イチローさん、僕たち「ちゃんとやりました!」金言胸にサクラ咲かせた、進学校・都立新宿高校の球児たち

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2024-03-16 07:00
イチローさん、僕たち「ちゃんとやりました!」金言胸にサクラ咲かせた、進学校・都立新宿高校の球児たち

イチロー氏(マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター)に指導を受けた都立新宿高校の生徒が15日、卒業を迎えた。2022年11月に2日間イチロー氏の指導を受けた同校野球部。当時2年生だった4人の球児は、野球部引退後に受験勉強に励み、見事難関大学に合格した。辛い時期に4人を奮い立たせたのは、イチロー氏からかけられたある言葉だったという。

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イチロー氏の言葉を支えに難関大合格

◆中澤志弥主将(東京外国語大学 言語文化学部言語文化学科)

Q.どんな3年間でした?
中澤志弥(なかざわ ゆきや):

充実した3年間だったなと。勉強、部活を全力でやってきたからこそ、こういう幸せな気持ちで卒業出来る。やっぱりイチローさんが2年(生)の11月にいらっしゃって、それが人生の中でビッグイベントというか。(最後の夏の東東京大会4回戦の相手)共栄学園との試合は引退しても話します。力の差はありましたけど「勝てる試合だったよね」と。悔しい思いが残っているので、それを糧にしていきたい。振り返ってみるとみんな頑張ってきたのかなと思っていて、イチローさんが来たのもひとつの契機となって、これから頑張っていこうとかそういう意識が芽生えたのもイチローさんが来たことがきっかけでした。
※新宿高校は、甲子園初出場を決めた共栄学園に4回戦で敗れベスト32で敗退

Q.一番印象に残っている言葉は?
中澤:
一番最後におっしゃった言葉だったので「ちゃんとやってよ」は覚えています、光景も。一生懸命勉強して、第一志望に合格する事が出来たので、“ちゃんとやりました”、今のところは。ここをゴールではなくスタートにして、新たな自分の人生を切り拓いていけたらいいなと思います。

◆清水大賀外野手(筑波大学体育専門学群)

Q.イチローさんが来た時に「その気持ちは」と質問したら、「地球が滅びるぐらい」って表現していましたね。
清水大賀(しみず たいが):
「本当にありえない」なと思ったので(笑)。本当に来てくださったときは、何がなんだか分からないというのが一番で。すごく親身になってアドバイスをしてくださって、話を聞けただけ、あのオーラを近くで感じられただけで、すごく貴重な機会だったと思いました。

Q.人生で一番の出来事?
清水:
比べる対象がないので(笑)1番ですね。イチローさんに指導してもらったという野球人としての喜びもあったんですけど、その後テレビで放送されたのを見て、嬉しいだけではなく、悔しい気持ちも出てきて。ゆるいとコメントされて、引き締めていかないとダメだなと思いました。時間が無いというんだったら、そういうところの無駄を無くそうと、厳しめに声をかけるように意識をしていました。
※イチロー氏は部員の動きを見て「ゆる〜い空気が流れているのが面白いね。僕らにとっては新鮮な光景だね」とコメント

Q.イチローさんに植え付けられた意識は清水君の中でも変わっていった?
清水:
野球で見返したいというか。「新宿高校意外とやるじゃん」って。夏の大会(ベスト32で敗退)では見返す事は出来なかったんですけど、個人として、新宿高校を背負う身として、何か野球でイチローさんの耳に届くぐらいの結果を残していきたいと思っていますし、大学で硬式野球をやろうと思っています。イチローさんと出会えて、もっと自分は出来るんじゃないかという思いにもなれたので、より続けようという思いが増しましたね。「ちゃんとやってよ」というのが耳にすごく残っているので、ちゃんとやろうと思って、受験勉強も最後までやりました。一番印象に残っているのはあの言葉ですね。

Q.ちゃんとやったんですね。
清水:
はい(笑)。

◆益子尚真内野手(東北大学 経済学部)

Q.イチローさんが与えてくれた事は自分の人生をどう変えました?
益子尚真(ますこ しょうま):

部活の後に後輩と東京ドームに巨人戦を観に行った時に、新宿高校の野球部のカバンを持っていたんですけど「君たち新宿高校なの?イチロー来たところだよね。見てたよ。頑張ってね」と声を掛けられたり。地元の駐輪場のおじさんにも「おはようございます」と挨拶したら「イチロー来たんだね」という事を言われて。周りから見られているんだな、「イチローさんが来たところ」って。「新宿高校の野球部だ」って思われる事が増えて、周りから見てもらえている事は誇らしかったですけど「イチローさん来たのに、これだけなの?」って思われないようにというのは意識して「ちゃんとやろう」というのはありました。日常の行動、電車の中とかも見られていると思いしっかりやろうと。

