プーチン現政権の“弱さ” 若者たちは「平和を望んでいる」 ロシア唯一の反戦野党「ヤブロコ」代表が語る比例排除の実態 「リンゴ」投稿が反戦の象徴に【報道1930】①

ロシアで18日から議会下院選挙が始まった。選挙結果はプーチン大統領率いる与党「統一ロシア」の勝利が確実視されているものの、ウクライナ侵攻に反対し続ける唯一の反戦野党「ヤブロコ」(ロシア語で「リンゴ」)の存在が注目されている。
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「BS-TBS報道1930」では、選挙に先立ち「ヤブロコ」のニコライ・ルイバコフ代表を単独インタビュー。比例代表から除外されるなど政権側による圧力の実態や泥沼化する侵攻がロシア社会と世界に与える影響などについて聞いた。
(インタビューは1か月前、8月18日に実施)
「ロシアで唯一平和を訴えている政党」ヤブロコとは
ーー最高裁で比例代表の候補者登録の取消が決定されたが、どう受け止めていますか。
ルイバコフ氏:
私たちは、この決定を自分たちの生活の一部、仕事の一部として受け止めています。なぜこのようなことが起きたのかは極めて明白です。
なぜなら「ヤブロコ」はロシアで唯一、平和を訴えている政党だからです。
投票用紙には11の政党が載ることになっていました。そのうち、平和と自由を訴える政党は一つだけで、残る10の政党は異なる理念、価値観、信条を掲げています。だからこそ、投票用紙には同じような政党だけを残すという決定が下されたのです。
私達にとって非常に重要なのは、これによってロシア国内の何百万人もの人々が、平和と自由を求める人が大勢いるということを目の当たりにできたということです。そして、それについて公然と、堂々と発言する覚悟のある人も大勢いるということです。
それはロシア国内だけでなく、世界中の人々にも伝わりました。今や世界の誰も、ロシアで全ての人が今起きていることに賛同しているとは言えないでしょう。
「平和を望んでいる」いまロシアで起きている“爆発”
ーー裁判所の外には多くの若い支持者が集まり声をあげていましたが、若者の間でヤブロコへの支持や「平和と自由」を求める声が高まっている手応えを感じていますか。
ルイバコフ氏:
もちろん、(ウクライナ侵攻開始の)2022年2月24日以降、ずっとそのことを目にしてきました。今それが誰の目にも明らかになりました。今では、街中でもインターネット上でも、それがはっきり見て取れます。
そうした空気はモスクワだけでなく、ロシア全体で感じられます。小さな町や村に住む多くの人々からも、メッセージが寄せられているからです。
もちろん、まず若者ですね。年配の方々からも時折「私たちのことも忘れないでください。私たちも平和を望んでいます。私たちも声をあげたいのです」といったメッセージが寄せられています。
今、爆発が起きています。ここでは爆発という言葉をポジティブな意味で使っています。若者たちが「私たちは平和を望んでいる。ロシアで暮らしたい。平和な空の下で暮らしたい。明日のことを恐れながら生きたくない」と声をあげているのです。
そして「ヤブロコ」も同じことを訴えています。今、2000年代に育ち、21世紀に生まれ育った若者たちがこれに気づきました。そういえば、33年間ずっと同じことを訴え続けてきた政党があるではないかと気づいたのです。「ヤブロコ」はロシアで平和を掲げる政党として結成され、それ以来ずっと、その立場を貫いてきたからです。
「平和でありますように」で排除されるのは…政権の“弱さ”
ーー裁判所の決定は、現政権の「焦り」の表れとして見ることはできますか?
