なぜ砂漠にクジラの化石が?生命の進化を物語るアフリカの世界遺産【世界遺産/クジラの谷(エジプト)】

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2024-03-17 10:00
なぜ砂漠にクジラの化石が?生命の進化を物語るアフリカの世界遺産【世界遺産/クジラの谷(エジプト)】

北アフリカの国、エジプト唯一の自然遺産が「ワディ・アル・ヒタン」、日本語で「クジラの谷」です。

【写真を見る】なぜ砂漠にクジラの化石が?生命の進化を物語るアフリカの世界遺産【世界遺産/クジラの谷(エジプト)】

首都カイロの南西約150キロの砂漠で、クジラの祖先バシロサウルスの化石がいくつも見つかったのです。

番組「世界遺産」で撮影したのですが、荒涼とした砂漠に長さ20メートル前後の巨大な骨格化石が横たわっていて、とても不思議な光景です。

バシロサウルスは約4000万年前の海に暮らしていた生物。実はその頃のクジラの谷は、浅い海だったのです。

そのためクジラ以外にもマングローブやウミガメなどの化石も見つかっています。

バシロサウルスは、現代のクジラと同じように浅い海で繁殖し、子育てをしていたと考えられています。

生まれたばかりのクジラの子どもは泳ぎが下手で、母クジラが海で下から支えて泳ぎや息継ぎのやり方を教えるのです。

クジラの谷の南西に「白砂漠」と呼ばれる地域があるのですが、キノコみたいな形をした白い巨岩が点々としている不思議な景観です。

白い巨岩はサンゴや海の生物の死骸が海底に堆積して出来た石灰岩で、それが隆起して地表に現れたのちに風雨に浸食されてキノコ状になりました。

この白砂漠もまた、一帯がかつて海の底だった証拠です。

クジラの谷で大発見だったのは、バシロサウルスの全身の化石にまだ小さな脚が残っていたこと。

現在のクジラはすっかり脚が退化し、痕跡は小さく骨格に残っていますが、見た目には後ろ脚はなくなっています。

陸に棲んだ哺乳類が海へ戻り、やがて後ろ脚が(見た目には)なくなる・・・その進化の過程を物語るのが、バシロサウルスの小さいながら身体から出ている後ろ脚だったのです。

アフリカには、こうした生命の進化の証しとして世界遺産になったものがいくつもあります。そのひとつが、ケニアの自然遺産「トゥルカナ湖国立公園群」。トゥルカナ湖は南北260キロ、大地溝帯という火山活動が活発な地域にあります。

番組でも撮影したのですが、巨大な湖には噴火で出来た火山島があり、周囲の大地も火山灰に覆われています。

その火山灰の中から1984年、古人類学者のリチャード・リーキーと同僚が、約160万年前の人類の祖先の化石を発見しました。

極めてまれな、ほぼ全身の骨格が残った状態で見つかったのは身長160センチ、推定年齢9歳の少年でした。

保存状態が良かったのは、埋まっていた火山灰が保存材の役割を果たしたからと考えられています。

「トゥルカナ・ボーイ」と名付けられた化石の少年は、脳の大きさは現代人の三分の二ほどでしたが、身体のつくりはほぼ同じ。

腰を伸ばして直立して歩くことが出来て、今の人類の祖先だと考えられています。サルからヒトへ・・・人類の進化を物語る大発見でした。

一方、「生きた化石」が暮らしているのが南アフリカの自然遺産「イシマンガリソ自然公園」です。

ここは海岸に沿って200キロも大砂丘がつづき、内陸には広大な湖や湿地が広がります。

湿地にはカバがたくさん棲んでいて、夜になると草を食べるため街にまで現れます。

番組でも撮影したのですが、普通の街路を巨大なカバが歩いている姿はシュールな感じでした。

ちなみにカバは意外と早く走ることができて、時速40キロにも及ぶとか。そのスピードの乗った巨体で人を襲うこともあり、カバによって毎年アフリカでは相当な死者が出ているといいます。

イシマンガリソでも夜、カバが出没するあたりは出歩かないように注意喚起がされていました。

このイシマンガリソ沿岸の海で、「生きた化石」シーラカンスが見つかったのは1938年。博物館の女性学芸員だったラティマーが、地元の漁師が捕った魚の中から、体長1.5メートルほどの見たことのない魚を発見しました。

