元阪神・岩田稔氏を今も突き動かすファンレターの言葉 「1型糖尿病の星に」啓発活動続ける

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2024-03-19 12:01
元阪神・岩田稔氏を今も突き動かすファンレターの言葉 「1型糖尿病の星に」啓発活動続ける

元阪神タイガースの投手、岩田稔氏(40)は、現役時代に同じ1型糖尿病患者の方から届いたファンレターの言葉が、今も鮮烈に心に残っているという。

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『勝っても負けても、岩田さんがマウンドに立っているだけで、僕は救われるんです』

「自分に求められるのは決して結果だけではない。1型糖尿病の星になる」。その一心で岩田氏は、21年に引退するまで16年間、プロ野球のマウンドで腕を振り続けてきた。

3月15日、岩田氏が登壇したのは札幌市で開催された第51回日本集中治療医学会学術集会。「プロで16年間も戦えたのは必要な医療サポートを受けられたから。自分が阪神を選んだのも高校生の頃からサポートしてくれる主治医の存在が大きかった」という。

今回の講演会を依頼した横浜市立大学付属病院の高木俊介医師は「集中治療の現場は救命と社会復帰という結果が求められる過酷な現実と直面しているが、岩田さんも結果が求められるプロ野球の世界で結果だけに捉われず、1型糖尿病と戦いWBC優勝という夢を叶えた。アスリートが逆境に立ち向かう姿勢、人の持つチカラに勇気付けられました」と語る。

生活習慣病“ではない”

岩田氏は、高校2年で発症した1型糖尿病によって1日4回のインスリン注射を欠かすことができない。09年第2回WBCでは侍ジャパンの一員として2連覇に貢献するなど球界を代表する左腕だったが、その陰では、1イニングごとに血糖値をチェックするなど病気とも闘ってきた。

岩田氏の場合は自己免疫によって膵臓の細胞が破壊され血糖値を下げるインスリンを作り出せない。主に中高年で発症する生活習慣病である2型糖尿病とは区別されているが「不摂生しとったんちゃう?」といった心無い言葉に傷ついたのも1度や2度ではない。だから、これからを生きる子どもたちには同じ思いをして欲しくない。今でこそ病気に対する社会の理解も進んできたが、まだまだ十分とは言えず、医療者への恩返しや子どもたちの未来のためにもこうした啓発活動はライフワークとなっている。

甲子園のマウンド

講演では次のように語った。

「結果を残したか?と聞かれると、そうではないし、甲子園のファンは負ければ容赦ない。なかなか勝てずに、先発投手に求められる勝ち星ばかり見てしんどくなった時期もあった。そんな時、あのファンレターが届いた。現役時代から1型糖尿病の星になりたいと言ってきたけど、その言葉に負けない選手になろう、勝ちに繋がる投球をしようと、クオリティスタート(6回自責点3以内)やハイクオリティスタート(7回自責点2以内)を目指して、プラスのイメージを持つようになった。僕がビル・ガリクソン(1型糖尿病患者としてメジャーリーグや巨人で活躍)に救われたように、子ども達も岩田稔を見て、僕もできるかもしれないと思ってもらいたかった」

岩田氏は現役引退後に「1型糖尿病患者の人達のためのBigFamilyを作りたい」と株式会社Family Design Mの代表として、患者との交流会や野球大会を実施している。

今の野球界それぞれの戦い

講演の最後には、開幕を目前に控えるプロ野球について「今年は阪神のアレンパに、期待したいですね。オープン戦では苦戦しましたけど、岡田監督が引き締めてシーズンはしっかり戦ってくれるはず」と恩師や後輩達へのエールも忘れなかった。

メジャーリーグについても「大谷(翔平)選手はもちろん結果を出すだろうけど、同じ地区にダルビッシュ(有)投手や松井(裕樹)投手もいるし、なんと言ってもメジャーには後輩の藤浪晋太郎もいますから、日本人対決を楽しみにしたいですね」と、雪を頂いた大倉山を見渡すことができる控室で笑顔を見せた岩田氏。球春到来に沸く日本で、元WBC優勝メンバー岩田氏は1型糖尿病と戦うマウンドに今も立ち続けている。

■岩田稔
1983年10月31日生まれ。左投・左打 大阪桐蔭高~関西大を経て2005年大学生・社会人ドラフト希望枠で阪神に入団。2008年に自己最多の10勝(10敗)、2009年7月29日の横浜戦でプロ初完封。16年間で60勝82敗、防御率3.38の成績を残した。2009年WBCでは侍ジャパンのメンバーとして連覇に貢献。現在は1型糖尿病の患者との交流会や野球大会を実施するなど啓発活動を行っている。

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