![「翌朝ヘリで見ないと…」把握に時間がかかる津波被害をわずか20分で可視化!最新技術で命を救え【つなぐ、つながる】](/assets/out/images/jnn/1045048.jpg)
「情報収集が非常に困難」 浮き彫りになる津波被害を把握する困難さ
元日に起きた能登半島地震では、津波による被害を把握する難しさが浮き彫りとなった。
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高さ4.7メートルの津波が到達した能登町。大森凡世町長は、道路の寸断で、職員が駆けつけることさえ困難だったと振り返る。
能登町 大森凡世町長
「(職員の)だいたい3分の1くらいしか役所に来ていなくて、情報収集というのが非常に困難な状況でした」
この日、地震発生の30分後には日没となり、細かい状況を把握できたのは、ヘリの映像を見た翌朝だった。
能登町 大森凡世町長
「次の日には津波がきていてひどいことになっているという情報だけは入っていたんですけれど、まさか、ここまでの状況になっているとは思ってなかったです。はやく情報が欲しいんですけれど情報が得られないというところで、もどかしさがありました」
進む、津波被害の予測システム開発
被害の状況をもっと早く把握できれば、救えるいのちが増えるかもしれない…。そんな思いから、東北大学の越村俊一教授はある画期的なシステムの開発に挑んでいる。
越村俊一教授
「地震の観測情報をもとに、津波がどう浸水するのか、それがどういう被害になるのか予測するシステムです。この結果が出るまで20分くらい」
その仕組みはこうだ。
地震が発生すると、システムはマグニチュードや震源の情報に加え、地殻変動のデータなどを自動で取り込む。そして、東北大学にあるスーパーコンピューターが計算を開始。20分後には、津波による浸水範囲の予測がはじき出される。
こちらは高知市の地図。南海トラフ巨大地震が起きたケースで計算すると、 地図に浸水エリアの予測が表示された。
ピンク色のエリアは、浸水の深さ、最大約5メートルを。赤色は、最大10メートルを意味している。また、繰り返し訪れる津波の高さや、どのあたりの建物に被害が出るかも、つぶさに見ることができる。
越村俊一教授
「どこにどれくらいの人、災害対応のための資源を配分すべきなのか、どこに手厚く支援活動を行うべきなのか。そういったことを決める参考資料として使って頂きたい」
「予測と実際の被害が合致するのか」
このシステムがカバーできる範囲は、去年末までに、鹿児島県から北海道までの太平洋沿岸、日本海側は、新潟県まで広がっていた。しかし…
先月、越村教授の姿は、能登半島にあった。
元日の地震では、システムが能登に対応しておらず、 シミュレーションができなかった。そこで急遽、能登にも範囲を拡大し、 当時の地震のデータをシステムに読み込ませた。そして、予測と実際の被害が合致するのか、調べることにしたのだ。
津波で、漂着物が住宅の近くまで押し寄せていた。シミュレーションでは、このエリアの浸水の深さは黄色で示された最大2.5メートル~3メートル。
海面から漂着物までの高さを測ると…。
「今何メートル?」
「3メートルいかないくらい」
越村教授
「シミュレーションの結果が、整合しているなというのがある程度確認できた」
シュミレーションを活用している自治体も
未来のいのちを救うため、高知県ではすでに活用が始まっている。
この日、システムを使った大規模な訓練が行われていた。
巨大地震が起き、対応に追われている最中、余震が発生したと想定。状況把握のためにヘリを飛ばす余裕もない中、18分後に、シミュレーション結果が出た。
「最大浸水深見てみましょうか、今回の余震では浸水の予測はされていないようです。最大50センチくらいの波が繰り返し6時間後までは続くと」
「浸水はない」。大事な情報が得られた。
高知県 危機管理部 江渕誠副部長
「消防などの応急救助機関の対応策の検討あるいは救助救出の具体策の検討なんかで、被害の全容が分からない中でも検討出来るというメリットがある」
越村教授は今後5年以内に、20分の計算時間を、5分に短縮したいとしている。実現すれば、津波が来る前に危険な地域が分かり、素早い避難につながるかもしれない。
命を守るシステムへ…挑戦は続く。