政府が掲げる「異次元の少子化対策」のための財源となる「子ども・子育て支援金」の年収別の負担額の試算が公表され、年収600万円で月1000円となることが明らかになりました。街の人からは賛否の声が上がっているほか、事業者の負担も増える事への懸念の声も出ています。
【写真を見る】年収600万円で月1000円 「子ども・子育て支援金」年収別の負担額の試算公表 街の声は? 事業者も“負担増”への懸念も【news23】
「思っていたより高い」“子ども・子育て支援金”年収400万円で月650円
30代女性 会社員
「負担は増えるなとは思いましたけれども、ちょっと高いな」
50代男性 サービス業
「思ってたよりはちょっと高いかなっていう。最初言われてた金額よりはちょっと高いのかな」
政府は9日、新たな少子化対策に対する“年収ごとの負担額”を初めて明らかにしました。
▼児童手当拡充
児童手当を高校生年代まで延長し、所得制限を撤廃。第三子以降、月3万円。
▼こども誰でも通園制度
就労要件を問わずに保育所などを時間単位で利用できる
▼出産手当
妊産婦に10万円相当の経済的支援
▼共働き・子育て支援
育休期間中の給与10割相当支援
岸田総理が「次元の異なる」と強調する少子化対策、その財源となる「子ども・子育て支援金」。
新たに医療保険料に上乗せして徴収する方式で、会社員や公務員などの月の負担額は年収400万円の人で650円、年収600万円の人では1000円などとなっています。
街の人たちが「高い」と感じたのには理由があります。
2月6日の衆院予算委で、岸田総理は「粗い試算」とした上で、子どもなどの扶養家族を含めたすべての医療保険加入者の概算として、「月平均500円弱」と負担額を説明していました。
その後、政府が扶養家族を除いた被保険者の平均負担額では「800円」になることを明らかにしたのは3月下旬になってからでした。
「どこまでいくのか」負担増の懸念と「もっと支援が欲しい」望む少子化対策
維新 音喜多駿 政調会長
「この子育て支援金、この率、負担額、これは上がっていく可能性ありますよね」
加藤鮎子 こども政策担当大臣
「法律のたてつけ上、可能性としてはあり得ます」
岸田総理
「こうした国会答弁を通じて、勝手に政府が負担率を上げるなどということはない」
将来の負担増の可能性をめぐる、加藤大臣の答弁も国民の“負担増”への懸念を高めました。
50代女性 主婦
「だんだん高くなるのが、どこまでいくのか」
「これだけを払って終わりじゃない。生きていく上のやつで全部(値段が)上がっているから」
30代女性 会社員(育休中)
「設備を整えるとか、保育園とか。待機児童も減らしてほしいな。独身時代に“徴収”って言われたら嫌でした」
「子ども・子育て支援金」の制度には賛成という声も…
60歳男性 会社員
「少子化が大きな問題になっているので、子どもをもっと持つ気持ちにさせるぐらいの支援というのは、かなり積極的にやるべきではないか。3000円とか4000円とか」
40代男性 製造業
「子どもを育てるのに必要になってくるので、もっといろんな方面から支援が欲しいなとは思いますね」
20代男性 大学院生
「裏金の話があると考えると、それが教育に充てられるのかな」
政府の説明が“ちぐはぐ” 当初の説明は「月平均500円弱」「実質負担ゼロ」
藤森祥平キャスター:
今回公表された「子ども・子育て支援金」の徴収額の試算です。
お互いに年収400万円の夫婦の場合、1人あたり月650年なので年間1万5600円の徴収になります。年収800万円の単身者ですと、月1350円なので年間1万6200円になる。このように高い収入になればなるほど、負担が大きくなるといういうことです。
皆さんの意見はさまざまありまして、「思っていたよりも高い」「もう少し増やしてもいいんじゃないかな」と、皆さん状況も違いますからね。「自分たちが子育てするときに将来支援してもらえるか心配」こんな声も出てきています。
小川彩佳キャスター:
世代間でも、子どもがいる・いないでも、感覚がまったく異なりそうですよね。
藤森キャスター:
そもそも、岸田総理は2月の衆院予算委で「加入者1人当たり月平均で500円弱の負担と見込んでいる」と発言しています。それから、「歳出改革と賃上げによって、実質的な負担を生じない」と“実質負担ゼロ”という表現も出ていました。
政府の説明がちぐはぐで、皆さんにはっきり伝わっているかどうか疑問です。
政治部・与党キャップ 中島哲平 記者:
この粗い試算で「月500円弱」と言っていたのは、あくまで子どもも含めた加入者全体の金額で、実際にその保険料を払う人の平均でいうと800円と言われています。
「平均」は何をとって平均なのかということで金額が変わってきます。政府というのはどうしても2つ数字があると、自分たちに都合のいい方の数字を紹介するところがあるので、このように金額が聞いていた額よりも増える人にとっては、やはり不満が高まってくるのだなと思います。
藤森キャスター:
それともう一つ、「実質的な負担は生じない」「実質負担ゼロ」という表現です。
中島記者:
あくまで岸田総理は「歳出改革と賃上げによって実現するんだ」という意気込みを実際に持っているので、こういうことに自信を持ってはいるんですけれども、本当に実現できるのかそこにやっぱり国民は不安を持っているんだなと思いますね。
小川キャスター:
実際に賃上げを実感できていない方も多くいらっしゃいますからね。
少子化に関しては本当に何とかしなければならない、子ども・子育てをしやすい社会を作っていかなければならないという思いを皆さんも共有するところだと思うんですけれども、その政策に関しての政府の説明・答弁で不信感が高まってしまっているという状況ですね。
小説家 真山仁さん:
賃上げして負担が上がるなら、賃上げしても何の意味もなくなるというのが正しい理解で、詭弁ですよね。
どう考えても増税にしか見えないし、税金ですから違うというわけですよね。防衛費の時もそうでしたけど、国民からお金の負担を増やす時ほど、政治家は「なぜこういうことが起きるのか」とちゃんと説明をしなければいけないんです。
「ごめんなさい、こういうことになってしまいました」と。「我々としては一生懸命やったけど、これだけ足りないのでぜひ国民の皆さんに理解をしてほしい」と。ただし、「我々はこれだけちゃんと改革もします」ということを全部具体的に説明して、正々堂々と話をしなきゃいけないのに、ごまかされている感がすごくありますよね。
「増税イメージを払拭したいのではないか」 政府の説明に納得?
