身代金要求に応じず新たに個人情報公開…ハッカー集団の狙いは? GMOが政府に要求「能動的サイバー防御」とは【Nスタ解説】
GMOインターネットグループの提供するサービスがサイバー攻撃を受けた問題で、ハッカー集団は27日正午過ぎ、新たに声明を発表し、GMOが交渉に応じなかったとして1人の個人情報を公開しました。GMOの不正アクセスで一体なにが起きているのでしょうか。
【写真で見る】「我々を止めることはできるのか?」ハッカー集団の声明文
GMO不正アクセス被害 1人の個人情報が公開
高柳光希キャスター:
GMOインターネットグループは、インターネットを基盤に様々なビジネスを展開しています。今回のサイバー攻撃は、投資家から注文を受けて銀行や証券会社に発注したFX取引が対象にされています。
利用者の乗っ取られた口座で“即座に買って即座に売る”という取引が、プログラムによって機械的かつ大量に繰り返され、その手数料分の損失が急激に積み上がったという形になりました。
まず投資家は、手数料によって多額の損失を受けてしまいました。
また、GMOのサービス「お名前.com」では、ユーザー離れによる信用の失墜が起きています。
銀行や証券会社などのプラットフォーマー側に対しても、やはり信用の失墜に繋がったということです。
では、今回の攻撃者の狙いは何なのでしょうか。おそらく、投資家の個人情報の掌握などを示した上で、身代金を要求したのではないかということが考えられています。
ハッカー集団はGMOに対して、27日正午までに100万ドル(日本円で約1億6000万円)の金額を要求し、これに応じない場合は顧客情報を公開し、ランサムウェアという身代金型の攻撃をすると予告していました。
そして27日正午すぎ、実際に1人の個人情報を公開しました。
TBS報道局 経済部 室谷陽太記者:
顔写真や氏名、住所、電話番号などの個人情報に加えて、ユーザーのウェブサイトの閲覧情報などから得た、極めて個人的な情報も含まれているということです。
というのも、ハッカー集団がGMOのサーバーを通じ、ユーザーのパソコンに侵入し、個人情報を取得した可能性があるということです。
ハッカー集団は、毎日正午に「分析完了したものから個人情報を順次公開していく」と予告しています。
高柳キャスター:
GMOに登録している情報のみならず、それ以外の個人情報も流出しているというのが怖いポイントですね。
井上貴博キャスター:
ここまでのレベルになると、いつ自分の情報が晒されてもおかしくないと思うと同時に、今回の攻撃者はなぜこんなに劇場型のやり方をしているのかという違和感があります。
また、攻撃者が言っていることが正しいかどうかの裏付けというのは全くないので、そこも含めて冷静に見なければならないし、GMO側にも不備があったのではないかと思いました。
斎藤幸平 東京大学准教授:
GMOは被害者でもありますが、予見されるような脆弱性に対策をしていなかったのだとすると、批判が来ることは今後避けられなくなりそうです。
最近は、AIでいろいろな企業が攻撃されていますが、これまでとは違う種類の事件の可能性もありますよね。
TBS報道局 経済部 室谷陽太記者:
ハッカー集団が狙っていることは、まさにこうしたGMOへの批判が集まる現在の状態だと思います。
様々な形で個人情報を出すことにより、ユーザーだけでなく一般の方からも「GMOなんとかしろ」というような声が上がります。そして、お金を払わざるを得ない状況に追い込んでいくというのが、一つのハッカー集団の狙いだと思われます。
合鍵が盗まれるのと同じ? 不正アクセスの脅威とは
高柳キャスター:
今回、GMOではサーバー約2万7000件が不正アクセスの影響を受けた可能性があるということです。なぜここまで詳細に、利用者の個人情報に影響が及んでいるのでしょうか。
サイバーセキュリティの専門家である、S&Jの三輪信雄社長に伺いました。「お名前.com」のサービスをテナントビルにたとえ、約2万7000件あるサーバーが部屋だとします。
ハッカーが1つの部屋の鍵を盗んだ上で、管理室からすべての部屋の合鍵を盗んでしまった。ここから大きな影響が出てきたということです。
TBS報道局 経済部 室谷陽太記者:
合鍵を使って他の部屋に侵入し、不正な取引を行ったり、利用者のパソコンからデータを盗んだり、ウイルスを送り込んだりすることも可能になっていると三輪社長は指摘しています。
また、一度これをやられると、ハッカー集団が合鍵を持っている状態になります。そのため、復旧がなかなかできないのが今の現状で、GMOも復旧の手立てがないということです。
斎藤幸平 東京大学准教授:
1個の鍵で全て開けられてしまうということですか。
TBS報道局 経済部 室谷陽太記者:
そういうことです。
高柳キャスター:
防御側は、管理室を絶対的に守る手立てを取らなければならないということですか。
TBS報道局 経済部 室谷陽太記者:
まさにそういうことです。GMOの熊谷社長は「間隙を突かれた」とおっしゃっていますが、そこが悔やまれるというところですね。
政府に「能動的サイバー防御」を緊急要求も…発動には高い壁?
