現役時代はスポットライトを浴びるスポーツ選手ですが、引退した後のセカンドキャリアに不安を感じる選手も少なくありません。どうすればよいのか、取材しました。
【写真を見る】「パソコンをつけるところから始まった」元プロ野球選手・寺島成輝さんが語った現役引退後の苦悩 アスリートのセカンドキャリア問題【news23】
16年ヤクルトドラ1→戦力外「野球界しか知らなくて…」
――現役引退されてからどれぐらい経つ?
「今、約2年ぐらいですね」
――どうですか、久しぶりのキャッチボールですが
「楽しいですね。やっぱり」
寺島成輝さん、26歳。元プロ野球選手です。
元プロ野球選手 寺島成輝さん
「プロに入って結果出せるだろうと、通用するだろうと思ってましたね」
高校時代は甲子園で活躍し、2016年、東京ヤクルトスワローズにドラフト1位で入団。“未来のエース候補”として期待される存在でした。しかし…
寺島成輝さん
「もう全然レベルが違うなって、怖いもの知らずだったんだと思います」
――戦力外通告を受ける不安は?
「ありますよね、ぶっちゃけ。ぶっちゃけというか全然あります。ああ、次俺かなとか、球場に行こうとした時に電話かかってくるわけですよ。『あ、来たか』と」
2022年、24歳で現役を引退しました。7歳で始めた野球。人生のほとんどの時間を野球に捧げてきました。
寺島成輝さん
「野球界しか知らなくて、他の会社がどんなことしてるとか、どういうお仕事があるかっていうのを、触れてこなかったっていう感じですかね。聞いても分からなかった、というのが正しいかもしれないですけど」
引退からおよそ半年、会社員としての第二の人生が始まりましたが…
「エクセルって?」スポーツ一筋→会社員 給料は約3分の1に
寺島成輝さん
「まず人材紹介の会社に入らせていただきましたね。全部やっぱりやったことないことだらけで、本当にお恥ずかしい話、パソコンをつけるところから始まるというような。タイピングを覚える、だったりとかから始まったんですけど。エクセルの数字を管理するとか、『エクセルって?』ぐらいの感覚だったんですよ」
一般社会で働くこと。驚きの連続でした。
寺島成輝さん
「業務の多さといただく金額のギャップっていうのは、最初はそこは困ったというか、驚いたというか。(給料は現役時代の)3分の1ぐらいじゃないですか」
その後、人材紹介会社をわずか4か月で退社しました。
寺島成輝さん
「社会に触れてこなかったっていうのもあって、スポーツだけやっておけばいいわけじゃないっていうのは、僕は辞めてから考えたんですけど。もっと早めからしっかりと考えておくってことは、すごく自分の人生にとってもプラスなんじゃないかなと思います」
多くのアスリートが不安を感じているセカンドキャリア。その背景について専門家は…
「採用枠かなり厳しい」アスリート引退後の受け皿が飽和
アスリートキャリアサポート事業ディレクター 山本大輔さん
「引退後の受け皿みたいなところが結構、飽和状態になっていて採用枠がかなり厳しくなっている」
さらにコロナ禍も追い打ちをかけたといいます。チームの収益が減ったことで、引退する選手が増えました。
山本大輔さん
「別の角度のキャリアの方向を作っていかないと、単純に引退したから、コーチになれるとか、解説の仕事があるだろうというふうには、なかなかいかなくなっている部分もあるかなと」
現役時代から引退後のキャリアを考え、行動していたアスリートがいます。
「ロッカールームに教材持ち込み」現役中から勉強
池田駿さん。彼も元プロ野球選手です。現役時代、野球に打ち込むなかで、プロの厳しさを目の当たりにしてきました。
池田駿さん
「たくさん戦力外になっていく選手を見てきて、仕事を探すの困っていたりだとか、次何しようって言って路頭に迷ってる方とかもたくさん見てきたので、終わってから始めるのはちょっと遅すぎるなと。」
田さんは元々、数学に興味があったことから公認会計士を志し、現役中から勉強を始めます。
池田駿さん
「球場の選手のロッカールームに教材を持ち込んで、空いてる時間とかはちょっと勉強したりして」
しかし、周りの選手からはこんな声も…
池田駿さん
「『選手ロッカーで勉強するというのは、野球に集中してないというふうにも思われるし、周りにも悪影響を与えかねないから、もうちょっと野球に集中したらどう』みたいな感じで言ってくる方もちらほらといらっしゃる感じでしたかね」
引退後、猛勉強の末「公認会計士」に
その後、公認会計士を目指すため28歳の時に現役を引退。猛勉強の末、昨年、試験に合格しました。現在は、公認会計士の資格スクールで講師を務めています。
受講生との面談では、どう勉強を進めるべきかアドバイスします。
池田駿さん
「基礎的な力はすでについてるはずだから、あとは問題演習増やしていってってところではあると思うね。」
受講生
「論文の対策っていうのは」
池田駿さん
「企業と監査に関しては今はやらなくてもいいと思う。」
――前の職業を知ってますか。
受講生
「プロ野球選手です」
池田駿さん
「面白い子だと、ここにボール持ってくるんです。ボール持ってきて、あれってどうやって投げるんですか?球種どうやって投げるんですかみたいな」
ーーアスリートが現役時代からできることは何ですか?
池田駿さん
「野球選手って別に24時間365日野球してるわけじゃないんで。自分がもし何か興味があるものがあったんだとしたら、別にその5分、10分使って、そのことについて調べるだけでも全然違うと思うので。
いつも周りに自分の興味があるものが転がっているわけじゃないんで、自分からとにかく探しに行くっていうことはすごく大事だと」
アスリート向け就活セミナーで見えた“ある傾向”
アスリート向けに就職セミナーを行う会社があります。
エイジェックスポーツマネジメント 小池康之さん
「非常に初歩的な最初の入りのところから教える場合もありますね。名刺の渡し方とかですね、履歴書作成とか」
引退後、どんな職に就きたいか。こんな傾向があるそうです。
小池康之さん
「やりたいことっていうのはやっぱり基本はどこまでいってもスポーツを基本として考えるっていうところでは、ある一方では非常に前向きなんですけども、ある一方では職種とか業種を狭めてしまってるっていう問題はあると思いますね。
スポーツしかやってこなかったっていうところではないんだよと。スポーツをやってきたんだからこういうことができるんだよ、という前向きな言葉は教えてますね」
元プロ野球選手の寺島さん 引退後に見た「知らなかった世界」
元プロ野球選手の寺島さん。2024年、新たな仕事を始めました。
寺島成輝さん
「主にDXコンサルティングの業務を行っています。今は野球から離れて、知らなかった世界をたくさん見させていただいてるので、まずはそこでできるようになること」
いま、現役アスリートに伝えたいことは―
寺島成輝さん
「まずアスリート人生を今過ごしているならば、まず前提、今のスポーツに集中することは大事だと思います。ただやはり、誰しもがプレーヤーとしての終わり、寿命が来ると思ってます。なので、やはりその先を考えることっていうのは何も悪いことではなく、自分にとってすごくプラスになることだという風に思ってほしいなとは僕は思いますね。」