ある災いが続くことを「前門の虎後門の狼(ぜんもんのとらこうもんのおおかみ)」と表現します。
しかし、この言葉はそもそもどのような意味なのでしょうか。
今回はそんな「前門の虎後門の狼」の意味を解説します。
併せて「前門の虎後門の狼」の由来や類義語も紹介します。
「前門の虎後門の狼」とは
ここでは「前門の虎後門の狼」の意味を解説します。
「前門の虎後門の狼」の意味
「前門の虎後門の狼」は、1つの災いを逃れても別の災いに遭うことの例えです。
基本的に1回だけ災難に遭遇することを「前門の虎後門の狼」とは表現しません。
あくまでも、続けて災難が訪れることを表現した言葉となります。
そのため、2回以上の災難が立て続けに起こるような場面で使用すると覚えておきましょう。
現代でも「1つの災難から身を守っても他の災難が現れるもの」という意味で使用されます。
「前門の虎後門の狼」の由来
「前門の虎後門の狼」は「趙弼-評史」が由来とされています。
「趙弼-評史」は後漢王朝時代に権威を振るった皇后の一族を宦官(皇帝の側近)が追い払った事件などについて記した歴史書です。
そこで彼は「ことわざで言うところの『前門拒虎、後門進狼(前門に虎を拒ぎ、後門に狼を進める)』というものだ」と述べています。
中国では古くからこのことわざが使用されており、災難が続くことを「前門の虎を防いだと思うと今度は後門から狼がやってくる」と表現します。
転じて、現代では災難が続くことの表現として動詞を省略し「前門の虎後門の狼」という言葉を使用するようになったのだとか。
「泣きっ面に蜂」「踏んだり蹴ったり」とは意味が異なる
「前門の虎後門の狼」とよく似た言葉に「泣きっ面に蜂」や「踏んだり蹴ったり」があります。
しかし、両者は若干ニュアンスが変わってくるので注意しましょう。
「泣きっ面に蜂」「踏んだり蹴ったり」の意味
「前門の虎後門の狼」は「泣きっ面に蜂」「踏んだり蹴ったり」と似ています。
しかし、厳密には「泣きっ面に蜂」「踏んだり蹴ったり」と意味が違います。
「泣きっ面に蜂」は災難に遭遇している中、さらに災難に遭遇することを意味することわざです。
「踏んだり蹴ったり」も同様に災難に見舞われている中でさらなる災難に見舞われることを意味します。
どちらも「前門の虎後門の狼」によく似た表現といえるでしょう。
ただし、両者は微妙なニュアンスが変わるので注意したいです。
「泣きっ面に蜂」「踏んだり蹴ったり」との違い
「泣きっ面に蜂」も「踏んだり蹴ったり」も現在進行形で災難が降りかかっている中、さらに災難が降りかかることを意味します。
対して「前門の虎後門の狼」は1つの災難に対処したとしても、新たな災難が生まれるものという意味で使用します。
どちらも非常に似た言葉ではあるものの「災難の最中に他の災難が発生するのか」「災難の後に別の災難が発生するのか」という違いがあるわけです。
その点に注目して使い分けるとわかりやすいのではないでしょうか。
「前門の虎後門の狼」の類義語
ここからは「前門の虎後門の狼」の類義語を紹介します。
一難去ってまた一難
「一難去ってまた一難」は災難が去っても新たな災難が起こることを指します。
1つの災難が過ぎ去ってもすぐに新たな災難が降りかかることを意味するところが「前門の虎後門の狼」と同じです
「前門の虎後門の狼」も1つの災難が過ぎた後にまた新たな災難が降りかかることを意味します。
その点が両者の共通点といえるのではないでしょうか。
追う手を防げば搦めて手が回る
「追う手を防げば搦め手が回る」は災難を逃れても次々と災難が起こることを意味します。
ちなみに「追う手」は城などの正面のことを意味する言葉です。
「搦め手」は城などの背面のことを意味する言葉となっています。
つまり、敵の正面を攻める主力部隊を防いでも背面から他の部隊が回ってくることを表現した言葉となるでしょう。
その点が「前門の虎後門の狼」と共通しています。
「前門の虎後門の狼」も前門の虎を防いでも後門に狼がやってくることを表現した言葉です。
どちらも災難が続くという意味で共通しています。
まとめ
「前門の虎後門の狼」は災難が立て続けに起こることを例えた表現となっています。
もともと古代中国で生まれた言葉で、前門の虎を防いでも後門に狼がやってくることを表現した慣用句でした。
それが日本に伝わり、困難が立て続けに発生する意味で使用されるようになったとされています。
ただし、困難の最中に新たな困難に見舞われることを意味する「泣きっ面に蜂」「踏んだり蹴ったり」とは別物となります。
その点は注意して使い分けましょう。
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