“投票で2位”の教授が東大総長に 選考は“ルール通り”も…学内で渦巻く不満「十分な説明ない」「プロセスの公平性開示を」 大学経営のあるべき姿とは【news23】
13日発行予定の東大生がつくる「東京大学新聞」の表紙。見出しは「意向投票はなぜ覆ったのか」。東大の次の総長に、学内投票で2位だった藤垣裕子教授が選ばれたことで、波紋が広がっています。
「選挙する必要があったのかな」次期東大総長は意向投票2位
秋晴れの空に浮かんだ“問い”は、東大生もまだ解けません。
東大4年生
「なんで2位の人をあえて選んだのか」
——2週間ほど経って学校から説明は?
「特に学生にはないです」
東大4年生
「ダブルスコアでも1位の人に決まらないなら選挙する必要があったのか。なんでやってたんだろうとは思います」
これまで東京大学の副学長などをつとめ、2027年4月からは東大の総長となることが決まった藤垣裕子教授。
女性が東大の総長になるのは初めてのことですが、藤垣教授が選出された理由について詳しい説明を求める声が上がっています。
外部の有識者もメンバーに入った「選考会議」によると、9月に教授や職員らが行った「意向投票」で藤垣教授は2位でした。
その後、上位3人で行われた2回目の投票でも藤垣教授は2位。いずれも1位とはダブルスコアで大差をつけられましたが、次期総長に選ばれたのは藤垣教授でした。
次期東京大学総長 藤垣裕子 教授
「本学は来年150周年を迎えます。150年経ってようやく初めて女性総長を生み出して、社会にとってもかなりメッセージ性があるのではないかと考えています」
最終決定は“選考組織” は“ルール通り”も…文科大臣は説明求める
選考会議の議長を務める元NHKキャスターの国谷裕子氏は、「藤垣氏が女性であることは選考過程では議論の対象にはならなかった。大学が直面している様々な課題にどう向き合って改革していくのかという観点から選考を行った」と説明しました。
総長選考・監察会議議長 国谷裕子氏
「意向投票で最も多くの支持を得られた候補者が総長予定者として選出されなかったが、様々な資料・面接・動画を、本当に丁寧かつ真剣な協議を繰り返して検討しました。責任をもって総長選考・監察会議が選びました」
文科省は、国立大学などの学長を選ぶ際、意向投票はあくまで参考の一つであり、最終的には学長選考組織が決めるよう示しています。つまり、今回の選考は“ルール通り”。
しかし、東京大学の斎藤幸平准教授は「十分な説明がないことが議論を呼んでしまっている」と話します。
東京大学 斎藤幸平 准教授
「私の周りにいる先生たちも、基本的にこのやり方でいいんだろうかという疑問は持っていると思う。1位の人が“ここがダメでした”と理由を説明しにくいと思うので、あまり踏み込んで説明することは一般的ではないのは一般企業もそうだと思うが。今回に関してはやはり世間的な注目も集めているし、もう一回改めて丁寧な説明があってもいいのではないか」
今回の選考については、文部科学大臣も説明を求めています。
関芳弘 文部科学大臣
「今回なぜそのような判断をしたのか、学内にしっかりと説明する必要がある。総長選考・監察会議の対応を注視していきたい」
東大生「プロセスの公平性開示を」意向投票で得た票数は全体の4分の1足らず
東大の学生たちは、意向投票2位で次期総長に選ばれた藤垣教授について…
東大大学院 1年生
「“女性が優遇されている”という批判が(選出)プロセスを公開しない限りあり続ける。プロセスの公平性を開示して適正なプロセスで選ばれたと伝わるといい」
東大1年生
「批判はあると思うので、それを覆せるよう新しい総長の活躍が大事になると思う」
藤垣教授の東大総長としての任期は27年4月から6年間。
意向投票で得た票の数は全体の4分の1足らずですが、コミュニケーションを充実させて乗り越えたいとしています。
トップ選考で相次ぐ“逆転”なぜ?
藤森祥平キャスター:
総長・学長の選考をめぐっては、’26年6月に京都大学でも意向投票で3位だった候補者が選出、千葉大学でも’24年に2位の候補者が選出されています。
国が進めてきた大学のガバナンス改革では、意向投票は“判断材料”の一つだという流れを作っているようです。
教育経済学者 中室牧子さん:
2014年の学校教育法、国立大学法人法改正の際、文部科学省から総長・学長の選考にあたって意向投票はあくまで判断材料の一つにするよう通知が出ています。
企業のトップを選ぶ際に従業員の投票で選んでしまえば、トップは従業員の意向を気にして大胆な改革ができないことが懸念されますから「意向投票だけで決めないように」ということです。
東京大学は総長の選出にあたって、「こういう項目を大切にして評価する」という22項目を先に発表しています。
そのうちの一つが「組織構成員の幅広い支持と合意形成能力」なので、22項目のうちの一つは意向投票を根拠にして判断すべき部分、逆に言えば22項目のうちの一つでしかないということです。
問われる「透明性の確保」文科省主導の改革、周知は?
小川彩佳キャスター:
ルールに則った選考とはいえ、2回に渡って投票が行われていて、2回目は上位3名の決選投票のような形で行われたということです。過半数の票を集めた候補者がいたにもかかわらず、最終的に結果が違うものになるというのは、納得感を確保するのは難しいと感じます。
教育経済学者 中室牧子さん:
今回の1番大きな問題は、全体評価の位置付けの中で意向投票がどういう位置にあたるのかということを、学内の人もきちんと理解していなかったことだと思います。
2014年から始まった大学のガバナンス改革の一環なので、「意向投票の結果は参考までに」ということではありますが、それが周知されていないために京都大学や千葉大学などでも同様のことが起こって議論を繰り返しています。
この改革は文部科学省が主導してるので、国が「改革を行ってこういう手続きになっている」ということをきちんと周知すべきではないかと思います。
小川キャスター:
改革の一環として、大学のトップ選びをめぐっては2021年、法律の附帯決議で、教職員や学生らの理解を得られるよう「可能な限り議事の内容を公表するなど、より一層の透明性の確保に努めること」とされました。「透明性の確保」はどうしていったらいいのか。
教育経済学者 中室牧子さん:
可能な限り、「どういう意思決定が行われたのか」を明らかにすることが重要で、今後、もしも東大の選考委員会から新たな情報が開示されるのであれば、22の評価項目に照らして新総長を選んだ理由を示すことが重要だと思います。
総長選出の結果はすぐに出るものではなく、5年後、10年後の東京大学の研究競争力にあらわれてきますから、その効果の検証も国と東大が一緒になってきちんとやって、国民に結果を示していくことが大事ではないでしょうか。
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<プロフィール>
中室牧子さん
教育経済学者 教育をデータで分析
慶應義塾大学 総合政策学部教授