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日銀の高田審議委員は2月29日、2%の物価目標について、「実現が見通せる状況になってきた」と発言するなど、マイナス金利の解除がいよいよ近づいている。
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マイナス金利解除はいつ? 物価2%「見通せる状況」
日本銀行 高田創審議委員:
2%の物価目標の実現がある程度目視野に入ってきている。達成できるような状況である。
日銀の高田審議委員は2月29日、滋賀県大津市で講演。その後の記者会見で、マイナス金利解除への見通しを語った。
日本銀行 高田創審議委員:
ある程度、好循環、賃金をベースとして対応していく動きというものが、1年前、半年前に比べてもそういう空気が出来てきたのではないか。非常に強い緩和のところからギアを少し変えていくと同時に、ある程度の緩和、サポートはまだ残さなければいけない部分も当然ある。どんどん利上げをするいうことではない。
植田総裁の発言にも変化が現れている。
日本銀行 植田和男総裁:
(物価2%)見通しが実現する確度は、引き続き少しずつ高まっている。
さらに、植田総裁は1月のこの発言から1か月後の2月22日には「デフレではなくインフレの状態にある」とも発言した。
マイナス金利解除はいつ? 好循環の兆しも実体経済は乖離
2月28日、ブラジルで開催されたG20財務相・中央銀行総裁会議。日銀の植田総裁は、2%の物価目標の達成について改めて認識を示した。
日本銀行 植田和男総裁:
今のところ、まだそこまでには至っていない。賃金と物価の好循環がうまく回り出しているかどうか、強まりつつあるかどうかということを確認していく作業を続ける。今年の春季労使交渉の動向は、その確認作業の中で1つの大きなポイントである。
日銀のマイナス金利解除への動き、その背景にあるのは、物価と賃金の好循環の兆しだ。
総務省が発表した1月の全国の消費者物価指数は、生鮮食品を除いた総合が去年の同じ月に比べ2.0%上昇した。物価の上昇は22か月連続で2%以上となっているが、食料品の値上がりが落ち着いたことなどから、伸び率は3か月連続で減少している。
物価上昇を上回る賃上げが焦点となる中、企業からは満額回答が相次いでいる。サントリーホールディングスは、定期昇給とベースアップを含め、平均約7%の賃上げで労働組合と妥結と発表した。
サントリーホールディングス 新浪剛史社長:
2025、2026年も人手不足がゆえに給料が上がっていく方向に見ている。有為な人材を集めるためには戦略的にやらないと負けてしまう。
モスバーガーを運営するモスフードサービスは、定期昇給とベースアップを含め、平均で8%の賃上げを実施すると発表した。
2月27日に行われた「新しい資本主義実現会議」の場で岸田首相は「今こそ、デフレ心理とコストカットの縮み志向経済から、完全に脱却し好循環を実現する経済を目指している」と語った。
一方で、実体経済には不安材料も出てきている。
今週発表された1月の鉱工業生産は、ダイハツの工場停止などが響いて、2023年12月と比べて7.5%低下した。エコノミストの中ではGDPが3期連続でマイナス成長の可能性があるとの見方も出てきている。
また、物価の変動を反映した実質賃金は2023年12月まで21か月連続で前年を割っている。物価の上昇に賃金が追いついていない。こうした中でのマイナス金利の解除は、金利や為替、株式市場にどう影響するのか。
マイナス金利解除の先は 物価2%「見通せる状況」
――日銀が3月か4月のマイナス金利解除に前のめり。この背景をどう見るか。
慶應義塾大学 総合政策学部教授 白井さゆり氏:
経済は停滞気味。消費は物価の高騰で下落しているから、物価と経済の好循環は起きていない。だが、なぜ強く姿勢を出して出口を言うか。インフレは超円安から来ている。それを除いたらほとんどインフレになっていない。インフレの7割が食料。それを除いたら1%いかない。そこが原因なので多少なりとも超円安を減らしたいのではないか。
