ロシア唯一の反戦野党に弾圧下でも連日500件入党…「ヤブロコ」代表が語る平和の「直接的利益」と「日本への親近感」【報道1930】弾圧下でも連日500件入党…ロシア唯一の反戦野党「ヤブロコ」代表が語る平和の「直接的利益」と「日本への親近感」【報道1930】④

ロシアで18日から議会下院選挙が始まった。選挙結果はプーチン大統領率いる与党「統一ロシア」の勝利が確実視されているものの、ウクライナ侵攻に反対し続ける唯一の反戦野党「ヤブロコ」(ロシア語で「リンゴ」)の存在が注目されている。
「BS-TBS報道1930」では、選挙に先立ち「ヤブロコ」のニコライ・ルイバコフ代表を単独インタビュー。比例代表から除外されるなど政権側による圧力の実態や泥沼化する侵攻がロシア社会と世界に与える影響などについて聞いた。
(インタビューは1か月前、8月18日に実施)
※全4部の4本目(1部、2部、3部、4部)
「いま世界全体がポピュリズムや攻撃性、憎悪の方向へと向かっている」
ーーロシアが民主的な国際社会の一員として復帰するため、どのようなプロセスが必要ですか?
ルイバコフ氏:
こうしたプロセスは、ロシアだけでなく、世界全体で進めていく必要があります。今、世界全体がポピュリズムや攻撃性、憎悪の方向へと向かっているからです。
もちろんアメリカとメキシコの間で、ロシアとウクライナの間で起きているようなことが起きているわけではありません。しかし、すべてが順調というわけでもありません。ヨーロッパでもナショナリズムやポピュリズム、外国人嫌悪が高まっており決して簡単な状況ではありません。
メディアを通じて、世界の政治家、とりわけヨーロッパの政治家たちに、注意を喚起したいことがあります。紛争が長引けば長引くほど破壊が広がり、犠牲者が増えれば増えるほど、その後の復興は心理的にも、組織的にも、財政的にも、より困難になります。莫大な資金が必要になり、もちろん西側諸国も負担することになります。
そうした負担が増えれば増えるほど、経済や社会保障に使われる資金が削られることになります。その国の人々はポピュリストやナショナリスト、「闇の勢力」による扇動や圧力に、ますますさらされることになります。
平和の実現は全ての国にとって「直接的な利益」
彼らはこう言うでしょう。「見てください。私たちの学校や病院、そして経済に使えるお金がどんどん減っている。ウクライナを支援しているからだ」と。 そうした状況の中では、「闇の勢力」が最も権力を握るようになります。
だからこそ、一刻も早く平和を実現することは今やロシアとウクライナだけでなく、すべての国々にとって直接的な利益なのです。
だからこそ、このことについて考えてほしいと呼びかけています。ロシアだけで何らかの取り組みを行い、世界全体を救うことはできません。
一方で、ロシアについて私たちには具体的な行動計画があります。弾圧的な法律を廃止し、政治犯を釈放すること。独立した司法制度とメディアを確立すること。そしてロシア議会を、法律について実質的な議論を行い決定を下す場に戻すことです。
私達には非常に大きなプログラムがあります。しかし、それを実現するための条件はただ一つです。
それは、人々が互いに殺し合うことをやめることです。人々が命を落とし続けている限り、こうしたことは実現できませんし、何の意味もありません。
日本とロシアの関係は? 「再び、正常な善隣関係を築くことができる」
ーー日ロ関係についても質問します。ロシアが「東方シフト」を強める中、 日本やアジア諸国との関係はどうあるべきだとお考えですか?
