「猫と人間と同じ病気になる」と言いますが、「甲状腺機能亢進症」もそのひとつ。そこで今回は、シニア猫に多い「甲状腺機能亢進症」の注意すべき症状から治療法に至るまで、徹底解説いたします!
シニア猫に多い「甲状腺機能亢進症」の症状
代謝に関するホルモンを分泌する甲状腺は、喉仏付近にある小さな臓器です。
原因はまだまだ不明な点が多いですが、甲状腺ホルモンが過剰に放出される「甲状腺機能亢進症」は高齢猫に好発する病気と言われています。アメリカでは、10歳以上の約10%の猫にこの病気があるとされ、警戒されています。
猫が甲状腺機能亢進症になると、どのような症状があらわれるのでしょうか。
そこで今回は、シニア猫に多い「甲状腺機能亢進症」の代表的な症状や治療法、早期発見へと導く注意すべきポイントについて詳しく解説いたします。
よく食べるのに痩せていく
「甲状腺機能亢進症」の症状のひとつとして、『代謝が過剰にアップする』という特徴があります。そのため、食べても食べても痩せていく、という症状が挙げられます。
一見食欲があるように思えるので、年齢の割に食がよく健康的だと誤解してしまうでしょう。
しかし実際には、食事から得たエネルギーがあっという間に消費されているので、外見としては痩せてしまうのです。
よく鳴いて活発になる(攻撃性が上がる)
まるで血気盛んな若い猫のように活発になるのもこの病気の特徴です。
『活動的』を通り越して、もはや攻撃性が増すという点が注意すべきポイントでしょう。興奮気味でよく鳴く、という行動も特徴的です。
これまでの愛猫のお喋りとは明らかに異なる異常性や、怒りっぽい印象が目立つようになった場合は、体調不良の可能性も視野に入れてみてください。
多飲多尿
ガバガバと水を飲んでは大量のおしっこをする、いわゆる『多飲多尿』もまた、この病と密接な関係があります。
というのも、この病気の合併症として「腎不全」があり、腎機能が低下すると多飲多尿の症状があらわれるからです。
呼吸状態が悪くなる
「甲状腺機能亢進症」の最も恐ろしい合併症として、「心筋症」を発症することがあります。
こうなってしまうと、肺水腫や胸水という症状を呈することから、猫が苦しそうな息遣いをするようになってしまいます。
血圧も上がりやすい条件が揃っていることから、非常に危険なサインです。
治療法は『食事』・『投薬』・『手術』
原因こそはっきりしていない部分が多いものの、この病気のリスクとして「ヨウ素」という物質が関与していることがわかっています。
そこで甲状腺機能亢進症の診断がついた場合は、ヨウ素を含まない療法食への切り替えが、第1選択の治療法になります。そこに並行するように、投薬治療も有効とされています。
ただ一筋縄ではいかないのが治療です。療法食は味が好まれなければ食べてもらえず、投薬も飲み薬が苦手な猫は苦戦することが多いでしょう。
よってこれらの治療法が困難な場合、もしくは効果が得られない場合には、手術を行うという手段に出ることもあります。
10歳過ぎたら甲状腺の検査を
マラソンでもしているかの如くエネルギーが燃え尽きてしまう甲状腺機能亢進症。実は血液検査によって、健康状態が「見える化」できるのです。
具体的には『T4』というホルモン値を測定し、上昇していないかを確認します。合わせてエコー検査を実施する場合もあります。
異変に気づいたら速やかに動物病院を受診することで、早期発見につなげることができるでしょう。
余裕があれば、10歳を超えた症状の有無に関係なく血液検査をしてもらうという形でも良いかもしれません。
まとめ
甲状腺機能亢進症は「これをしたら発症する」という習慣がない代わりに、高齢の猫(概ね10歳を過ぎた猫)は皆リスクを抱えています。
元気そうに見えても密かに、そして着実に魔の手は近づいているかもしれません。「ここ最近興奮気味で攻撃性が増してきた」「やたらと水を飲みトイレの回数が増えた」「食べる割には痩せてしまう」などの症状があれば要注意です。
これらのサインにいち早く気づくためには、日頃からのスキンシップと観察が役立ちます。まだ無症状に近いけれど、甲状腺機能亢進症の症状に合致するという場合は検査を実施した方がよいでしょう。シニア期に入ったら、体調や日常生活に変化がなくても、定期的に健康診断をうけるほうがよいでしょう。
将来を悲観することはないですが、年齢的に手術が難しくなるケースは多いでしょう。早期発見につなげるためにも、よく愛猫の行動を見てあげてください。
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