副代表は実刑と“スパイ”指定…ロシア唯一の反戦野党「ヤブロコ」代表が明かす弾圧の実情と“破滅から救うため”国内に残る決意【報道1930】②

ロシアで18日から議会下院選挙が始まった。選挙結果はプーチン大統領率いる与党「統一ロシア」の勝利が確実視されているものの、ウクライナ侵攻に反対し続ける唯一の反戦野党「ヤブロコ」(ロシア語で「リンゴ」)の存在が注目されている。
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「BS-TBS報道1930」では、選挙に先立ち「ヤブロコ」のニコライ・ルイバコフ代表を単独インタビュー。比例代表から除外されるなど政権側による圧力の実態や泥沼化する侵攻がロシア社会と世界に与える影響などについて聞いた。
(インタビューは1か月前、8月18日に実施)
副代表5人のうち2人は「実刑」3人は「スパイ」指定 過去には6人が殺害
ーー『即時停戦』や『対話による平和』を訴えることは非常に高いリスクを伴うと思います。実際に弾圧を受けていますか。
ルイバコフ氏:
私は党の代表を務めていますが、5人の副代表がいます。そのうち2人は、平和を求める政治的立場を理由に7年と11年という極めて重い刑を言い渡されています。
3人は「外国の代理人」(=スパイ)に指定されています。この極めて厳しく不当な指定によって、日常生活や通常の仕事に大きな支障が生じています。そのほかの人々も迫害を受けています。 私たちの党では、平和を求める立場を理由に40人以上が罰金を科されています。また30年以上にわたる党の歴史の中で、自らの立場や「ヤブロコ」での活動を理由に6人が殺害されています。
こうしたことは、すでに1990年代から始まっていました。 もちろん、私たちはこれを実感しています。ここ数日だけでも、警察がモスクワで「ヤブロコ」から選挙に立候補しているすべての候補者や、私たちの支持者の自宅を訪れています。
さらに監視カメラの映像をもとに、1週間前に最高裁判所の審理に来ていた人や、最高裁判所の建物の前にいた人たちが、顔から身元を特定されました。そうした人たち全員の自宅に複数の警察官が訪れ、今後このような集まりに参加しないよう求めたのです。これは威嚇としか言いようがありません。 許されないことであり、憤りを感じます。
私は内務大臣に書面を送り、法執行機関を政治的な目的に利用することは容認できないという考えを伝えました。それでも私たちは、できる限りのことをして人々を守るため、あらゆる取り組みを続けています。
しかし現在、公的機関や法執行機関で決定を下しているのは私達ではないということも理解しています。私たちが皆さんの安全を保証することは、もちろんできません。そのことについても、すべての人に率直に伝えています。
「ロシアで政治活動をすることは、本当に危険」
ーールイバコフ代表自身は、安全について不安を感じませんか?
ルイバコフ氏:
私はごく普通の人間ですし、物事をきちんと判断できる人間だと思っています。私はロシアで仕事をしています。私の党では仲間たちが真実を語ったこと、発言したこと、自らの立場を示したことを理由に殺害されてきました。
ロシアで政治活動をすることは、本当に危険です。 そもそも世界のどこであっても、政治に携わることには危険が伴います。何が起きてもおかしくないのです。しかし、だからといって私達が政治活動をやめるということではありません。
私たちは何のためにこの活動をしているのか、よくわかっています。人々が大勢で互いに殺し合うことをやめ、憎しみ合うことをやめ、攻撃的になることをやめ、ロシアの人々が恐怖のない生活を送れるようにするためです。そして、ロシアの人々が恐怖のない生活を送れるようになれば、世界もより平穏になるでしょう。
私は、現在世界で起きている多くの危機、世界政治の危機、そしてナショナリズム、ポピュリズム、外国人排斥の高まりは、その多くが、ロシアで民主国家を築くことができなかったことに原因があると確信しています。
ロシアでは1990年代、プーチン大統領の時代ではなくエリツィン大統領の時代に、非常に誤った改革が行われました。その改革が、ロシアを現在の状況へと導いたのです。 これから、ロシアだけでなく世界全体を憎しみと攻撃性の危機から抜け出させるため、私たちは懸命に取り組みを続けていかなければなりません。
