受けた皮膚がん手術は90回以上…「これが命の扱いとして平等でしょうか」イギリスにも存在する“ヒバクシャ”の訴え【科学が変えた戦争】

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2024-08-10 06:00
受けた皮膚がん手術は90回以上…「これが命の扱いとして平等でしょうか」イギリスにも存在する“ヒバクシャ”の訴え【科学が変えた戦争】

科学が変えた戦争、その象徴的な兵器は核だ。
世界で初めて原爆が投下され、推計14万人が犠牲となった広島。長崎では推計7万人以上が犠牲となった。

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一方、アメリカ・ソ連に次ぐ核保有国となったイギリスでは、開発の過程で「人体実験」ともいえるようなことが行われていた。

天才科学者の理論が後にもたらした「大量の犠牲」

1905年、物理学者のアインシュタインが発表した「相対性理論」。

40年後、他の科学者たちが、その核分裂反応のエネルギーを利用し、原子爆弾を開発。1945年8月6日、世界で初めて広島に投下された。

広島市の「原爆被爆者 動態調査事業報告書」によると、6日のうちに、5万人以上が亡くなったという。

その凄惨な光景が、目に焼きついた人がいる。

話を聞いたのは、八木義彦さん(90)。八木さんは11歳の時、爆心地からわずか1.5キロに位置する国民学校の校舎で被爆した。

「ピカッと光ったのはわかりました。光ったら、もう潰れてるから。2階の屋根がもう1階くらいに潰れてました。それでそこから校庭に出て、校庭の中にはもう息をしている子どもはほとんどいない、丸焼けですよね。一瞬ですよ、瞬きする間です」と八木さんは証言する。

九死に一生を得た八木さんは、家族の安否を確かめるため、自宅に向かったが…

八木さん
「家に戻ったら燃えていました。ほとんどの家が火がついていた。痕跡は何にもない。家族5人とも何もない。骨のひとかけらもない」

爆心地から2キロ以内は、ほぼ全焼。八木さんの家もまた、激しい炎で焼き尽くされた。

広島の原爆で命を落とした人は、1945年末までに、推計14万人にも上る。

”ヒバクシャ”はイギリスにも…生涯続く苦しみ

たった一発で、多くの犠牲者を生む核兵器。戦後、世界はその開発に突き進む。

1949年には、ソ連が原子爆弾の実験に成功。その3年後、アメリカが水爆の開発に成功した。

米ソの核開発が過熱するなか、3番目に核保有国となったのがイギリスだ。イギリスは、原爆に続き、水爆の実験にも突き進んだ。

その過程で、生涯続く苦しみを負った人たちがいる。

今回JNNの取材に応じたのは、イギリス・ロンドン近郊に住む、退役軍人のブライアン・アンサンクさん(86)。 

アンサンクさんは、1950年代にイギリスが南太平洋で行った核実験「グラップル作戦」に参加。
イギリス軍は1967年末までに、核実験に兵士2万2000人以上を動員していた。

当時19歳だったアンサンクさんは、詳しい説明もないまま、海辺に座らされたという。

「他に類を見ないほど明るく白い閃光でした。骨や腱、血管が、目に押し付けた握りこぶしを通して、レントゲン写真のように全て透けて見えました」とアンサンクさんは語る。

2度の水爆実験を経験したアンサンクさん。帰国後、身体に異変が起きた。

最初は、歯ぐきからの大量出血。20代でほぼ全ての歯が抜け落ちたのだ。さらに、体中には無数の傷跡が…

受けた皮膚がんの手術は、90回以上になると話す。

何のために核実験に参加させられたのか…アンサンクさんは、人体実験だったのではないかと考えている。

「私たちは放射線を浴びた空気を吸い、水を飲み、魚を食べました。科学者はネズミなどを使って実験をします。私たちは同じように実験台にされたのです。これが命の扱いとして平等でしょうか。そうは思いません。私たちは皆、苦しんでいます」

アンサンクさんが参加したのは「人体実験」だったのか

イギリス政府は「人体実験ではない」としているが、当時の国防省の公文書にはこうある。

「軍は、さまざまな種類の爆発が人に及ぼす詳しい影響を、把握しなければならない」

アンサンクさんは、国に当時の医療記録の開示と補償を求めている。

「真実を知りたいのです。私たちに何が起きたのか秘密にされてきました。科学者たちが隠蔽してきたのです」

イギリス政府は、医療記録の開示は可能な限り行っているとしつつ、核実験との因果関係には、否定的な見解を示している。

多くの命を奪い、生き残った人も苦しめる核兵器。その開発は、いまも続いている。

近年開発が進む「使える核」 そのリスクは

近年進んでいるのが、いわゆる「使える核」の開発だ。

アメリカが開発する核爆弾「B-61」は、「小型核」とも言われ、威力を段階的に調整し、標的をピンポイントで攻撃できるとされる。

一方、ロシアが開発したのが、核弾頭が搭載可能なグライダー弾頭「アバンガルド」。ジグザグに滑空し、ミサイル防衛網をかわすことができるとしている。

長崎大学・鈴木達治郎教授は、こうした核開発競争に警鐘を鳴らす。

「精度が良くて、しかも小型になってミサイル防衛をかわしていくとなると、先制攻撃がしやすくなる。通常戦争の延長線上で、核兵器が使われてしまう恐れがある

79年前から現在へ。核の脅威は、かたちを変えながら、今も存在している。

(TBSテレビ「つなぐ、つながるSP 科学が変えた戦争 1945→2024」8月11日放送より)

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