ロシアへの攻撃は「政権をより残酷にするだけ」“核による人類破滅の道”と警鐘を鳴らすロシア唯一の反戦野党「ヤブロコ」代表【報道1930】③

ロシアで18日から議会下院選挙が始まった。選挙結果はプーチン大統領率いる与党「統一ロシア」の勝利が確実視されているものの、ウクライナ侵攻に反対し続ける唯一の反戦野党「ヤブロコ」(ロシア語で「リンゴ」)の存在が注目されている。
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「BS-TBS報道1930」では、選挙に先立ち「ヤブロコ」のニコライ・ルイバコフ代表を単独インタビュー。比例代表から除外されるなど政権側による圧力の実態や泥沼化する侵攻がロシア社会と世界に与える影響などについて聞いた。
(インタビューは1か月前、8月18日に実施)
※全4部の3本目(1部、2部、3部、4部)
「人の命が何の価値も持たず、重みを失ってしまっている」
ーー現状のロシア、プーチン政権に対して特に危惧していることは何でしょうか。
ルイバコフ氏:
私はそもそも、ロシアをヨーロッパのほかの国々と切り離して考えていません。私たち全員にとって最も破滅的なのは、人の命がほとんど何の価値も持たず、重みを失ってしまっていることです。それは全ての人に当てはまります。
なぜなら政治家たちは事態を破局にまで追い込みながら、それを止めることも交渉のテーブルにつくこともできずにいるからです。
二度の世界大戦と広島と長崎の原爆を経験した20世紀を経た現代においてなお、武力による威嚇や軍事行動で問題を解決できると考えています。だとすれば、彼らは何も理解していないし、過去から何も学んでいないということです。
論拠や理念、言葉ではなく、墓地に増え続ける墓の数によって相手を説得しようとしている。これは、もはや「危惧」という言葉では言い表せません。恐ろしいことであり、悲劇であり、惨事です。これは今、ロシアとウクライナの紛争をめぐって様々な決定を下している世界の多くの国々にも、同じように当てはまります。
プーチン大統領の支持率低下 背景には何が?
ーー最新の世論調査でプーチン大統領の支持率が低下し、ウクライナへの「軍事作戦」をネガティブにとらえる人が多くなっています。なぜでしょうか?
ルイバコフ氏:
プーチン大統領とその政策に対する実際の支持率がどれくらいなのか、私は分かりません。それを正確に把握することは不可能です。私に分かるのは、実際に起きている様々な動きだけです。
今、国内で起きていることについては、人々の日常生活という観点からも様々な側面を挙げることができます。
SNSやメッセンジャーでのコミュニケーションの制限、燃料供給の問題、そしてロシア国内の施設への攻撃などです。
しかし、こうしたことは全て、人の命が失われることに比べれば、比べものにならないほど重要性の低い問題です。
こうした社会・経済面での出来事によって、現在の政策に対する私の考えが変わることはありません。私はこれまでずっと「いま起きていること」に反対してきましたが、こうした出来事によって考えを変える人もいるのかもしれません。
私にとっては、たった一人でも命が失われれば、それだけで今起きていることを受け入れることはできません。ただ、人によっては違うのかもしれません。
こうしたことがプーチン大統領の支持率に何らかの影響を与えている可能性はあります。
攻撃は「より強硬にし、より残酷に、より攻撃的にするだけ」
ーー 一般のロシア国民はどのような不安を抱いていますか、国民生活への影響は?
ルイバコフ氏:
人々は将来に不安を抱いています。10年後、15年後、20年後のことではなく、明日、何が起きるのかさえ分からないからです。明日どうなるのか、政権がどのような決定を下すのか誰にも分かりません。
そこで、先ほどのご質問とも関連しますが、この機会に、これを読んだり見たりするすべての方にお伝えしたいことがあります。そして、その中に政策決定に関わる人たちもいることを願っています。
非常に危険な考え方があります。それは、ロシアへの攻撃、ロシア領内の奥深くへの攻撃、インフラへの攻撃、そしてそれに伴うロシア国内での人命の損失によって、プーチン大統領やロシア政権を交渉のテーブルにつかせ、より譲歩させることができるという考えです。
しかし、こうした考えはクレムリン内部で起きていることや、ロシアでどのように意思決定が行われているのかを根本的に理解していないことから生まれています。
現在行われている攻撃はロシア政権をより強硬にし、より残酷に、より攻撃的にするだけで、交渉をさらに遠ざけています。ですから、こうした出来事や行動が増えれば増えるほど影響はより深刻になり、交渉の席につき、交渉を始めることはますます難しくなります。
前線で命を落とし、傷つく人たち
しかし、これはどうしても必要です。私達は今回の選挙でも訴えていますし、毎日、停戦合意を結ぶ必要性を訴えています。 本当にあらゆる人から批判されました。
プーチン大統領の支持者からも、反対する人たちからもです。
「停戦合意を結べば、プーチン大統領はその間に準備を整え、動員を行い、新たな兵器を製造し、その後はさらに状況が悪化する」
「プーチン大統領に対抗する側も準備を進め、ウクライナ向けにさらに多くの兵器が製造され、動員も行われ、さらに状況が悪化する」
と言われました。
様々なシナリオを机上で考え出している人たちは暖かいモスクワや、ほかの国の首都の執務室でそれをしているのです。一方、前線で命を落とし、傷ついているのは全く別の人たちです。
残された“二つの道” 核による人類破滅の道も
ルイバコフ氏:
だから考えてほしいのです、一日一日と、平和にたどり着くことがますます難しくなっているということを。
私たちには、大きく二つの道しかありません。
一つは、平和にたどり着き正常な関係に戻ること。
互いに殺し合うのをやめ交渉のテーブルについて、安全保障、領土の一体性、言語、地雷除去、経済復興、被害を受けた人々の社会復帰、亡くなった人々の家族への支援といった問題について話し合えばいいのです。
これは非常に複雑な問題であり、長い時間をかけて話し合う必要があるでしょう。しかしその間は互いに殺し合うのをやめ、新たな人々を傷つけるのをやめてほしいのです。
もう一つの道は交渉と平和を選ばず、核による破滅へと向かうことです。
そうなれば人類は終わりを迎えます。政治家たちの先見性の無さによりそのような事態になれば、影響を受けるのはロシアとウクライナだけではありません。地球上の全ての人々です。
それは止めることのできない連鎖反応となり、核兵器の性質上、世界全体を巻き込むことになります。 ごく短期間のうちに人類文明は滅びることになるでしょう。そうなれば誰が始めたのか、誰が正しく、誰に責任があったのか、誰がどのボタンを押したのか、国境線がどこにあったのか、誰が誰に何を証明しようとしていたのか…。そんなことについて議論する人は、誰もいなくなるのです。
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プーチン政権側による圧力の実態や泥沼化する侵攻がロシア社会と世界に与える影響などについて、「ヤブロコ」のニコライ・ルイバコフ代表に聞いた単独インタビューの連載記事を配信中です。全4部で、本記事は第3部です。(1部、2部、3部、4部)