長崎の“被爆体験者”「私たちは被爆者ではないのか」 岸田総理「合理的に解決」発言も直後に退陣表明 “埋もれた被爆者”の救済は?今月9日 長崎地裁判決【news23】

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2024-09-07 14:57
長崎の“被爆体験者”「私たちは被爆者ではないのか」 岸田総理「合理的に解決」発言も直後に退陣表明 “埋もれた被爆者”の救済は?今月9日 長崎地裁判決【news23】

「被爆体験者」と呼ばれて被爆者とは区別されている人達が長崎にいます。被爆者としての認定を求めて17年。9月9日、裁判の判決が言い渡されます。なぜ被爆体験者と呼ばれているのか。「埋もれた被爆者」とも言われる被爆体験者の問題に迫ります。

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「私たちは『被爆者』ではないのか」 岸田総理「合理的に解決」も…

長崎に原爆が投下されてから79年の2024年8月9日。毎年この日に行われている、被爆者団体から総理大臣への要望の席に、被爆者とは認められていない人たちが初めて出席しました。

「被爆体験者」と国が名付けた人たちです。

被爆体験者 岩永千代子さん(88)
「総理にぜひ見ていただきたい絵を持ってまいりました。鈴木さん達が描いた絵です。空が暗くなり太陽は真っ赤。家族の中に甲状腺がんや白血病などが現れるようになったなどの多数の証言があります。これが現実です。総理に申し上げます。私たちは『被爆者』ではないのでしょうか?

1945年、アメリカ軍が長崎市に投下した原子爆弾。強烈な熱線・爆風・放射線によって、その年だけで7万4000人が死亡しました。

国は原爆の影響を認める半径5キロを基本に当時の長崎市を被爆地域に指定。「被爆体験者」はその周辺、爆心地から12キロ圏内の被爆未指定地域にいた人たちのことで、原爆の影響はないとされています。

しかし広島では、被爆地域の外で「黒い雨」を浴びた人たちが裁判の判決を機に、2年前から被爆者と認められるようになったのです。

菅義偉総理(当時)2021年7月
「上告についてはしないことといたしました」

2021年に確定した広島高裁判決。「黒い雨」に含まれた放射性微粒子による内部被ばくの可能性を認めた画期的な判決でした。

判決を受け入れた国は、新たな基準を作り、遠くは爆心地から40キロまで「黒い雨」が降った地域にいた6000人以上を被爆者と認めました。

しかし救済したのは広島だけ。

面会の席で、長崎の被爆体験者は「同じような状況だった自分たちを被爆者と認めないのは憲法違反だ」と訴えました。

岸田総理大臣
「政府として早急に課題を合理的に解決できるよう指示をいたします」

「被爆者と認める」とは言わなかった岸田総理。

全国被爆体験者協議会・相談役 平野伸人さん
「総理…被爆体験者は被爆者でしょ、被爆体験者は被爆者じゃないんですか?これを見て下さい。被爆者かどうか言ってください。被爆体験者は被爆者じゃないんですか?岩永さんの声が聞こえないんですか?」

岸田総理
「一生懸命やりますので」

この5日後、岸田総理は突如、退陣を表明。救済の行方は不透明になりました。

“埋もれた被爆者”被爆体験者の訴えは認められるのか

被爆体験者を代表して発言した岩永千代子さんです。9歳の時、爆心地から10.5キロの場所で閃光と爆風を浴びました。歯茎から出血し顔が腫れ、40代で「甲状腺」の異常を指摘されました。

