「心筋症」は、突然死の可能性もある病気です。発症年齢が6~16歳までと幅広く、まだ若いからと言って油断できません。あらかじめ病気の概要を理解しておくと、いざというときの判断材料にもなります。愛猫の健康と長生きのため、飼い主のみなさんはぜひ一読してみてください。
心筋症とは何か?
猫の心臓は、構造的に人間のものとほとんど変わりません。右心房、右寝室、左心房、左心室(2心房2心室)、4つのスペースで成り立っています。それぞれを壁のように仕切るのが心筋(心臓の筋肉)です。
心筋は、伸縮を繰り返すことで、心臓内に血液を取り込み、同時に、ポンプのように全身へと送り出します。スムーズな血液の循環には欠かせないものです。
この心筋に異常が発生し、心臓が正常通りに機能しなくなると、「心筋症」と呼ばれます。突然死の危険性もある非常に重い病気です。
「心筋症」は、心筋の状態に合わせて、主に以下の3つに分類されます。
肥大型心筋症
心筋が肥大化したうえ、分厚くなり、左心室が狭くなる
拡張型心筋症
心筋が伸びきったゴムのようになり、左心室内に空洞ができる
拘束型心筋症
心筋が固くなり、左心室が狭くなる
心筋症でいちばん多いのは「肥大型心筋症」
猫の心筋症で最も多いのが「肥大型心筋症」です。実に全体の約6割を占めています。
そのうち、約80%が雄猫で、5歳~7歳の割合が高いのも特徴です。有病率約15%というデータが示す通り、健康そうに見えても、すでに患っているケースも珍しくありません。
「肥大型心筋症」は、左心室を仕切る壁(心筋)が肥大し、分厚くなることで、心室内のスペースが狭くなる状態です。結果的に、血液を取り込む・送り出す力が低下し、血液の循環が滞ります。
早期の段階では、症状はほとんどありません。呼吸が荒くなったり、歩きづらくなったり、動かなくなったり、具体的な症状が表れる頃には、病状がかなり悪化しています。
怖いのは、「動脈血栓塞栓症」という重大な合併症を引き起こすことです。血栓塞栓症は、心臓内にできた血栓(血の塊)が、血流に運ばれて、血管のあちこちで詰まる病気です。
とりわけ、動脈血栓塞栓症は後ろ足周辺の血管の狭くなったところで発生しやすく、症状としては、突然の後ろ足麻痺と激痛を伴います。命に関わる病気なので迅速な対応が必要です。
好発品種(かかりやすい品種)として、メインクーン、ラグドール、アメリカンショートヘア、ペルシャなどが挙げられますが、どの猫種でも発生します。
原因と治療法、予防策について
残念なことに、「肥大型心筋症」の原因はまだ十分に解明されていません。根本的な治療が難しく、対処療法しかないのが現状です。
病気のステージに合わせて、抗血栓薬をはじめ、血管拡張薬、利尿薬、強心薬などの薬剤を投与していきます。目的はあくまで症状を和らげ、進行を遅らせることです。
直接的な予防策はありませんが、通常の定期検診に加え、心臓の超音波検査や血液検査を取り入れると、早期発見につながる場合もあります。
そして極めて大事なのは、日頃からバランスの良い食事と適度な運動を心がけ、健康を維持することです。心臓に負担をかけないよう、肥満には十分に注意しましょう。
まとめ
猫の心筋症には、大きく分けて、「肥大型心筋症」「拡張型心筋症」「拘束型心筋症」の3つがあります。全体の約6割を占めるのが「肥大型心筋症」です。
最初の頃はほとんど無症状で、病状が目立つようになると、すでに手遅れ状態、ということもあります。原因不明なので、今のところ確実に治す方法も見つかっていません。対処療法が中心になります。
予兆を見逃さないためにも、定期検診プラス心臓の超音波検査、血液検査もやっておきたいところです。毎日、愛猫の健康状態をチェックし、異変を感じたら、動物病院に相談してみてください。
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