――実体経済は、2期連続のマイナス成長。鉱工業生産が1月悪かったので3期連続のマイナス成長になるかもしれない。
慶應義塾大学 総合政策学部教授 白井さゆり氏:
消費は重要で、実質消費は物価の高騰によって下落している。実質賃金も減っているから消費者は相当苦しい状況。データから見ると好循環というのはまだ確認できない。
――日銀はどういう理屈で、3月解除とするのか。
慶應義塾大学 総合政策学部教授 白井さゆり氏:
そこが難しいところ。「2%の物価の見通しが見えた」と高田審議委員が言っているが、今の2.2%のインフレのうち7割が食料。それを除くと1%もインフレがいかないので、見通しもなかなか難しく、そこをどう説明するかというのがわかりにくい。大企業中心だが、春闘で2023年かそれ以上の賃金上昇率3.6%を超えてくれば良しと、理由をつけるのではないか。
――物価の動向は「弱い」と。
慶應義塾大学 総合政策学部教授 白井さゆり氏:
食料によってインフレが押し上げられているので、それを除くと、1%のインフレもいかない。食料がなければ、こんなに上がっていない。食料の高騰はもう高止まりに来ているので、インフレ率は下がっていく。なのでこのままいくとだんだんインフレ率は下がっていく。そこで2%を切ってしまうと金融の引き締めの方向に行くことは理が立たない。だから早くした方がいいという判断もあるのではないか。
――米欧が利下げ局面に入ってくる中で、早くやらないと日本は上げられなくなる?
慶應義塾大学 総合政策学部教授 白井さゆり氏:
アメリカなどが利下げをするということは、円高の方向に修正されるので、超円安が終わると意味ではいいと思うが、アメリカの大統領選もあり、市場が非常に振れやすくなるので安定してるうちにやった方がいいという判断ではないか。やるんだったら早くした方がいいが、春闘の結果で4月まで待つのかもしれない。日銀は2%を安定的に実現するまで金融緩和をやると、10年以上言っているが見えない。今はコストプッシュ、食料だけで来ている。今せっかく2%を超えてる間にマイナス金利は非常に批判も大きいので、もうこんなに長くやる必要がないということになれば、早く撤廃するチャンス。
――異次元緩和とかマイナス金利とか10年やって、うまくいかなかったので好循環に入ってきたという理屈をつけている?
慶應義塾大学 総合政策学部教授 白井さゆり氏:
10年間してきた政策もあり、過去にしてきた方のことを引き継いでいるから、大きく否定するのは、難しいのかもしれない。
――マイナス金利を解除して、どこまで利上げするのか。
慶應義塾大学 総合政策学部教授 白井さゆり氏:
短期金利で、マイナス0.1は撤廃されると思う。0とか0.1%になるにしてもそんなに上げるとは考えられない。日本の経済が弱すぎるので、せいぜい1回か2回、最大で0.2%ぐらいの引き上げにとどまると思う。
――長短金利操作、長期金利を0%程度で維持し、事実上1%を上限にする目標は?
慶應義塾大学 総合政策学部教授 白井さゆり氏:
こちら方がずっと大事。長期金利の0%の目標は、もう撤廃すればいいと思う。ただ、1%は目処として残した方がいいと思う。それがなくなってしまうと、国債の需給で金利が動きやすいですからオーバーシュートする可能性もある。企業も金利が上がり、住宅ローンも上がるので、非常に不安定になるから、私でしたら1%の目処を維持して、重要なことは国債の買い入れをどうするか。
――国債管理政策と金融政策をどう組み合わせるかということが、一番肝になってくる。
慶應義塾大学 総合政策学部教授 白井さゆり氏:
マイナス金利解除よりも大事なのは長期金利の目標と国債の買い入れの2つ。
――物価目標2%をこの先どうするか?
慶應義塾大学 総合政策学部教授 白井さゆり氏:
10年以上やってきて、本当の意味での2%は実現できなかったことは総裁も言っている。今も食料を除けば1%いっていないから実現できてない。どこかの段階で例えば1から3%っていうレンジにして3年ごとに見直すという形にすれば柔軟に金融政策ができるから、どこかの段階で政府と相談するっていうのが大事だ。
(BS-TBS『Bizスクエア』 3月2日放送より)