2007年から続く裁判の原告団長を務め、聞き取りを続けてきました。

被爆体験者訴訟 原告団長 岩永千代子さん(88)
「亡くなった…腹が膨れて死んだ。兄弟2人白血病とかガンばっかりとかね、なんでやろうと思ったんですよね」

原爆投下後、広島で「黒い雨」が降ったように長崎では「灰」が広く降り注ぎました。

被爆体験者 林田富雄さん(85)
「燃えかすが来たんですこっちに。 灰の山、農作物は灰の山」

被爆体験者 松田宗吾さん(90)
「雪の降るごと灰は空暗くなるように降ってきたんですよ」

「灰や雨を浴びて体がおかしくなった」「死んだ人もいる」という訴えは、もう半世紀続いており、長崎市も独自に証言を集めて国に被爆地域の是正を求めてきました。

その中で国が作り出したのが「被爆体験者制度」でした。

被爆体験のトラウマが原因で病気になった可能性があるとして、精神疾患に関連する医療費を助成するものです。同じ動きが広島でもあったといいます。

広島「黒い雨』被害者 高東征二さん
「広島でもあったんよ。精神的な問題にすり替えようとしたけん、それは違う。なんで『がん』で精神科行かないといけないのか

広島の「黒い雨」被害者は裁判を経て被爆者となりました。取り残された長崎。総理が口にした「合理的解決」も何を指すのかまだ分かりません。

被爆体験者 岩永千代子さん
「『合理的な解決をしたい』と内容についてですよ(厚労省に)県と市は質問されたんですかね?」

長崎県原爆被爆者援護課 林田直浩 課長
「合理的がどういうことか我々も気にはなるんですけど、今後の厚労省との調整の中で示されてくるものかなと思っております」

長崎地裁で続く裁判は、9月9日が判決です。被告の長崎県長崎市に加え、訴訟に参加している国は、「広島高裁判決に依拠した原告らの法解釈は誤っている」と反論しています。

被爆体験者訴訟原告代理人 中鋪美香 弁護士
「黒い雨と放射性降下物は実は同じなんですよ。上空で長崎乾燥してたので蒸発して放射性微粒子の状態で降ったというだけなので」

被爆体験者訴訟原告代理人 足立修一弁護士
ほぼ同じ現象が起こってる広島と長崎で、全く結論が違うのはどう考えてもおかしいんですよ」

79年間認められていない原爆被害。長崎の被爆体験者が訴える「内部被ばく」は司法の場で認められるのか…

被爆体験者訴訟 原告団長 岩永千代子さん(88)
「声も出せないで死んでいった人、この人たちの実態を絶対どこかで研究して欲しいし、深めて欲しいしね。原爆の本当の怖さ、人間がどう生きなければいけないかということの指針がね、指針がきっと(裁判)を通して示されると思う」

被爆を体験しているのに、被爆者ではない「被爆体験者」

上村彩子キャスター:
ここからはおよそ4年にわたり、被爆体験者の方々の取材を続けるNBC長崎放送の古川記者に加わっていただきます。

被爆体験者の方々の訴え、近くで取材をして聞いていて、どのようなことを感じましたか。

NBC長崎放送 古川恵子 記者:
おかしいことを「おかしい」といくら言っても通らない、それに疲れ果てているという印象です。

おかしいことの一つに、「被爆体験者」という名前も挙げられると思います。被爆を体験している者なのに、被爆者ではない。これは混乱して、皆さんをわかりにくくしていると思います。

「被爆体験者」と「被爆者」が一番異なることは“原爆の放射能の影響が認められているかどうか”です。

国は被爆体験者は放射能の影響はないとして、「精神疾患者」として扱っています。被爆体験者手帳をとれば、精神疾患に関わる病気に関して、医療費の助成を受けられますが、この手帳を取るには、少なくとも年1回、精神科を受診しなければなりません。

様々な病気が「心の問題」だとされていることに傷つき、憤っている方は多いです。これに広島との差別が拍車をかけていると思います。

喜入友浩キャスター:
そうした状態がもう何十年も続いています。そうした中で、岸田総理が8月9日、被爆体験者と初めて面会し、「合理的に解決できるよう指示をする」と発言をしましたが、その直後、退陣を表明しました。

当事者の皆さんはどう受け止めてるんでしょうか?

古川恵子 記者:
「はしごを外された、でも信じたい」そういったところだと思います。

ただ、岸田総理が「解決」ではなく「合理的に解決」という言葉にしたのは、どういう意図があったのかよくわかりません。どういう解決に持っていこうとしているのか。指示された厚労省も9日の判決内容を注視していると思います。

上村キャスター:
その判決は被爆体験者の方々にとってどのような意味を持つんでしょうか?

古川恵子 記者:
被爆体験者の方々は過去、最高裁まで争って敗訴しています。

前の裁判では、556人いた原告のうちおよそ200人の方が既に亡くなられました。再提訴した44人のうち4人の方も亡くなられています。多くの原告の方が体力的にこれ以上裁判を続けるのは難しいとしています。

少なくとも広島と同様の救済が実現すること、そして非人道的な被害の一つとして、放射性微粒子による内部被ばく、これに向き合う契機となる判決となることを期待したいと思います。

上村キャスター:
戦後79年被爆体験者の方々ももうご高齢になってきています。日本は唯一の戦争被爆国です。どのような判決が下されるのでしょうか。

==========
<プロフィール>
古川恵子 記者
NBC長崎放送 記者 長崎市政担当
被爆者・被爆体験者・カネミ油症を継続取材

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