ルイバコフ氏:
現政権の「弱さ」の表れです。公正な競争を恐れ、人々との対話を恐れ、国民が選挙で平和と自由を支持し、核戦争の脅威に反対し、恐怖のない生活を求めて公正に一票を投じる機会を与えることさえ恐れています。
そして、33年の歴史を持つ政党に対して唯一持ち出せたのが、その資料の中で「平和でありますように」という言葉を使ったということだけです。
それを理由に選挙から排除する。これは「弱さ」としか言いようがありません。 それは政権にとって、国家にとって、非常に危険な弱さです。なぜなら平和的で、文明的、かつ合法的な攻撃や暴力に頼らない政治や議論を恐れるようになれば、その代わりに全く異なる風潮や行動が出てくるからです。
私たちと闘っているのは、いつでも国家を裏切る用意のある勢力です。「ヤブロコ」はリベラルな民主政党ですが、真に愛国的な政党であり、国家の発展を目指しています。一方、私たちと対立している人々は、自分たちの利己的な利益のためなら国家を踏みにじることもいとわない。そこが、私たちと対立する人々との違いです。
『リンゴ』の写真をネットに投稿すれば、平和を求めていることが伝わる
ーー「ヤブロコ」は今後どのように国民の声を政治の世界に届けていきますか。
ルイバコフ氏:
3つの方向で取り組んでいます。
まず一つ目は、この決定について引き続き上訴していくということです。ロシアには最高裁判所、憲法裁判所もあります。私たちは「ヤブロコ」の選挙への参加を認めさせるためには、投票日まで、この問題が審理されるべきだと考えています。
二つ目は選挙キャンペーンを引き続き行っていくことです。「ヤブロコ」から小選挙区に立候補している候補者は130人います。ロシアの国家院(下院)は、半数が政党別の比例代表で、残る半数が小選挙区の候補者によって構成されるからです。私たちは地方議会選挙にも参加しています。そのため現在も大規模な選挙キャンペーンを続けています。9月には、ロシアのおよそ9000万人が「ヤブロコ」の候補者に投票することができます。
そして三つ目は私たちが「平和と自由」を求める選挙キャンペーンを続けていることです。インターネット上でも支持者たちとともにキャンペーンを続けています。彼らは投稿したり、コメントしたり、自分たちで様々な動画を撮影したりしています。 私達「ヤブロコ」という政党も、政治家である私自身も、今始まっているこの大きな運動の一部にすぎません。
そしてロシアでは「リンゴ」がこの運動の象徴となっています(ロシア語で「ヤブロコ」=リンゴ)。何か不思議な力が働いたかのようですが、人々は平和を訴える政党があることに気づきました。今では、ロシアのインターネットやSNSで、リンゴの写真を一枚投稿するだけで、その人が平和を求め、「ヤブロコ」を支持していることがすぐに分かります。
しかも自分のSNSで自主的に発信している個人だけでなく、多くの企業もこうした投稿をしています。ここ数日は、アパレルブランドも、リンゴを持ったモデルの広告を出しています。街では、人々がお互いにリンゴをプレゼントしています。つまり、これは人々が自発的に始め、自ら進めている運動なのです。
「普通に、平和的に、合法的に政治活動ができる時が来る」
ーー多くの人が拘束されているようですが、どのように対応していますか。
ルイバコフ氏:
最高裁判所の決定や審理そのものについて「悲しい結果だった」とか「喜ばしい結果だった」とは言えません。これは私たちの生活の一部です。もちろん決して楽しいものでも励みになるものでもありませんが、こういう仕事なのです。
しかし、これほど多くの人々が私達を支持していること、ロシアの何百万人もの人々が私たちと同じことを望んでいるのを見ると、それは大きな励みと支えになります。
今回のインタビューの直前にちょうど会議を開いていました。拘束されたひとりひとりを支援し、守るために、全員に弁護士をつけるよう対応しています。拘束された人の大多数は、すぐに解放されました。ただ数人は、より深刻な弾圧を受けています。
ですから私たちは、一人ひとりが守られるよう努めています。そして支持者の皆さんには、いかなる挑発にも乗らず、どのような形であれ法律に違反しないよう最大限呼びかけています。何よりも大切なのは彼らの命であり、自由であり、安全であり、そして未来だからです。 なぜなら、そう遠くないうちに、禁止や攻撃を恐れることなく、普通に、平和的に、合法的に政治活動ができる時が来るからです。
その時を心身ともに良好な状態で迎え、自由の身で健康でいることが大切です。だからこそ、私たちはすべての支持者に自分自身の安全を第一に考えるようお願いしています。
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プーチン政権側による圧力の実態や泥沼化する侵攻がロシア社会と世界に与える影響などについて、「ヤブロコ」のニコライ・ルイバコフ代表に聞いた単独インタビューの連載記事を配信中です。全4部で、本記事は第1部です。(1部、2部、3部、4部)