「物流2024年問題」ドライバーの働き方改革で私たちの暮らしに影響は…スーパーは毎日の配送を減便 いちご農家「鮮度が心配」【news23】

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2024-04-03 16:04

新年度をむかえ、ドライバーの残業規制がスタートし、いわゆる「2024問題」への対応が迫られています。通販サイトZOZOTOWNは“ゆっくり配送”をスタート。いちご農家やトラックドライバーからは不安の声…我々の生活にも影響が出ています。

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「物流2024年問題」影響は?

小川彩佳キャスター:
私たちの生活にも様々な影響が出そうですね。

片山薫 記者:
もう出始めていると言えます。私は東京湾の近く、大田区の倉庫街にいるんですが、実はコンビニの駐車場なんです。

そして、多数の大型トラックが並んでいます。このトラックは全国から来て、あすの朝に荷物を受け取って全国に運ぶのですが、その前に運転手の皆さんが休憩をされているところです。

ドライバーの働き方について、4月から残業規制というものが設けられました。私たちの生活にも既に影響が出始めています。

日本初導入 ロボットが商品を仕分けする自動化システム

日本最大級のファッション通販サイト「ZOZOTOWN」。4月2日、全国に5つある物流拠点のうち、最大規模の拠点「ZOZOBASEつくば3」を訪ねました。

片山薫 記者
「ハンガーみたいになっているところがあります。そこに何が入っているんですか?」

ZOZO フルフィルメント本部 馬場祐行 本部長
「ポケットの中に商品が1点ずつ入っていて、投入したタイミングから、梱包のステーションまで流れていく」

この拠点では、ブランドから届いた商品をロボットが仕分けする最新鋭の自動化システムを導入しています。

Q.日本でもこういうのを導入したところはない?

ZOZO フルフィルメント本部 馬場祐行 本部長
日本初導入になるので、弊社だけの設備」

この拠点では、商品の入荷や保管をしていて、1時間に1万件の出荷能力を備えています。

4月2日から“ゆっくり配送”を試験導入、担当者は「配送回数が減らせる」

そんな中、運営会社のZOZOは、4月2日から22日までの期間で、新たなサービス「ゆっくり配送」を試験導入しました。

通常、注文日から4日以内に発送される商品を、注文日から「5日後から10日後まで」に余裕をもって発送する仕組みです。

これを選択した場合、買い物に使えるポイントを受け取ることができます。

背景にあるのは、新たに始まったドライバーの残業時間の規制強化、いわゆる「2024年問題」です。

運送各社は、ドライバー不足に対応するため、配送料の値上げに踏み切りました。

ZOZO フルフィルメント本部 馬場祐行 本部長
配送回数が減らせるというのが1つのメリット。配送費用も上がってきているので、そこに対して企業として、どう吸収していくかという取り組みの1つ」

この取り組みについて…

街の声
「あらかじめ『ゆっくり行く』と言ってくれるのが、『気長に待とう』という気持ちで待てる」

街の声
「なるべく早く届いてほしい」

街の声
「欲しいと思って買うから、すぐに届いてほしい」

「企業努力で乗り越えたい」 毎日の配送を週1~2回減らすスーパーも

特に影響が心配されるのが食品です。

福岡県大木町のいちご農園「おおきベリー」では3月29日、出荷のピークを迎えています。

ここでは、人気ブランドの「あまおう」を生産し、その約7割を関東や関西に出荷しています。

ですが…

おおきベリー 上原基揮 代表
「『あまおう』のこれまでのブランド価値が維持できるのか、非常に心配」

これまでは関東まで収穫後、3日以内で届けていましたが、今後は難しくなる恐れがあります。

おおきベリー 上原基揮 代表
「お届けする日数が延びるとなると、鮮度が一番心配になってくる。1日延びるだけでも味は全く違ってくる」

NX総合研究所が2022年に公表した調査では、農産品の輸送能力の32.5%が不足するという試算もあります。

都内のスーパー「ベニースーパー」でも試行錯誤が続いています。

ベニースーパー 赤津友弥 本部長
「発注間隔が空いてしまうと、棚に穴が開くというところは多少出てきている」

3月から生鮮食品以外、毎日行っていた配送を週1~2回減らして、増加する物流コストに対応しています。そのため、商品によっては欠品が出ることもあるそうです。

ベニースーパー 赤津友弥 本部長
「ここ2年、3年、お客様にインフレということで、商品価格を上げさせていただいた経緯があった。またさらにというのは、しにくいので会社の合理化や企業努力で乗り越えたい

スーパーの担当者によると、配送料の値上がりに加えて、ドライバー自体も不足していて、運送会社から配送の回数を減らすよう、提案されることもあるということです。

ベニースーパー 赤津友弥 本部長
「2023年以前の状態に戻ることは今後絶対にない。今の時代の状況にあわせて、さらなる(配送の)減便も予想される。その辺に対応できるような体制づくりをやっていきたい」

4月からの制度変更で“1日早く”収穫が必要、鮮度に懸念も

小川キャスター:
新しい物流のルールが始まることで様々な影響が出てくるわけですけれども、ドライバー、依頼主、荷主、そして消費者など、それぞれの立場での受け止めがあると思います。どんな受け止めの声が聞かれますか。

片山薫 記者:
荷主の方の取材をして思ったのは、これまでのスピード配送や毎日店舗に配送するのは、なかなか難しいと感じました。

そういう意味では、意識は少しずつ変わってきているとは感じます。まさに変わる直前というような感じでしょうか。

藤森祥平キャスター:

〈九州→東京 運送の流れの一例
これまで
・1日目朝 収穫・出荷(九州)
・1日目夜~朝、休憩(広島)
・2日目夜、到着(東京)