TBS報道局 経済部 室谷陽太記者:
私は半年前、“セキュリティ対策の最前線”としてGMOに取材させていただき、GMOには世界トップレベルの「ホワイトハッカー」が200人いるということでした。
当時おっしゃっていたのは、攻撃者側がどんどんAIを使うようになっているため、守る側もAIを使わなければいけないという話です。
ただ、この半年間で状況はガラリと変わり、攻撃者のAIを使う練度がどんどん上がっています。
セキュリティに強いGMOですらハッキングに遭うのが今の時代であり、非常に守るのが難しいということが露わになった形です。
高柳キャスター:
「GMOでも」というのが、日本中の企業に対して見せられてしまったところもあるわけです。
今回、GMOは政府に「能動的サイバー防御」を緊急要求しました。
これは、サイバー攻撃を未然に防ぐために、警察や自衛隊が検知したハッカーなどの攻撃者に対してアクセスをするというものです。先手を打ち、攻撃を無害化するというようなイメージです。
10月1日に関連法案が施行され、実施が可能になりましたが、今回発動の可能性があるのかというと、難しいハードルがあるようです。
TBS報道局 経済部 室谷陽太記者:
専門家である慶應義塾大学の土屋大洋教授は「今回のGMOのFX取引は、能動的サイバー防御の発動対象に入っていない。民間企業からの依頼に対応する法律ではない」と話しており、現実的には能動的サイバー防御の適用は考えづらいということです。
また、政府がもし発動していたとしても、それによって「政府はこういう手口で来るんだ」とハッカー側に知られることにもなります。もし発動するとしても、政府が公表することはないのではないかというようなお話でした。
出水麻衣キャスター:
今回はFXという外貨為替の取引への不正アクセスでしたが、たとえばNISAなどで個人の資産を運用している方にもハッカーの手が及んでしまったら、能動的サイバー防御が発動されるのでしょうか。
TBS報道局 経済部 室谷陽太記者:
能動的サイバー防御の範囲内には金融機関も入っているので、その場合は発動される可能性は十分考えられます。
斎藤幸平 東京大学准教授:
しかし、国が関与して、民間のデータセンターに何かアタックをしていかなければならないとなると、民間に対して自由度を制限することになります。
今回GMOの熊谷社長は、自分たちの会社に非があるかもしれない中で、急に国に頼って大きな制度を発動させようとしています。そのような飛躍した議論をすることに対しては、私は違和感を持っています。
井上キャスター:
一企業の責任転嫁に見えてしまう部分がありますが、その一方で、一企業の問題ではなく国としてどう守っていくのかという問題もあり、大きな論点になりそうです。
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<プロフィール>
室谷陽太
TBS報道局経済部 総務省・IT通信担当
GMOのホワイトハッカーを取材
斎藤幸平さん
東京大学准教授
経済思想家
著書『人新世の「資本論」』は50万部超