核による破滅の瀬戸際から遠ざけなければならないのはロシアだけではなく、世界全体です。こうした中で、自分自身の恐怖や不安、心配について語ることなど、私にはできません。
「私たちの価値観や信念を消し去ることは、誰にもできない」
ーー党員や支持者の安全を守りながら信念を訴え続けるため、どのように注意していますか。
ルイバコフ氏:
これは非常に重要な問題で、私たちも、私たちの仲間も非常に頭を悩ませています。
いくつか重要な点があります。まず、ロシアでは政権や私達と対立する人々は、私達がどういう人間なのかをよく知っています。私達は平和を訴えています。私達は国を大切にしています。
議会や政府のポストと引き換えに、自らの価値観や信念を変えることはありません。
「ヤブロコ」は常にそういう政党でした。最初から特定の人々の出世のためではなく、価値観と信念に基づく政党として結成されたのです。彼らは、私達がこれからも変わらないことを知っています。
もちろん「ヤブロコ」の政治家一人一人を弾圧し、排除し、屈辱を与え、刑務所に入れることはできるでしょう。これは明らかですし、実際に目にしています。 しかし、ロシアにおける一つのイデオロギーとしての「ヤブロコ」、数千人からなる組織化されたコミュニティーと、それを支持する何百万人もの人々からなる存在としての「ヤブロコ」に対しては何もできません。
そこには非常に多くの人々がいます。その根底にあるのは、人の命より大切なものはないという思想です。世界のほかの国々と、平和で友好的な関係を築くべきだという思想です。
ロシアの人々が普通に暮らし、明日のことや、自分の子どもたちがどうなるのかを恐れずに生きられるようにすべきだという思想です。ロシアには、そう考える人が何百万人もいます。
こうした信念を誰も消し去ることはできませんでした。こうした考えはロシアに常に存在してきましたし、これからも存在し続けます。 ですから、もう一度言います。私も仲間たちも、一人ひとりが弾圧を受ける可能性があることは分かっています。しかし、私たちの価値観や信念を消し去ることは、誰にもできないのです。
「ロシアを救うためには、国内に残るしかない」
ーー国外へ逃れて活動する勢力も多い中、国内に残って政治活動を続けることの意義は?
ルイバコフ氏:
それは、ロシアを救い、またそれによって世界全体を破滅と破局から救うことです。
なぜなら今、世界全体が大きな衝突へと向かっており、それが核による破滅、核戦争につながるおそれがあるからです。
ほかの政治家たちはそれに気づかず、理解もしていません。政治的、イデオロギー的、国際安全保障体制の崩壊という事態が現実のものとなる前提条件を作り出しています。
人々も、この危険に気づかず実感していません。別のことで頭がいっぱいにさせられているからです。核兵器の脅威で人々を怖がらせる一方で「もちろん、そんなことは起こるはずがない」とも言われています。しかし、そのリスクは極めて大きいのです。
これほど激しい相互の敵意や憎しみがあり、軍事行動が続いている状況では、そのリスクは非常に高いのです。
ですからロシアを助け、世界を助けるためには、国内にいるしかありません。それ以外の方法ではできないのです。だからこそ、私たちはロシアで活動していますし、これからもこの国で活動を続けます。
その際、現在ロシアで施行されている法律を守って活動します。私たちは、いかなる法律にも違反しない形であらゆる活動を行っています。私たちは人々と対話し、その声を聞く方法を身につけました。そして人々にも、法律に違反することなく、自らの意見を表明するよう呼びかけています。
ある意味では、ソ連時代に似ています。当時、検閲をかいくぐりながら読者や観客には何を伝えようとしているのかが分かるように、本を書いたり映画を作ったりしていました。私達も時には、そういう形で活動せざるを得ません。それは事実です。
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プーチン政権側による圧力の実態や泥沼化する侵攻がロシア社会と世界に与える影響などについて、「ヤブロコ」のニコライ・ルイバコフ代表に聞いた単独インタビューの連載記事を配信中です。全4部で、本記事は第2部です。(1部、2部、3部、4部)