があったかの経緯をまとめた文書」を公表しました。結果的に、フジテレビは2人に対し謝罪をしています。
今回の件は誰が悪いとかではなく、ボタンの掛け違いがどこから起きていたのかになります。一体どのような経緯だったのでしょうか。なお、フジテレビが発表した文書を元にしたものになります。
ドラマへの出演に際し、橋本さん側から「過去の経験から演技での身体的接触には配慮や相談が必要」とフジテレビ側に伝えていました。フジテレビ側としても、それを認識したうえでオファーしています。
演技上の配慮について、フジテレビ側は佐藤さんに伝えていません。
文書の詳細によりますと、マネージャーは橋本さんの状況は理解したうえで、「佐藤さん自身のドラマへの意欲も高く、演技に影響しかねないため耳に入れない方がよい」と判断し、演技への影響を懸念し本人には伝えなかったということです。
その判断に対し、フジテレビ側も事務所側の意向を尊重したとのこと。
ここで1つ、ボタンの掛け違いが起きていたのかもしれません。
「事前にいうべきである」撮影を経て懸念抱き、“配慮”を佐藤さんに伝える
井上キャスター:
佐藤さんは「橋本さんへの必要な配慮」を把握しない状況で撮影が行われました。
3月22日、車内での撮影で、佐藤さんが台本にない「橋本さんの顔に触れる」場面がありました。のちに、「これがハラスメントだったのではないか」とSNSで尾ひれが付いて拡散しました。
しかし、この場面については、橋本さん側が「これがハラスメントという認識はありません」と明確に否定しています。
ここでポイントなのは、橋本さんとしては「身体的接触の際には配慮や相談が必要」と事前に伝えていたため、佐藤さん本人が知っていると思い、演技を続けていました。
しかし、それまでの撮影を通じて、佐藤さんの▼アドリブでの身体接触がある演技、▼他者との距離感が近い場面を感じたため、橋本さん側は「(佐藤さんは)配慮の件を知らないのではないか」という懸念を抱きます。
そこで、改めて橋本さん側は、「身体的接触に配慮や相談が必要なことを佐藤さん本人に伝えるよう要請」を、フジテレビ側に再び要望しました。
これを受けて、車内撮影の翌日に、フジテレビのプロデューサー側から佐藤さん本人に伝えられました。
初めて知った佐藤さんは「どの範囲の身体接触であれば問題がないのか。橋本さん本人に直接確認したい」と申し出ました。
そのため、間に入っているフジテレビ側は、事務所の関係者含めて協議の場を調整することにしました。
ただ、その協議の場が整う前に、佐藤さんが1人で橋本さんの楽屋を訪ね「演技に制限があるのであれば事前に言うべきである」旨の発言があったそうです。
ハラスメントとの見解 2週間後のやり取りで…
井上キャスター:
佐藤さんの楽屋訪問を受けて、その後、フジテレビは当事者2人と双方の関係者含めて協議の場を設けたそうです。
その協議の2週間後に、再び佐藤さんが「わだかまりを解消したい」との意向で、1人で橋本さんの楽屋を訪ねています。
この際に、佐藤さんは「一定の制約を設けるのであれば俳優の仕事を続けるべきではなく、夫婦役の出演の依頼があっても、これを受けるべきではない」という旨の発言があったということです。
橋本さんは突然の訪問に激しく動揺し、涙が止まらない状態になったそうです。
このようなやりとりから、フジテレビ(外部の弁護士)は「受忍限度を超える精神的負荷を与えるもの。ハラスメントと評価されるとの見解」を示しました。
以上がフジテレビ側が発表している、一連の経緯になります。
河西弁護士「当初から配慮事項を伝えるべきであった」
井上キャスター:
フジテレビが双方の間に入っている中で、橋本さんの意向を佐藤さん側に伝えていなかった点を、どのように感じていますか?
河西邦剛 弁護士:
最大のポイントとして、フジテレビの担当プロデューサーは当初から「橋本さんサイドの配慮事項を佐藤さんサイドに伝えるべきであった」と思います。
担当プロデューサーとしては、キス・ベッドシーンがないから大丈夫と思うのではなく、橋本さんにはどのようなリスクや懸念があるのかを具体的にヒヤリングし、台本を元に監督や脚本家と共に、リスクや懸念点の有無を検討する必要があったと思います。
ドラマの内容的に夫婦役ですので、身体的接触はやむを得ない部分があります。そこについて、フジテレビとして「佐藤さんに直接伝えるべきである」と判断するべきだったのではないでしょうか。
井上キャスター:
事務所とテレビ局のパワーバランスが分からないですが、フジテレビが双方の間に入って、佐藤さんに伝えるか否かの段階で、事務所や現場マネージャーから「伝えなくてもいい」と言われたら、フジテレビ側は強く言えないということも考えられるのではないでしょうか。その上でも言うべきだったのでしょうか?
河西邦剛 弁護士:
そういった事は恐らくあったのではないでしょうか。当時、佐藤さんは賞を受賞した直後で人気絶頂期でした。さらに、佐藤さんは職業信念が強い方です。
フジテレビ側は、制約があるならば自分は継続できないとなり「降板します」となる可能性を懸念して言わなかったとなると、それはフジテレビ側も事務所・マネージャー側のどちらも問題になってくると思います。
井上キャスター:
では、佐藤さんサイドとして、出来ることは何があったのでしょうか?
河西邦剛 弁護士:
今回、佐藤さんにきちんと伝えていれば、トラブルにはなっていなかったわけですから、演技に制約がつくのが嫌と言われたとしても、きちんと言うべきだったとは思いますね。
出水麻衣キャスター:
フジテレビとしても、事前に文書などで制約するといった取り組みをした方が良かったのでしょうか?
