ローマにある猫のシェルター施設は、なんと「神殿遺跡」上にあります。1920年代末からここに住み着いている猫を、地元の女性たちが世話し始めたのがきっかけです。いまでは多くの猫が保護され、観光名所としても人気のスポットになっています。
ローマ中心にある神殿の遺跡
イタリアのローマにある、猫たちのシェルター「Torre Argentina Cat Sanctuary」をご紹介しましょう。大都市ローマの真っただ中にあり、数多くの野良猫たちの住まいになっている場所です。
トッレ・アルジェンティーナ広場に位置しており、ここには歴史的なローマ神殿の遺跡が4つも残っています。有名なジュリアス・シーザーが紀元前44年に殺害されたのも、まさにこの場所です。
そんな神殿の一角を土台に設けられたのが、このシェルター施設です。ここに住む猫はすべて去勢・避妊手術を済ませており、ワクチンも接種されて、きちんと世話をされています。
遺跡に住み着いた猫たち
この遺跡は、1920年代に建物を解体中の作業員が「幸運の女神像の頭部」を発見したことから、その存在が明らかになりました。
遺跡は道路面から6メートルほど下に位置しています。当時土地の所有者は計画通り解体することを望みましたが、国は遺跡として保存することを主張し、数年の間は論争が続きました。
同時に進められていた遺跡の発掘は1920年代後半には完了し、その直後に野良猫たちが住みつくようになったのです。すると地元の女性たちが自主的に猫に餌をあげるようになりました。
こうした状態が1990年代まで続き、やがてここが正式に猫のシェルター「Torre Argentina Cat Sanctuary」として設立されることになりました。そのころから観光客も次々に訪れるようになったのです。
創設者であるSilvia Vivianiさんと Lia Dequelさんは、猫たちの経費をまかなうための寄付を観光客によびかけたりもしました。人々は熱心に応じてくれて、ボランティアを申し出る人まであらわれたのです。そうしたボランティアが募金活動に参加するようになると、寄付金はどんどん増え始めました。
帝国拡大とともに、猫は欧州各地へ
2010年代初め、このシェルターが文化財保護区に位置していることを理由に考古学者たちが施設の移転を求めたことで、ふたたび論争が起こりました。
たしかにここは、ローマ共和国時代に建築された4つの神殿からなる、考古学上も非常に重要な歴史的遺跡です。神殿のほか、元老院の会談が行われたPompey教皇庁の遺跡もあります。
こうした重要な遺跡で猫たちが生活しているのは、因縁深いことといえます。というのも、ローマ帝国が占領したエジプトでは、猫が社会の中心的な存在となっていたからです。猫は紀元前30年にローマに渡ってきたと考えられています。その後帝国の領土拡大とともに猫はヨーロッパ各地に広まり、ネズミ退治のために猫を船に乗せた貿易商たちが地中海周辺の港湾都市へも猫を持ち込んだのです。
あなたもローマを訪れる機会があれば、ぜひこのユニークな「遺跡シェルター」にぜひお出かけください。歴史と猫の魅力に、しばし時を忘れること間違いありません。
出典:The Famous Cat Sanctuary in Rome: Torre Argentina
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