発見者の名前をとってラティメリア・カルムナエと名付けられたこの魚が、シーラカンスだったのです。

古代魚と呼ばれるシーラカンスが地球に現れたのは約4億年前で、ほぼ姿を変えずに生きてきたとされます。

水深100メートルの深海に棲んでいるため撮影が難しいのですが、その姿を捉えた貴重な映像や剥製を見ると、ヒレが前足のように太く長く、こうしたヒレが足へと進化してやがて陸地を歩く両生類が生まれたと考えられています。

砂漠、火山の大地、そして深海・・・さまざまな生命進化を記録しているアフリカの世界遺産。まさに生命のゆりかごです。

執筆者:TBSテレビ「世界遺産」プロデューサー 堤 慶太

  1. 【高校野球】関東第一が帝京に逆転勝ち 春夏連続で5年ぶり9度目 夏の甲子園!5回 越後の決勝適時打 一挙4点 エース坂井遼が好救援
  2. 【結婚】元AKB48 石田晴香さんが一般男性と結婚発表「これからも感謝の気持ちを忘れずに活動を続けていきたい」
  3. 【元アイドリング!!!】倉田瑠夏さん 結婚を発表 「まさか皆様に結婚報告ができる日がくるとは」 「感謝の気持ちでいっぱい」
  4. 犬が車から外を眺めていたら…完全に想定外な『まさかの出来事』が面白すぎると12万再生「やっちまった感w」「オナラ可愛すぎ」と爆笑の声
  5. 【けものフレンズ・サーバル役】声優・尾崎由香さん 結婚を発表 「これからもお互いを支え合いながら、幸せな家庭を」
  6. 超高速で次々と世界遺産が誕生!インド・ニューデリーでの世界遺産委員会 番組スタッフの現地リポート第三回
  7. ヘリコプターが墜落 2人死亡の事故 運輸安全委員会が現地入り 遊覧飛行後に戻る途中 福岡・柳川市
  8. 食事の時間と健康を同時に解決する「スナックサプリ」、株式会社野菜田が開発
  9. 『睡魔』に襲われたトリミング中の犬…まさかの『リラックス姿』が可愛すぎると60万再生「いい夢見てそうw」「ぬいぐるみみたい」と悶絶
  10. 眞栄田郷敦×高橋文哉×板垣李光人 映画『ブルーピリオド』公式PhotoBook 発売前重版決定!!
  1. 【速報】納屋が燃える火事が隣接する小学校の体育館にも延焼 消火活動続く 千葉・我孫子市
  2. もしかして熱中症?汗をかかない・尿の量が減るのも“危険サイン” 症状が出た時の応急処置はどうしたらいい?
  3. 「ミセスユニバースジャパン2024」日本大会開催 総勢45名のファイナリストの中から日本代表が決定
  4. 【日経平均株価】一時1000円以上値上がり ナスダック4営業日ぶりに反発した流れ受け半導体関連株を中心に買われる
  5. ベランダから侵入し就寝中の女性にわいせつしようとしたか 会社員の男を逮捕 抵抗した女性はけが 東京・府中市 警視庁
  6. パリ五輪 トライアスロン 水質悪化で水泳の公式練習中止に
  7. 佐野慈紀さん パリ五輪開幕に「たくさんの感動を与えてくれると」 心境明かす 「リスペクトしかありません」 今年5月に右腕切断手術
  8. ヘリコプターが墜落 2人死亡の事故 運輸安全委員会が現地入り 遊覧飛行後に戻る途中 福岡・柳川市
  9. 愛犬が夢中で地面を『掘り続ける』理由とは?5つの心理と対処法をご紹介
  10. 危険すぎる暑さで熱中症に警戒 41℃予想も 日本の暑さ記録を塗り替え可能性 北日本は少ない雨でも災害に注意
  11. 猫との暮らしで役立つ『正しい褒め方・叱り方』3つのポイント 猫の習性に沿った伝え方を
  12. 【元アイドリング!!!】倉田瑠夏さん 結婚を発表 「まさか皆様に結婚報告ができる日がくるとは」 「感謝の気持ちでいっぱい」
×