「吸い込まれるように深いところに…」川に潜む“3つの危険”と海水浴場でも発生する「離岸流」の対処法を専門家に聞く【ひるおび】

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2024-08-09 15:55
「吸い込まれるように深いところに…」川に潜む“3つの危険”と海水浴場でも発生する「離岸流」の対処法を専門家に聞く【ひるおび】

各地で相次ぐ水難事故。
海や川に入る前に知っておきたい危険ポイントや対処法を、水難学会理事の斎藤秀俊氏に聞きました。

【写真を見る】「吸い込まれるように深いところに…」川に潜む“3つの危険”と海水浴場でも発生する「離岸流」の対処法を専門家に聞く【ひるおび】

発生最多は「海」 中学生以下は「川」での事故が多発

警察庁発表の資料によると、2023年の水難事故による死者・行方不明者は743人にのぼっています。
発生場所は
海・・・49.5%
河川・・・33.4%
用水路・・・10.1%
と海での事故が多く起きていますが、年代別に見ると中学生以下では河川での事故が59.3%と最も多くなっています。

水難学会理事 斎藤秀俊氏:
子どもの事故が川で多いというのは、住んでいるところから近い水辺で、事故が起こりやすいということなんです。
逆を言うと、近くの川は自由に出入りができる格好の遊び場とも言えるんですね。

川の危険〔1〕急な深み

斎藤氏によると、川には3つの危険が潜むといいます。

ひとつめは「急な深み」です。
川岸近くは浅くても、水流の影響などから急に深くなっている場所があります。

弁護士 八代英輝:
私達ぐらいの背の高さでもあっという間に深くなるという経験はありますよね。

水難学会理事 斎藤秀俊氏:
歩いたまま川に吸い込まれるようにして深いところに入ってしまう。
よく「川で泳いでいて溺れる」と言われるんですが、「歩いて深みにはまって溺れる」というのが川の事故の現実なんです。

川底が砂利の場合、斜面が崩れて足場が悪くなり踏ん張れずにどんどん溺れてしまうという状況に。
水の屈折で浅く見えていても実際は3割程度深い場所もあるので注意が必要です。

特に危険なのが、「中洲の下流」部分。
中洲で川の流れが分かれて合流する地点は、水流がぶつかって急激に深くなっています。知らずに入ってしまい溺れてしまう事故が多く起きています。

水難学会理事 斎藤秀俊氏:
中洲の両脇を流れている川が合流するということは、そこで水の量が増えることになる。
増えた水を流すためには深くないといけないんですね。
例えばこの合流地点に歩いて入ってしまって、「深い」と思って中州の方に戻ろうとしても流れがあるから戻れない。ますます深いところに流されてしまうということもあります。

川の危険〔2〕川の流れ

川の危険の2つめは、「川の流れ」です。
「深さ」と「流れの速さ」には関係があります。
水深が「浅い」ところは流れが速く、「深い」ところは川の流れが遅くなっています。
流れがゆっくりだから大丈夫だと思い、深みにはまってしまい事故が起きてしまうのです。

水難学会理事 斎藤秀俊氏:
流れが緩やかなところはみんな安心してしまうんですね。
「流れがゆっくり」ということは「深い」ということをぜひとも頭の中に入れていただければと思います。

川の危険〔3〕急な増水

川に潜む危険の3つめは、「急な増水」です。
河川の上流で雨が降ると、下流の水位が急激に上がり危険です。

気象予報士 森朗氏:
頭上が晴れていても上流で雨が降っていると川は増水しますから、天気予報ももちろん事前にご覧いただきたいし、スマホのアプリなどでも雨雲がわかるようになっていますから利用して用心していただきたいです。

弁護士 八代英輝:
例えばキャンプなどで水辺にいるとしたら、自分が今いるところの天気予報だけでなく、上流の天気予報や雨雲レーダーを見たほうが良いんですね。

気象予報士 森朗氏:
山には尾根がありますから、雲が見えないんですよ。
上流と言われても山が見えなかったりするので、データを頼りにしていただくのが一番いいと思います。

水量が元に戻っても、川底がえぐられて深さ・地形が変わっている可能性があります。
斎藤氏は、「きのうまでは大丈夫でも今日は違うと思うことが大切」だと言います。

川に入る際にはライフジャケットを着用し、慎重に一歩ずつ確認しながら進むようにしてください。

海での危険「離岸流」

川だけでなく、海でも注意が必要です。
海水浴などで注意すべきなのが「離岸流」。
離岸流は岸から沖へ向かって流れる海水の流れで、流速は毎秒2mに達する場合もあります。
毎秒2mは、オリンピック競泳で自由形金メダリストの泳ぐ速さとほぼ同じ泳いで流れから逃れることは不可能です。
長さは約100m〜200m、幅が10m~30mほどあります。

斎藤氏は「離岸流は特有な地形で発生するという場合もあるし、普段は起こりづらい海水浴場でも突然発生する場合がある」と注意をうながします。

万一、離岸流に流されてしまった場合は慌てて泳がずにれに身を任せることが大切です。
離岸流の流れが弱くなったら「岸と平行に泳ぐ」とされています。

水難学会理事 斎藤秀俊氏:
実は離岸流は、我々専門家でも見た目ではわからないんです。
岸と平行に泳ぐのは相当泳力のある人の話であって、一般の方は慌てず流れに身を任せる。
海水浴場で泳いでいればライフガードがちゃんと見ていて助けに来てくれます。慌てずに助けが来るのを待っていていただければと思います。

離岸流をAIで検知

離岸流を早期に発見しようという取り組みもあります。
AIが離岸流を自動検知するもので、鎌倉市の由比ガ浜海水浴場で実際に行われています。

浜辺に設置されたWebカメラが海を監視し、離岸流が発生すると検知してライフセーバーのスマートウォッチやモニターなどに通知を行います。
通知が来たら、ライフセーバーが遊泳の可否を判断するというものです。

離岸流検知AIのシステムを開発した中央大学研究開発機構の石川仁憲氏によると、
「そこだけ波が砕けにくい」「海面に乱れ模様が現れている」など、離岸流の特徴を捉えた60万枚を超えるデータをAIに学ばせて離岸流を検知していて、検知的中率は約8割。全国5か所で活用中です。

弁護士 八代英樹:
いろいろな技術を使って事故を防ぐ努力もしてくださっていますが、私達自身も事故を起こさないように気をつける必要がありますね。

水難事故を防ぐ6つのポイント

〔1〕事前に注意報・波の高さなどの情報を得る
〔2〕周囲に海や川に行くことを周知しておく
〔3〕ライフジャケットなどの装備を用意
〔4〕すぐに入らずに5分~10分観察する
〔5〕ストレッチを行う
〔6〕子どもと行くときは一緒に入る

(ひるおび 2024年8月7日放送より)

×