藤森キャスター:
税金ではなく保険料の上乗せという形をとったことについて、加藤大臣は2日の衆院本会議で「急速な少子化・人口減少に歯止めをかけることができれば、医療保険制度の持続可能性を高める」と発言・対応をしています。
やっぱり、「増税」ではないんですね。
中島記者:
やっぱり政府としては、防衛増税の話が出たときに岸田総理自身「増税メガネ」と揶揄されるなどありましたし、増税イメージを払拭したいという思いがかなり強くありまして、それで所得税の減税などに政策をとるようになったと。
にも関わらず、今度はまた子育てで増税するのかとなると、ちぐはぐ感が出てしまうのでやっぱり増税には手を出したくない。
でも、やっぱり子育てをまだしていない方や、子育てが終わった方にも保険料はかかってくるので、そういう意味で社会全体として子育てを支援していくのであれば、やっぱり税金で対応するというのが筋なんじゃないかなというふうに思います。
小川キャスター:
増税の批判を避けるための手段でもあったということですか。そう考えると、もう岸田総理は逃げていらっしゃるのかなと。
中島記者:
岸田総理としては決して逃げているわけではなく、本当に賃上げを実行していくんだ、歳出改革をやっていくんだという強い思いがあるので、むしろ「なぜなかなか理解されないのだ」と思っているようなところがあるんですけれども、政治家はちゃんと丁寧な説明をして理解を求める。そして国民の不安を取り除くというのがやっぱり政治家だと思うので、そこは丁寧な説明というのをやっていってもらいたいと思います。
真山さん:
政治家が「これだけ頑張っているから」と、これを許しては通用しません。「頑張っているけれどもこういう状態があることを考えませんか」と。投資と言ってもいいくらい、「子育て支援金」は未来のために絶対に必要なもの。それを説明せず「僕はこんなに頑張っている、なぜ理解されないのだ」というのは、やっぱりしっかり説明してくれないと、どう考えても「逃げ口上じゃないんですか」としか言われないと思います。
保険料に上乗せで事業者負担は4000億円の見込み 「賃上げに逆行」
藤森キャスター:
もう一つ、懸念の声が上がっているのは、保険料の上乗せという形をとったので、個人だけではなく、企業の負担もかかってくる。会社のような事業主も個人と同じ額を支払うことになる。政府の試算で負担が4000億円と見込まれているそうです。
日本総研の西沢和彦理事によれば、「賃上げというけれど、会社の負担がこんなに膨らんだら、賃上げの流れは逆行するのではないか。賃金アップしづらくなるのではないか。それから保険料を払いたくないので、正規雇用から非正規雇用の転換に繋がってしまう恐れもある」とのことです。
真山さん:
結局、お金をたらい回しにして、いろんなところから徴収するんですけど、最後は多分、一般に働いてる人に回ってくるというわかりやすい構図ですよね。
だから、結果的には自分たち政治家が逃げると、国民みんなに迷惑がかかるってそろそろ気づいてほしいですね。
小川キャスター:
とにかくこの不信感を払拭する、そして子育て政策・少子化対策への期待感を高めるためにも真正面から逃げずに説明をしていただきたいですね。
みんなの声は
NEWS DIGアプリでは『子ども・子育て支援金』などについて「みんなの声」を募集しました。
Q. 「子ども・子育て支援金」負担どう思う?
「賛成」…5.2%
「やむを得ない」…22.4%
「反対」…68.3%
「その他・わからない」…4.1%
※4月9日午後11時20分時点
※統計学的手法に基づく世論調査ではありません
※動画内で紹介したアンケートは10日午前8時で終了しました。