シリーズ「現場から、」です。防衛力の南西シフトが進む中、武力攻撃が予測される事態に備え、沖縄県・石垣島では、住民の避難計画の策定が進められています。沖縄戦の教訓から国民保護に基づく住民避難を考えます。
【動画】「自衛隊の住民避難」どうなる?対馬丸事件から80年「国民保護」を問う【現場から、】
沖縄県那覇市で行われた対馬丸事件の犠牲者を悼む慰霊祭。1944年8月、疎開船・対馬丸は、アメリカ軍に撃沈されました。1400人あまりの犠牲者のほとんどが、「戦闘の足手まといになる」として集団疎開させられた子どもや高齢者たちでした。
対馬丸は旧日本軍が兵員輸送に使っていた船で、疎開する際には軍艦2隻が護衛につくなど、軍人と民間人を分ける「軍民分離」が徹底されていませんでした。
近年、防衛力強化のもと、沖縄県内の各地で部隊配備を進める自衛隊。
おととし閣議決定された安保関連3文書の一つ「国家防衛戦略」には…
「自衛隊は、強化された機動展開能力を住民避難に活用するなど、国民保護の任務を実施していく。」
国際人道法上、「軍民分離の原則」があるなか、自衛隊の住民避難への関与について、いまだ議論が深まっていないと専門家は指摘します。
日本大学 危機管理学部 中林啓修准教授
「どうしても自衛隊に頼らなければ避難させられない人たち、守れない人たちが出たときに、彼ら(自衛隊)にそこをお願いしていく。じゃあ、それは何で、いつなのか、まだ突き詰めて考えられていない。少し危なっかしくは感じている」
記者
「石垣港です。政府は今年4月、この石垣港を『特定利用港湾』に指定しました。有事に備え、平時から自衛隊や海上保安庁が円滑に施設を利用できるようになります」
住民の島外避難の拠点となる石垣港。石垣市は、住民およそ5万人を6日間で福岡県などへ避難させる計画を策定しています。
石垣市民(石垣市民会館 今月1日)
「(自衛隊や米軍の)部隊派遣と住民避難が、かち合うという問題は考慮されているか」
石垣市 中山義隆市長
「民間の航空機・船舶を利用しての避難ということ。部隊展開が始まるところで避難し始めることはない」
石垣市民
「本当に何か起きる前に全島避難させて、この島を空にして、それを使いだけではないか」
日本大学 危機管理学部 中林啓修准教授
「軍事優先のなかで住民避難を考えるのではない。外交政策で事態を未然に防止する。大きな見取り図のなかで、(住民避難を)議論することが大事」
万が一の備えとして、議論の重要性が高まっている国民保護。沖縄戦の教訓は徹底されるのか、注視しなくてはなりません。