河西邦剛 弁護士:
そうした方が良かったとは思いますが、一方でドラマの難しさもあります。五月雨式に物事が決まっていくのがドラマの特徴です。原作者が決まっていき、脚本ができていき、主役が決まっていき、さらに他の俳優さんが決まっていく。
それぞれから条件を出される中で、途中で条件のすり合わせがうまくできなくなる可能性もあります。それがドラマ特有の難しさで、過去にも同じようなトラブルがあったりします。
佐藤さんの事務所はハラスメントを否定
井上キャスター:
今回問題をよりこじらせているのは、「(週刊誌の)報道により公」になったことではないでしょうか。
フジテレビ側が仲介に努める中、佐藤さん側が橋本さん側へ謝罪したいとの意向を示しています。その話し合いを進めている中、最終的な合意に至らない中で(週刊誌の)報道により公になりました。
五月雨式に情報が出てくることで、情報に尾ひれはひれが付き、様々な誹謗中傷に繋がっています。
また、フジテレビ側がハラスメントと評価している佐藤さんの言動について、佐藤さんの事務所は否定しています。
7月2日、佐藤さんの事務所によりますと「(週刊誌の)記事で示されているようなハラスメントに該当する事実は確認されておらず、そのような評価は適切ではないと考えております」
「専門家からも佐藤の言動がハラスメントにあたるものではないと確認を得ています」
河西邦剛 弁護士:
フジテレビの発表する文書の文言のままであるならば、橋本さんの職業信念を否定するような文言になっていますので、ハラスメントと認定を受けざるを得ないかと思います。
一方で、佐藤さんの事務所発表はハラスメントに当たらないと専門家の見解を示しています。事務所側としては、相手方である橋本さんからヒアリングをしているわけではなく、佐藤さんだけからヒアリングをしている状態である可能性が高いです。
そのため、佐藤さんの事務所の発表については、やや判断の正確さに疑問が残ってくるところにはなりますね。
タレント・プロゴルファー 東尾理子さん:
事実は1つですが、事実の見え方は人によって全然違います。例えば、10分の1しか入っていない飲み物があるとすると、最後の一口を残そうと思う人、もう片付けてほしいと思う人など、色々変わってきます。それゆえに、その辺のすり合わせをどうするのが1番いいのかだと思います。
河西邦剛 弁護士:
まさに今、フジテレビは過去のコンプライアンス問題がある中で、色々と改善がなされています。その中で、諸々条件を事前にすり合わせをしておけばトラブルが起きにくいことは分かっている。
しかし他方で、ドラマという、ある種作品を作っていく中でどうしても条件のすり合わせが難しい部分がある。ここをいかに調和させていくのか。今後の課題になってくるかとは思います。
フジテレビの今後の対応は?
井上キャスター:
7月3日、橋本さんの事務所側は「フジテレビ社より、弁護士による当事者・関係者ヒアリングを経て、経緯および認定された事実等の報告を受けており、フジテレビ社による報道が事実との認識です」としています。
7月7日、佐藤さんはSNSで「フジテレビは、なぜそこまで片方だけに寄り添うんでしょうか、残念です。僕は心からもうフジとは関わりたくないです」と投稿しています。
事務所の見解もあれば、個人の発表もある。このあたりはどのように受け止めればいいのでしょうか?
河西邦剛 弁護士:
佐藤さんの方は、先週のフジテレビの発表のタイミングでは厳重注意という形になっていました。そのうえで、7日の発表においてはハラスメントという認定を受けている。
自身について不利益な発表がなされている中でのフジテレビの発表は、佐藤さん自身は「自分が聞かされていない問題について、その責任の所在について具体的な言及がない」となっている。そこの責任はどうなってるのか、自分ばかり不公平ではないかという印象を持っているのかなといった印象を持ちました。
井上貴博キャスター:
最終的に、フジテレビとしてどのようにしていくのか。
7日、文書の中で、「本件に関する報道を契機として、関係者に対する誹謗中傷や憶測・事実誤認に基づく情報発信が広がっている状況について、深く憂慮しております」
「主演を務めたお二人の俳優に対して、多大なるご負担とご心労をお掛けする事態となっていることについては、深くお詫び申し上げます」としています。
河西邦剛 弁護士:
フジテレビの発表は、SNS投稿による二次被害についてお詫びをしていることになります。自社の対応に問題があったかについて、何か謝っているわけではない部分が特徴かと思います。
今回のフジテレビの問題は、週刊誌報道が先行しました。自社から先に発表したわけではありません。ただ今回の件は、ハラスメントとプライバシーを保護する必要性が高かったため、自社から発表できなかったことについては致し方ない部分があるかなと思います。
井上キャスター:
これだけ双方の言い分が食い違っています。第三者委員会など外部の調査などをしていくこともあり得ますか?
河西邦剛 弁護士:
あり得るとは思いますが、第三者委員会というのは企業の不祥事を対象とするものです。しかし、フジテレビ側は今のところ自社の不祥事ではないという前提になっているので、理論的には第三者委員会に繋がってこないです。とはいえ、外部の再調査が求められる可能性は出てくるかと思いますね。
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<プロフィール>
河西邦剛さん
レイ法律事務所パートナー弁護士
芸能・エンターテインメント分野の法律問題が専門
東尾理子さん
タレント・プロゴルファー
フロリダ大学卒業 3児の母
不妊治療の経験を積極的に発信