バレー女子日本代表の司令塔、セッター・関菜々巳(24)が今季限りで6シーズン在籍した東レアローズ(以下、東レ)を退団し、来季から海外リーグへ挑戦する。
彼女が海外を意識したきっかけは、チームメイトだった石川真佑(23)のイタリアリーグへの移籍だという。
【写真を見る】バレー女子日本代表セッター関菜々巳 「やらない後悔よりやって後悔」海外挑戦の裏にあった石川真佑の存在【独占インタビュー】
海外挑戦の裏にあった石川真佑の存在
昨季まで共に東レで戦った日本代表のエース・石川の存在が関の心を動かした。今年からイタリア1部リーグ・セリエAのイル・ビゾンテ・フィレンツェでプレーしている石川。世界の強豪が集うイタリアリーグで石川は、チーム最多得点を何度も叩き出す活躍を見せている。
「やっぱり日本代表で海外選手がプレーしているのを間近で見たり、それこそ男子の選手とかが海外行って良くなってるし、(石川)真佑が行ったのも大きかった」
海外挑戦への思いが強くなった関。「これまで海外に行ったどの選手に聞いても、『行ってよかった』って言う。それこそ真佑に聞いても『海外リーグいいですよ』って言うし、やめた方がいいよっていう意見はなかったから、それが大きかったですね」と話す。
関が所属する東レは、常にトップ争いを繰り広げてきた強豪。昨季も準優勝と結果を残したが、石川を始め多くの選手が退団した。今季はセッター・関を中心に奮闘するも結果は8勝14敗で8位。ファイナルラウンドに進出することはできなかった。
「こんなに勝てないシーズンっていうのが初めてだったので、そこへのギャップも最初は大きかった。いろんな人が抜けたけど、その中でも”自分がチームを引っ張っていく、絶対勝つんだ”っていう気持ちで行ったからこそ、思うように結果が出ない、もうちょっとできると思ってたのにできない自分へのギャップとかで、結構、『うわーっ』てなってる時があった。でもチームのみんなといい意味で楽しくやれるようになってからは、気持ちも前を向けた。結果は残らなかったかもしれないけど、必ず前進したシーズンにはなったんじゃないかなと思っています」
最後の決断は”やらない後悔よりやって後悔”
千葉の柏井高を卒業後、東レに入団した関は正確なトスと巧みな配球を武器に新人賞を受賞。正セッターとしてチームに貢献してきた。
そんな彼女だが、実は東レに入団するときにも今回と同じように決断を迫られた過去がある。
「高校卒業後、Vリーグを断って大学に行くつもりで。でも先生から『お前が一緒にやってきた同学年の林(琴奈)とか中川(美柚)とかは多分Vリーグに行って、このまま代表とかにも選ばれると思うぞ。その時にお前はVリーグに行かず大学に行って後悔しないか?』みたいなことを言われて。負けず嫌いだから、確かに…後悔するかもって思って。私も行けばよかったなとか思いそうと思って、Vリーグに入団しました」
そして今。東レに残るか、海外挑戦か。今回もあの時と同じ、”負けたくない、後悔したくない”という思いが彼女を突き動かした。
「どっちかっていうと東レに残る方が多分楽だし、絶対安泰じゃないですか。だからこそそっちに揺れてる自分がいるような気がして。でもやっぱりここの世界に来たのも自分が後悔しないために、大学行こうと思ったけど、Vリーグに来たから。残って、もしまた結果が出せなくて、行ってればよかったとかグチグチ自分で言うなら、絶対に海外に行って挑戦したい。成功すると思ってないけど、やっぱり”やらない後悔よりやって後悔”の方がいいなと思って決めました」
”やらない後悔よりやって後悔”
それでも東レ愛に溢れる彼女は決断に至るまで相当悩んだという。揺れる彼女の最後の決め手となったのは自身の”ワクワク”する気持ちだった。
「絶対行くと思って伝えたけど、ありがたいことに東レにも止めていただいて。もうちょっと居てくれない?みたいなことを言っていただいたんです。まぁ揺れました。東レが大好きだからこそ残ることも考えました。でもやっぱり悩んで悩んで考えたときに、ワクワクしちゃうのは移籍だった」。最後は自分の気持ちに正直に、決断した。
パリ五輪メダル獲得へ 「まずはネーションズリーグで」
6シーズン在籍した東レを飛び立ち、来季からは海を渡って更なる高みを目指す。移籍の前には、アスリートなら誰もが憧れる舞台・パリ五輪が待っている。
出場権をまだ獲得していないバレー女子日本代表にとって、5月から開催されるネーションズリーグが大きなカギとなる。自らの手でパリへの切符を獲得するチャンスが目前に迫る、彼女に今の心境を聞いた。
「今季はオリンピックでメダルを獲ることしか、もう目標に考えてないので。もちろん苦しいシーズンだと思うし、だからこそ、そのためにまずは出場権をネーションズリーグで本気で取りに行かないといけないし、そこで自分がしっかり成長して、去年より間違いなくチームのプラスになるような働きができるようにならなきゃいけない。今できる自分の全てを出し切ってメダルを獲りに行きたい」
■関菜々巳(せき・ななみ)
1999年6月12日生まれ、千葉県船橋市出身。身長171cm。
ポジションはセッター。姉の影響を受け、バレーボールを始める。柏井高(千葉)に進学し、高校3年時の春高バレーは3回戦で、中川美柚や西村弥菜美(いずれも現久光スプリングス)を擁する東九州龍谷高(大分)に敗れた。2017年11月に東レアローズへの入団内定が発表された。正セッターとなった18~19年シーズンは最優秀新人賞とベスト6に選出され、以後ミドルブロッカーを絡めた多彩なトスワーク、効果的なサーブで東レをけん引。女子日本代表は19年に初選出。背番号6。愛称は「セナ」。