ゴミの分別方法が複雑化するなかで、きちんと分別したくても、どう分別したらいいのかわかりにくいものがあります。実はこうしたゴミの中に、資源としてリサイクルが可能なものがあり、メーカー側が自ら回収する動きが広がっています。
【写真を見る】捨てないで!それゴミじゃなくて“資源” コンタクトレンズの空きケースや「おくすりシート」がリサイクル市場で“取り合い”のワケ
“回収ボックスに持ち込むだけでOK” コンタクトレンズの「空きケース」
そのひとつが、コンタクトレンズの「空きケース」です。コンタクトレンズの専門店、HOYA株式会社アイケアカンパニーでは、コンタクトレンズ本体が入っているプラスチックの下の「ケースの部分」を回収しています。
プレジデント室の川田沙央里さんに伺いました。
HOYA株式会社アイケアカンパニー プレジデント室 川田沙央里さん
「例えば、1日だけ使える『ワンデータイプ』という商品がありまして、これを使用されている方ですと、1日に両目分の2つのケースが排出されます。1カ月で約60個のケースを廃棄しているというようなイメージです」
これは「アイシティ ecoプロジェクト」という取り組みで、レンズを新しくするたびに必ず出る、「空ケース」を回収。「プラスチックごみ」として捨てたり、「燃えるゴミ」として捨てる方が多いゴミですが、これを集めてリサイクルしています。
回収方法は、コンタクトレンズの販売店「アイシティ」にある、回収ボックスに持ち込むだけでOK。どこで購入したものでも問題ありませんが、回収時には上部のアルミシールをきちんと剥がす必要があります。
HOYA株式会社アイケアカンパニー プレジデント室 川田沙央里さん
「なかなか丈夫な素材なので皆さん集めると、結構袋にパンパンに入れて持ってきてくださるので、すごく『集めた達成感はある』というふうには言っていただけますね」
リサイクル市場では「取り合い」に そのワケは“素材”にあり
では、このコンタクトレンズの空ケースは、何にリサイクルされるのでしょうか。実は、自動車の部品や、三菱鉛筆のボールペンとして生まれ変わっています。
しかも、空ケースは非常に優秀な素材で、「取り合い」になっているそうです。というのも、コンタクトレンズ自体が「医療品」なので、ケースも熱に強く、純度が高い「ポリプロピレン」という素材でできていて、リサイクルに適しているとHOYA株式会社アイケアカンパニーの川田さんは話します。
2023年だけで約98トンのケースを集めましたが、これはまだ全体のわずか2%。今後はもっと回収して、もっとリサイクルしたいとのことでした。
「おくすりシート」も“資源”に 横浜市では日本初の専用ボックスも
また、第一三共ヘルスケアでは、「おくすりシートリサイクルプログラム」という薬のシートの回収事業を行っています。サステナビリティ推進マネジャーの岩城純也さんに伺いました。
第一三共ヘルスケア サステナビリティ推進マネジャー 岩城純也さん
「プチッと出すタイプのお薬のシートなんですけども、横浜市に回収拠点があり、そちらの方に持参をしていただいて、専用ボックスに入れていただくという形で、日本初の取り組みになります」
薬の錠剤やカプセルが入ったシート(正式には「PTPシート」)の材料は、「アルミ」と「プラスチック」。
ただし、「燃えるゴミ」なのか、それとも「プラスチック」として資源として回収できるものなのかが、わからない方が多かったといいます。
自治体によっては「プラスチックごみ」に分類しているところが多い一方、大半は「燃えるゴミ」として捨てられていたようです。
これを製薬メーカーが「資源」として回収し、分離したり、特殊な加工をほどこしたりして、再生素材に生まれ変わらせます。
岩城さんは、この取り組みをきっかけに、薬のシートが「資源」であるということを認知してもらいたいと話しています。
回収場所は、横浜市内の薬局や病院など、合計102カ所にある専用ボックス。どこで買っても、どこのメーカーの薬でも問題ありませんが、錠剤はすべて取り出しておく必要があります。
開始から2年で約6トンが集まった薬局も
薬のシートは汚れも少なく、軽くて長期保管しやすいため、集めたものは現在、倉庫で処理を待っている状態だそうです。
実際に薬のシートは集まっているのでしょうか? 回収拠点のひとつ、横浜市の「ひよこ薬局」の薬剤師、鳩山宏一さんによると、「『おくすりシート』を持ってくるためだけに薬局に寄る人も増えてきた」と話します。
「ひよこ薬局」鳩山宏一さん
「ドラッグストアとかで売ってるような市販薬も対象ですし、近所のお茶会で周りの方と一緒に集めて、袋をいっぱいにして持ってくるなんて話も伺ったりします。
例えば、朝の薬だけで10種類飲まなきゃいけない患者さんが、10種類の薬、30日分あれば、もうそれだけで300錠分のシートが出るので、大量に廃棄されるようなシートがリサイクルに回せるって考えるといいことですよね。
患者さんとしても、自分が飲んでるものがまた何かになるよっていうのも、いい試みだなって思いました」
鳩山さんの薬局では、早いと2~3週間で45リットルの袋がいっぱいになるそうです。第一三共ヘルスケアとしては当初、「年間100キロ集まればいいね」と話していたそうですが、開始から2年で集まったのは、約6トン!
現在は横浜市内だけの取り組みですが、都内では唯一、日本橋にある「第一三共くすりミュージアム」で回収しているため、お近くの方は利用してみても良いかもしれません。
「ゴミの分別方法や活用法が気になっていた」という人が多いことがわかりましたが、企業側にも、こうしたものが大切な「資源」になることを、伝える役割がありそうです。
(TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」取材:田中ひとみ)