正直な事を言うと、僕は勉強が好きではないのできつかったし、途中で楽しくなくなったんですけど。引退した後は野球も無くて、勉強、勉強、勉強。ご飯がめっちゃ楽しいみたいな時期もあって、10キロぐらい太ったんですけど、それでも勉強やらなきゃなって。

Q.どうやって乗り切ったんですか?
益子:
ここで諦めたりするのはダサいというのがあって。イチローさんはずっと努力をしてきた、努力の人というイメージ。自分達よりも練習しているし、野球に対して打ち込んでいたし、そういう人が安打の記録を作ったり、今高校生に野球を教えているのを見て、かっこいいなと。自分は野球は上手くないし、イチローさんみたいに取り組めなかったですけど、自分が目指した事に対しては途中であきらめるのはダサいと思っていましたし、イチローさんを見て、もっとやっていきたいというか、決めた事はしっかりやろう、ここで辞めたらカッコ悪いと思ってやってきました。
まだ将来何をやりたいかが見つかっていなくて、さまよっているんですけど、どうしても人の役に立ちたいと思っていて。まだ短いですけど人生を振り返ってみた時にすごく周りに恵まれていたという印象があって。

イチローさんが来て下さったのも「野球の普及活動をしているから」って言ってくれたんですけど、それって自分たちが始めたわけではなくて、前の先輩の代から積み上げてきて、偶然イチローさんが僕達の代で来てくれた。それはラッキーだったと思いますし、引退した後、平日も休日も野球部のメンバーと一緒に勉強をしていたからやりきれた、乗り越えられたというのもあります。本当に周りの人に恵まれているなと思っていて。今まで人から受けてきたから、役に立ちたいというのが漠然とあって。経済学部に行くんですけど、人の役に立てる仕事、地域との関連だったり、お金の動きだったり、経済的な社会問題について研究して、解決しようとする学問でもあるので、そこで学んで人々の役に立ちたいし、そういう大人になりたいです。

◆二宮康祐内野手(明治大学 理工学部) 

二宮康祐(にのみや こうすけ):
一番思い出に残っているのはノック。これ以上体を伸ばしても捕れない、もう動けないという初めて限界を味わったノック。今まで全力って言って何回もやってきたけど、本当の本気を知りました。

Q.「今の感触覚えておいてよ」って言われましたよね。
二宮:
はい。言われました。一生忘れないと思います。体が覚えているという感じですね。例えば勉強とかでもう辞めたいなと思う時は正直ありました。今日はこれでいいかと思う時もあったんですけど、まだ全力を出さないといけないなと。イチローさんに見られている気がして、もう少し頑張ろう、あと1、2時間頑張ろうと奮い立たせながらやっていました。

Q.他のメンバーにも印象残っている言葉を聞いたら「ちゃんとやってよ」だったんですけど。
二宮:
僕も同じです。同じ言葉を田久保監督にも言われていますし、みんなも同じ事を思っていると思います。ああいう何気ない言葉で奮い立つのかなと思いますね。この先どうなるかは分からないじゃないですか。でもその中で、立ち止まる事とか悩む事ってあると思うので、そういう時にこそ、イチローさんを思い出して、イチローさんを思い浮かべただけで「頑張ろう」って自分の中ではなれるので。将来の夢はまだ決まっていないですけど、絶対この先に生かせると思っていますし、死ぬまで忘れない思い出だと思うので、頑張っていきたいと思います。20歳になって、10年後、20年後、仲間に会った時にあの時の事を語れると思いますし、その思い出を共有できるのがいいですね。将来、自分の子どもにも自慢します。他の人には出来ない経験だったと思うので。

イチロー氏は当時、新宿高校の指導を終えた後にこう語っていた。

「彼らにとって野球がメインじゃない。野球好きだけど、そこまで突き詰める気持ちは無かったと思うんだけど、野球も真剣に目的を持ってやると、きっと目指している勉強のその先にある何か、それにも繋がるという事を学んでくれるんだろうなという期待をしています」

そしてこの日、門出の日を迎えた新宿高校の3年生。翌日、春季大会を戦う後輩たちに最後のメッセ-ジを伝え、イチロー氏と汗を流したグラウンドを後にした。この先彼らがまた苦難に直面した時も、「ちゃんとやってよ」、きっとこの言葉が聞こえてくるはずだ。

※写真は左から益子尚真さん、二宮康祐さん、中澤志弥さん、清水大賀さん

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