今年度・上半期に倒産した企業の数は5000件に迫っていて、11年ぶりの高い水準となっています。特に増えているのが飲食店で、人手不足に物価高が直撃しています。一方、訪問介護の現場でも人手不足が深刻で、介護事業者は「訪問介護そのものの危機」と話しています。
【写真を見る】上半期の企業倒産5000件に迫る 銀座の老舗フレンチも74年の歴史に幕…「7割断る」深刻な人手不足で訪問介護が危機【news23】
企業倒産11年ぶりの高水準 銀座の老舗レストランも…
東京・銀座。74年の歴史にひっそりと幕を閉じたレストランがありました。フランス料理店の「銀座エスコフィエ」です。
以前利用した客
「各テーブルにバラの花が飾ってあって、料理もおいしかったけど、しつらえがすごくステキなお店でした」
1950年に創業した銀座で戦後初のフレンチレストラン。厳選された食材をつかった逸品で、多くの人に親しまれてきました。しかし…
帝国データバンク情報統括部 綱島千咲さん
「コロナ禍が終わって店舗数が増えて、競争が激化しているなかで、つぶれている、倒産している会社が多くあるとみている」
物価高や人手不足のあおりを受け、倒産する企業がいま、増えています。
帝国データバンクによりますと、2024年4月から9月までの全国の企業倒産は2023年の同じ期間と比べて約800件多い、4990件となりました。
11年ぶりの高い水準で、特に小規模な飲食店の倒産が増えています。
――お店が失われることは味も人も失われていく?
以前通っていた客
「もあるし、文化もあるし、それを育てたお客さんもだんだんいなくなっていく時代」
また、倒産する企業の特徴の一つが事業の経歴が長いことです。業歴30年以上が約1600件と最も多くなりました。
帝国データバンク情報統括部 綱島千咲さん
「リーマンショックやバブルを経験して乗り越えてきた老舗の企業が今回倒産に至ってしまうのは、物価高などの経営環境がかなり苦しいものになっていることを表している」
「7割断る」深刻な“人手不足”で訪問介護が危機
相次ぐ倒産は飲食業界に限った話ではありません。
東京商工リサーチの調べでは、2024年度上半期「介護事業者」の倒産は過去最多の95件。特に増えているのが「訪問介護」です。
髙橋秀子さん(74)。日々、午前7時から3時間の訪問介護を利用しています。掃除・洗濯・朝食の準備などヘルパーの業務は多岐にわたります。
ヘルパー
「(介護の仕事は)楽しいなとは思います。生活の中に入って、コンスタントに関われるところが結構楽しい」
30年近く訪問介護を利用してきた髙橋さん。ヘルパーはなくてはならない存在だといいますが、目下の懸念は“人手不足”です。
訪問介護を利用 髙橋秀子さん
「人がいなくてやめた会社もあったよ」
東京・新宿区の訪問介護事業所の代表は現状をこう語ります。
株式会社でぃぐにてぃ 吉田真一 代表
「新しくうちにも来てほしいという依頼が『10』 、だいたい今受けるのが『3』ぐらい。3割受けて7割はお断りする。人が単純に足りない」
これまでは新卒社員を採用してきたといいますが…
株式会社でぃぐにてぃ 吉田真一 代表
「来年入ってくる職員が採用できていない状況。会社を始めてから初めてのことなので、すごくショックを受けています」
さらに、業界を苦しめているのが今年度行われた介護報酬の改定。訪問介護はサービスの対価として事業所に支払われる基本報酬が、引き下げられたのです。
8日、国会でも…
日本共産党 田村智子 委員長
「ホームヘルパーの人手不足が深刻なところに、あろうことか訪問介護の介護報酬が減らされ、事務所の閉鎖が相次いでいます」
石破総理
「令和6年度の介護報酬改定においては、着実な処遇の改善を図ることといたしました」
事業所の代表は、「今の状況は訪問介護事業そのものの危機」だと語気を強めます。
株式会社でぃぐにてぃ 吉田真一 代表
「国が守っていく姿勢を見せてくれないと、当然就業する人もいなくなるし、自宅で暮らせる保証もなくなるし、ライフラインとしての介護は今、本当に危機に瀕していると感じる」