新たな変異株は死者の8割以上が子ども WHOが緊急事態を宣言の「エムポックス」震源地のコンゴ民主では日本のワクチンに期待【news23】

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2024-11-21 13:06
新たな変異株は死者の8割以上が子ども WHOが緊急事態を宣言の「エムポックス」震源地のコンゴ民主では日本のワクチンに期待【news23】

水ぶくれを伴う発疹が特徴の感染症「エムポックス」。おととしには、日本でも200人以上が感染。今年、流行しているものは子どもの致死率は5~10%とも言われています。WHOから“緊急事態宣言”が出る中、その震源地のコンゴ民主共和国を取材しました。

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「エムポックス」感染拡大の震源地へ

豊かな鉱物資源に恵まれ、急速な経済成長を遂げているコンゴ民主共和国。アフリカ大陸第2位の国土と、9900万人を超える人口を有します。

そのコンゴでいま、「エムポックス」の感染が拡大しています。首都・キンシャサの病院にある、「エムポックス」患者専用の病棟を訪ねました。

ここで治療を受けているのは28人。通された小さな部屋には、女性たちが横たわっていました。扇風機だけで暑さをしのいでいます。

記者
「病室には4人が寝ていますが、十分なスペースもなく、とてもじゃないですが快適な空間だとは言えません。治療に適した空間だとは、とても言えないような環境になっています」

女性に目をやると…

記者
「エムポックスの特徴である、体中に発疹ができています」

致死率の高い変異株が感染拡大 WHOが緊急事態を宣言

「エムポックス」は、かつて「サル痘」と呼ばれた感染症で、2022年に欧米を中心に流行。日本でも、200人以上の感染が報告されました。

エムポックスウイルスには、致死率が高いとされる「クレード1」と、致死率が低い「クレード2」の大きく2つの系統があります。

2022年に世界的に流行したのは、「クレード2」のウイルスでした。

流行は一時収まったものの、「クレード1」の新たな変異株の感染が、今年に入ってコンゴから広がっていることから、WHO(世界保健機関)が“緊急事態宣言”を発表。

今年8月にアフリカ以外で初めてとなる感染例がスウェーデンで確認されました。その後、10月にはイギリス、先週にはアメリカで確認されるなど、今年だけで2万人以上の症例が報告されています。

特に懸念されるのが、子どもたちへのリスクです。

死者の8割以上が子ども

ディヴィーヌちゃん(10)は1つ上の兄から家庭内で感染し、体中に発疹が出ました。

ディヴィーヌちゃん
「熱があるの。かゆいです」

発熱が続いたものの、今は治療を受け、快方に向かっています。

ヴィジャナ病院 ジェリー医師
「この病院ではすでに3人の子どもを看取りました。2人が生後10日、もう1人は9か月未満の子どもでした」

ディヴィーヌちゃんよりも先に感染し治療を終えた、兄のウィナーくん(11)。学校から帰ると、背中一面に発疹が出ていることに気付きました。

兄 ウィナーくん
「熱で何も食べられなかった。食べられても少しだけ」

ところが、病院に行ったのは症状が出てから3日目。母親のファローヌさんは、経験したことのない病にとまどい、周囲にアドバイスを求めました。

母 ファローヌさん
「知人が『キャッサバの葉を潰して塗れば治る』と言ったのでその通りにしましたが、症状はひどくなるばかりでした。とても苦しく、毎日泣くしかありませんでした」

ウィナーくんの症状が悪化したのは、コンゴの一部で伝統的な医療に頼る慣習が残っていることも背景にあります。

ユニセフによると、今年に入ってコンゴでは、1万5000件以上の感染例が報告されていて、死者のうち8割以上が子どもでした。

ユニセフ 保健緊急事態対応の担当
「私たちが当初から最も懸念していたことのひとつは、子どもたちの死亡率です。子どもたちは遊ぶときに皮膚と皮膚が接触するため、感染が広がりやすいのです」

子どもを救え!日本のワクチン

子どもたちを救うため、注目されているのが日本のワクチンです。WHOは19日、日本のKMバイオロジクスのワクチンの緊急使用を承認したと発表しました。

いま、子どもにも使用できるワクチンとしては、日本製のものしかありません。しかし、提供が遅れていて、接種開始の見通しはまだ立っていません。

ディヴィーヌちゃんは治療を受け、幸い快方に向かっていますが…

母 ファローヌさん
「ウイルスが子どもたちを殺しています。ワクチンを、ただワクチンをください」

母親はワクチンの必要性を切実に訴えました。

記者
「ワクチン接種を住民に周知させるための歌を作っているんです。これはワクチンがあなたの命を救うという歌です」


「ワクチンが予防する ワクチンが命を救う」

現場から

城島未来 記者:
取材した、キンシャサの病院前です。
敷地内に入ってまず目に入るのが、手を洗うためにユニセフが設置した給水タンクです。

その奥にはWHOが設置した、エムポックスの検査を行うテントがあります。今も感染の疑いがある人たちが、テントの中で検査を行っています。

そして、エムポックス患者専用の病棟です。現在、気温が31度ほどあり大変暑いのですが、空調が十分に効かないため窓が開いていて、窓の奥には患者の姿も見られます。

小川彩佳キャスター:
子どもたちの間でなぜこれほど広がりを見せているのでしょうか。

城島記者:
従来のエムポックスウイルスは性交渉などが主な感染経路とされていましたが、現在コンゴを中心に急拡大している新しいタイプのウイルスは、感染力が非常に高いとされていて、会話中の飛沫やベッドシーツなどのリネンを介した感染も懸念されます。
そのため兄弟同士や、子ども同士、家庭内で感染する例が相次いで報告されています。

このウイルスがどのように世界に広がっていくかまだ十分に予測ができない中で、世界的なパンデミックを食い止めるためにも、今、日本のワクチンが果たせる役割が期待されています。

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