4月1日~
・前日に収穫(九州)
・1日目朝、出荷(九州)
・1日目夜、フェリーに乗船し休憩(北九州)
・2日目朝、フェリーを降りる(神戸)
・2日目夜、到着(東京)

私の手元に九州産のイチゴがあります。私たちの取材では、九州から東京に運ぶのに、例えばこれまでは、▼お昼に収穫をしてトラックに乗せて運び、その日の夜に広島に着いたらトラックの運転手さんは休憩をするそうです。翌朝になって東京に向けて届けて、その日の夜に到着する。収穫から2日目の夜に届く、というのが従来の流れだそうです。

しかし、4月1日から制度の変更によって、フェリーを使わなければいけなくなるそうです。長時間労働をしてはいけないということです。

▼あらかじめ前日などに収穫をして、別の日の朝に九州で出荷をします。その夜に北九州からフェリーに乗船して休憩します。翌朝に神戸で降り、同じく2日目の夜に届ける、という流れに変わります。

到着は同じですが、朝に出荷するということなので、(前日など)前の段階で収穫をしなければいけない。従来と比べると収穫からさらに1日かかって、消費者の元に届くということになります。

鮮度について、どう思うかですよね。

小川キャスター:
スーパーに行くと全国各地の新鮮なイチゴが同じような価格で並びますよね。それが当たり前だと思ってはいけない、ということですよね。

「1か月に支払う輸送コスト+100万円」 即日配送・無料配送を見直すときか

藤森キャスター:
イチゴを店頭に並べるスーパーマーケットにも大きな影響が出るそうで、実は輸送コストは3割以上も増える見込みだそうです。

スーパー アキダイ 秋葉弘道 社長
「1か月に支払う輸送コスト+100万円。価格転嫁しないよう輸送ルート効率化」

価格転嫁しないというのは、従業員の賃上げがさらに難しくなってくるという状況になります。いろんなことが変化する覚悟が消費者にも必要ですね。

東京大学准教授 斎藤幸平さん:
やはりインフレや人手不足で、当たり前のことが当たり前じゃなくなる時代になってきている。

こういう企業努力や新しい技術を投入するなどイノベーションも大事だと思うんですけど、私たちもどこかでこの間に慣れきった「過剰さ」を見直さなければいけないと思います。

即日配送や無料配送などによるたくさんの注文のしわ寄せが、結局は荷物を運んでくれる方たち(ドライバー)の長時間労働・低賃金労働に繋がってきた。やはり再配達の有料化、無料配送や即日配送をなくすなどを考えなければいけないときにきてますよね。

普及するオンラインショッピング、アメリカでは5年で200万円上げる企業も

小川キャスター:
そして、ドライバーの皆さんの健康・働く環境を守っていかなければならない。ただ、ドライバーの残業時間が減っていくことで勤務時間が短くなる。そうすると、給与も、という問題が出てくるわけですよね。

ドライバーの皆さんからは、どんな声が聞かれますか。

片山薫 記者:
この駐車場で複数のドライバーの方に聞いたんですが、怒りの声や悲痛の声が多かったです。働き方改革のはずなんですけれども、「労働環境が悪くなる一方だ」「給料が減ってしまう」という声が多く聞かれました。

実際は、これまで12~13時間かけていた仕事を、9時間でこなさなければいけない。一方、基本給は12~13万円だということです。対して残業代が多いようですが、この残業代が減るということなので、「年収300~400万を確保することすら、できなくなるのでは」という声が聞かれました。

そしてもう一つ、怒りの声が多かったです。「このルールを誰が作ったんだ」と。「全然、現場の声が聞けていないのでは」という声でした。

例えば、政治家が料亭でお刺身を食べますよね。「あれは誰が運んでいるのか、わかっているのか」と。「本当に現場を知るためには、俺のすぐ隣の助手席に座ってみろ」という怒りの声も聞かれました。

非常に政治に対する不信感、あるいはルールを決めることに対する不信感を感じられました。

私が感じたのは、これから値上げがありますよね。送料は200~300円上がる、10%上がるなどの話もあるんですが、本当に物流を維持するのであれば、やはり運送料なら1000円あげなければいけない。

それくらいで年収400~500万円のトラックドライバーが確保できるという環境作りをしない限り、この物流は維持できないのではないかと感じました。

東京大学准教授 斎藤幸平さん:
今のお話を聞くとやはり賃金が低すぎると思います。Amazonもそうですが、特に宅配便は増えてきただけではなく、コロナ禍でさらに増えて、そのしわ寄せがドライバーの方に行ってしまっているわけですよ。

ただ裏を返せば、オンラインショッピング自体はたくさん売れているわけなので、彼らは儲かっているわけです。それは今、アメリカなどでは結構ストライキが起きていて、UPSなどでは5年で200万円上げるなどの動きもあります。

やはり、こういうときの怒りを政治に向けるのもそうですが、ストライキなども本当は考えなければいけないときにきていると思います。

小川キャスター:
正当な対価を、ということですね。

藤森キャスター:
何とかしなくてはいけない問題が山積しています。

「みんなの声」は

NEWS DIGアプリでは『物流・運送業の「2024年問題」』などについて「みんなの声」を募集しました。

Q.物流「2024年問題」 最も心配していることは?
「運送料金の値上げ」…42.7%
「配送にかかる日数」…11.2%
「トラック運転手などの不足」…43.6%
「その他・わからない」…2.5%

※4月2日午後11時18分時点
※統計学的手法に基づく世論調査ではありません
※動画内で紹介したアンケートは3日午前8時で終了しました。

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