世界初のクローン猫として生まれた「CC」は、18年におよぶ生涯を飼い猫として幸せに過ごしました。CC誕生に適用された画期的な技術は、その後の科学技術を大きく進歩させたのです。
初のクローン猫は享年18歳
CCと呼ばれた猫を覚えていますか?
世界初の「クローン猫」として注目された猫「CopyCat(愛称CC)」です。CCは2020年3月に、腎不全のため18歳で虹の橋を渡りました。
CCは、2001年12月22日に米国のテキサスA&M獣医・生化学大学で誕生しました。その後生後6ヵ月のとき、同大学の生殖科学研究所の上級教授であるDuane Kraemer博士と妻Shirleyさん夫妻に家族として迎えられたのです。
同大のEleanor M.Green博士は、逝去当時に次のような声明を出しています。
「みんながCCの死を悲しんでいます。初のクローン猫として、この技術が健康な動物を生み出すのに効果的であることを世界に示してくれました。科学を進歩させてくれたのです」
「CCは長く、普通で、幸せな人生を送りました。Kraemer夫妻やわたしたち大学関係者、そして科学全体にとって、CCは並外れた存在でした。CCが18年間愛されたペットだったことを考えると、Kraemer夫妻の悲しみは相当なものだと拝察します」
元気なクローン猫CCが誕生
そもそもの始まりは「Missyplicity Project」でした。同大のMark Westhusin博士が、John Sperling氏(Phoenix大学の創設者)の飼い犬Missyのクローンを誕生させるため、370万ドル(約5億3300万円)の資金を使って始めた研究プロジェクトです。
この計画が報道されると、全国の人々から「将来クローンに使用できるようペットの細胞を保存してほしい」という声が上がりました。このため、Sperling氏の同僚だったLou Hawthorne氏とCharles Long博士によって「Genetic Savings and Clone社」(GSC)が設立されることにもなったのです。
こうした環境整備を背景に、クローン研究(とくに猫のクローン化の研究)が進められていきました。やがてRainbowという名前のメス猫から細胞が採取され、そのDNAを使った核移植が成功しました。
Kraemer博士らは別の猫を代理母として利用することで、2ヵ月後に元気な子猫CCを誕生させたのです。RainbowとCCは同一の遺伝子をもっていますが、発育上の要因によって毛並みや色合いなどの外見は少し違っていたといいます。
ペットの「クローン化」産業が発展
「CCの死をきっかけに、わたし自身の人生を振り返りました」と話すのは、Westhusin博士です。
「クローン技術は今では一般的ですが、当初はだれも信じてくれませんでした。CCの誕生は、科学の進歩と想像力の重要さを広く認識してもらうための重要なできごとでした。わたし自身にとっても最大の業績です」(Westhusin博士)
CCは後年、クローン動物として初の母親にもなりました。5歳のときに3匹の健康な子猫を出産したのです。子猫たちはKraemer夫妻が裏庭に作った2階建ての「猫の家」で、仲良く家猫としての生活を続けたそうです。
CCは誕生のときだけでなく、妊娠や誕生日ごとにマスコミに報道されて人々の話題になりました。この猫の存在は「クローンでも充実した健康的な生活を送ることができるし、健康な子孫を産むことができる」ことを世界に証明したのです。
「CCはすばらしい猫で、本当に楽しい家族でした。この猫がいなくなって、とても寂しいです」というKraemer博士です。
CCの誕生技術は、ViaGen Pets社が運営する世界的な「ペットのクローン化事業」のきっかけとなりました。同社は猫のクローンを3万5000ドル(約500万円)、犬のクローンを5万ドル(約720万円)の料金で受注し、誕生させています。
出典:World's First Cloned Cat 'CC' Lived 'Long, Normal, Happy Life' Before Her Death
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