ルイバコフ氏:
ロシアはどの国とも、相互尊重に基づく正常な関係を築くべきだと思います。もちろん日本とも善隣関係を築き、文化・学術交流や経済関係を発展させていくべきです。
確かに、ロシアと日本の関係は決して簡単なものではありません。しかし、これまで両国の間にどれほど多くの良い出来事や良い時期があったか、思い出してみてください。 政治情勢が変われば、人々の関係は非常に友好的で、素晴らしいものになると確信しています。
私自身は自宅で毎日、日本のことを思い出しています。壁に、朝日と空を飛ぶ鶴が描かれたTシャツを飾っているからです。
私はサンクトペテルブルクの出身ですが、日本で地震が起き、その影響でフィギュアスケート選手権が東京からサンクトペテルブルクに移された時、大きなスタジアムでこのTシャツを着ました。日本と日本の人々への連帯を示すため、会場にいた人たちも同じTシャツを着ました。
人々は互いに愛し、尊重し合い、平和に暮らし、明日のことを恐れずに生きたいと願っているからです。私達にはそのための可能性もチャンスも十分にあります。
ロシアには、日本文化に深い敬意を持ち、日本文化を学んでいる人が大勢います。私のオフィスには日本の自然が描かれた2026年のカレンダーが掛かっています。
私たちの党にはアレクサンドル・グネズディロフという演出家がいて、日本文化を研究しています。彼は日本の作家の作品をもとにした舞台を定期的に上演しており、私たちの党の事務所でも公演を行っています。
ですから、私たちは次のことを理解しなければなりません。
今、政治家たちは人々が平和や善意、安心、そして相互理解を感じられる雰囲気をつくるという役割を果たせなかったのです。だからといって私たち市民まで何もしなくていいということではありません。
そして将来、もちろん私たちは再び、正常な善隣関係を築くことができるでしょう。
「圧倒的多数の人々が、善意と平和、そして相互理解を望んでいる」
ーー冷え込んでいる日本とロシアの関係を改善させるための糸口は?
ルイバコフ氏:
日本とロシアの若者たち、そして中高年の人たちがこの対話を見たら、どう思うでしょう。
「私たちはどうして、お互いをこんなふうに必ずしも好意的ではない目で見ているんだろう」と考えるかもしれません。
私達自身が普通に向き合い、誰かが関係改善の糸口を作ってくれるのを待つのはやめましょう。糸口は、一人一人が自分自身の中に作るものです。この対話を見てくださる人たちにとって、今日がその糸口となることを願っています。
ーー日本や国際社会に対して、今一番伝えたいメッセージは?
ルイバコフ氏:
ロシアには、ほかの国々と平和に暮らしたいと願っている人が何百万人、何千万人もいるということです。圧倒的多数の人々が、善意と平和、そして相互理解を望んでいます。そして私たちは、ほかの国々の人々にも、まったく同じことを願い、同じ方向を目指してほしいと思っています。
私たちが皆で一緒にそれを目指せば、必ず実現できるはずです。たとえ、政権で意思決定を行う政治家たちがそれに反対したとしてもです。そして、私たちは共に勝つことができるのです。
インタビューの最後にルイバコフ代表が語ったこと
ルイバコフ氏:
モスクワだけでも連日およそ500件の入党申し込みが寄せられています。選挙キャンペーン開始時点で支持者として登録されていた支持者は約110万人でした。現在も急速に増えています。これが政権が私たちに対してこのような反応を示している理由なのです。
だからといって、これから私たちが活動をやめるつもりはありません。ですから今、私たちのもとに来てくれた全ての人たちに単に希望を与えるだけではなく、その希望を選挙キャンペーンが終わった後も持ち続けてもらえるよう、努力していきたいと思います。
残念ながら、私自身はこれまで一度も日本に行ったことがありません。以前、副代表を務めていたアレクサンドル・グネズディロフは日本を研究していて、日本の大学のロシア語学科の人たちとも交流しています。毎年日本を訪れ、その度にカレンダーを持ち帰ってきます。私は毎年、そのカレンダーを掛けています。証拠としてお見せしてもいいですか?
日本にぜひ行ってみたいです。ロシアでは、モスクワでも日本文化をはじめ、日本に対する関心が非常に高いのです。
私はこの春、植物園に行ったのですが、日本庭園にできている行列を見て驚きました。エルミタージュ美術館の行列より長いくらいでした。それくらい、みんな日本に強い関心を持っているのです。
---------
プーチン政権側による圧力の実態や泥沼化する侵攻がロシア社会と世界に与える影響などについて、「ヤブロコ」のニコライ・ルイバコフ代表に聞いた単独インタビューの連載記事を配信中です。全4部で、本記事は第4部です。(1部、2部、3部、4部)