今回は、さいたま市にある医療的ケア児と家族の支援拠点『すまいるスポットさいたま』を紹介しました。
【写真を見る】お母さんの時間を作りたい…さいたま市にある医療的ケア児と家族の支援拠点
「医療的ケア児」とは、人工呼吸器による呼吸の管理や痰の吸引などの医療的なケアが日常的に必要な子どものことで、厚生労働省によりますと全国でおよそ2万人いるとされています。
親も医療的ケア児もリラックスできる場所
今年1月に本格オープンした『すまいるスポットさいたま』は、JR北与野駅近くにあった保育園の跡地を活用したもので、平日朝9時から夕方4時まで開放しています。
この『すまいるスポットさいたま』が作られた目的について施設長の酒井基容子さんは次のように話します。
すまいるスポットさいたま施設長・酒井基容子さん
「元々の目的は利用者が遊びに来るための施設でした。利用するお母さんもお子さんもリラックスして少し気持ちがほぐれたところで、お母さんたちが普段抱えている問題について見聞きすることもあり、そうした相談の業務も行っています。ほかには一時預かりを行っています。医療的ケア児を抱える親御さんたち、特にお母さんは自分の時間というのがなかなか持てないんですね。『ちょっとお買い物をしたい。ちょっと友達とお茶したい』という話もあり、そうしたお母さんたちの時間を作りたい、という目的もあります」
看護師と保育士が常駐。様々な相談ができる!
看護師・水野美穂さん
「誰にどのように相談をすれば、子どものリハビリとかを受けられるようになるのか?など、医療従事者とのやり取りの仕方が難しいっていうお母さんが多いようで、そうした相談を受けたりとか。医療的な装置の問題についての相談もあります。あとは、お母さんたちの話が弾んでいる時に吸引のお声掛けをしています」
『すまいるスポットさいたま』なら痰の吸引が堂々とできる
取材した日は、親子2組が遊びに来ていました。
肺と気管に病気があり、日常的に痰の吸引が必要な1歳の医療的ケア児の母親は施設を高く評価します。
1歳の医療的ケア児を育てる母親
「数回しか来てないんですけど、看護師さんたちや保育士さんたちがすごく丁寧に親切に接してくれて、子どものことをすごいよく覚えてくださったりなど親しみやすいと思います。普通の児童館に行こうと思えば行けるのかもしれないんですけれど、痰の吸引があったりとか、健常児の子よりもちょっと注意して見ておかなくちゃいけないっていうことを考えると、こちらだと看護師さんもいて、痰の吸引も堂々とできるっていう安心感がありますね」
医療的ケア児の受け入れを増やすために看護師らと交流
「痰の吸引が堂々とできる」ということは、裏を返せば医療的ケア児を受け入れる施設は限られているということになります。
そこで『すまいるスポットさいたま』では、受け入れ施設が少ない現状を解消できるように保育園で働く人や看護師らと交流を図っています。
そのうちの1つ「看護師との交流」について、施設長の酒井さんは次のように説明します。
すまいるスポットさいたま施設長・酒井基容子さん
「看護師さんたちが医療機関をお辞めになって、医療的ケアのお子さんたちに対応したいということで保育園に勤めてくれる。そして、その保育園が『医療的ケア児を受け入れていきます』となった時に職業の違いや専門職の違いということで、かみ合わないというところがあったりします。そこで、他の保育園に勤めている医療的ケア児を受けている看護師さんたちと一緒にその問題について意見交換をしようじゃないかということで看護師交流会を行っています。おそらく、いずれは中で働いている人間も慣れていくっていう形が出来上がってくれば、医療依存度の高いお子さんたちも保育園の方に入園可能かなって。私自身はそれを1つの目標としています」
さいたま市内には今年4月の時点で医療的ケア児は47人います。
『すまいるスポットさいたま』では、医療的ケア児の親同士がコミュニケーションを取っている姿も見られ、緊張感がほぐれたような表情で過ごす姿が印象に残りました。
ここを中心として、医療的ケア児とその家族が安心して過ごせるような施設が増えていくことを望みます。
なお、『すまいるスポットさいたま』は、平日朝9時から夕方4時まで開放されていて、医療的ケアのある子もない子も未就学であれば遊ぶことができます。
また、一時預かりはさいたま市内に在住している1歳以上の医療的ケア児が対象となっていて、いずれの場合も予約が必要です。
詳しくは『すまいるスポットさいたま』で検索してください。
(TBSラジオ「人権TODAY」担当:宮内悠也)