兵庫県 PR会社社長に過去に15万円の支払い 斎藤知事陣営“SNS戦略”に公選法違反の疑い指摘 選挙プランナーが生解説…PR線引きは?SNS運用どこまでOK?【news23】

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2024-11-27 15:01

兵庫県・斎藤知事のSNS戦略をめぐる問題。PR会社のSNS戦略への関与はあくまで「ボランティア」だったと説明している斎藤知事。ただ、その場合でも別の問題が浮上すると専門家は指摘しています。

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“SNS戦略”の公選法違反指摘に斎藤知事側は「違法性ない」

兵庫県 斎藤元彦知事
「公職選挙法などに抵触するようなことはないと認識しています」

26日も疑惑を否定した兵庫県の斎藤元彦知事。

選挙戦で逆風を跳ね返した“SNS戦略”などをめぐり、公職選挙法違反の疑いが指摘されています。

PR会社社長のコラム
「斎藤さんへの世の中の見方を変えていく上で重要だったのが、ハッシュタグ『#さいとう元知事がんばれ』です」

県内のPR会社社長がネット上に公開したコラム。“選挙戦で自分たちがいかにSNSを活用したか”が細かくつづられています。

公選法はSNSを含む「主体的な企画立案への報酬」を“買収”にあたるとして禁止しています。

しかし、斎藤知事側はポスターデザイン制作費などで70万円あまりをPR会社に支払ったが“買収”にはあたらず違法ではないとしています。また、結んだ契約は「口頭契約」で正式な契約書は交わしていなかったということです。

斎藤元彦知事
「意見を伺ったりアイデアを聞いたりしたが、斎藤陣営、斎藤元彦として主体的に対応した。(PR会社社長は)個人としてボランティアで対応していただいたと認識している」

専門家「無償のボランティアでも問題ないわけではない」

公選法に詳しい専門家は、斎藤知事側が支払った「約70万円」の解釈について…

公選法に詳しい日本大学 法学部 安野修右 専任講師
「70万円自体が選挙運動をしたことの対価と解釈される余地はないのかなと疑問に思う」

さらに、無償のボランティアであったとしても問題がないわけではないと指摘します。

公選法に詳しい日本大学 法学部 安野修右 専任講師
「(PR会社が)兵庫県から一定の特別な利益を伴うような契約を結んでいて、(広報活動に対して)無償でいろんなことをしていたということになれば、公職選挙法の定めるところの寄付の禁止、199条の規定に反する可能性が出てくると思う」

PR会社の社長は兵庫県の3つの有識者会議に委員として3年前から出席し、県からあわせて15万円の謝礼が支払われていたことがJNNの取材で分かっています。

公選法では、県と利害関係のある人物が選挙に関して“寄付”を行うことが禁じられていて、無償で業務をやっていたとすれば、この“寄付”にあたる可能性があるといいます。

ただ、委員の報酬は工事の受注などと比べると少額で「違法とまでは言えない」との指摘もあります。

斎藤元彦知事
「(Q.“ボランティアとして選挙に関わっても違法”の見方もあるが)基本的に公職選挙法を含めた法令に抵触する事実はないと認識」

「(PR会社)ぶっちゃけすぎ」 選挙プランナーは本来、候補者をどう支える?

小川彩佳キャスター:
斎藤知事、今度は違法性を問われる事態となっていますが、どのように見ていますか。

選挙プランナー 戸川大冊さん:
率直に言って、(PR会社社長のコラムは)ぶっちゃけすぎ、こんなことを書いて大丈夫なのかと読んだときに思いました。行政書士をはじめ司業というのは、法律上守秘義務があるのでクライアントのことは開示できませんが、一般的に民間企業でも秘密は守るべきではないかと一番最初に思いました。

藤森祥平キャスター:
15年以上選挙に携わってきた戸川さんによると、選挙プランナーの仕事というのは、▼選挙のスケジュールを作り、▼活動に違法性がないか相談、▼収支報告書などの文書を作成で、こうした作業の対価として報酬を受け取りますが、それは問題ないということですね。

選挙プランナー 戸川さん:
そうですね。選挙に出るためには立候補をしなくてはいけないので、立候補のための届出書類や収支報告書を作りますが、我々は専門職ということで対価をいただきます。

小川キャスター:
具体的に、どのような議員をどう支えていくのでしょうか。

選挙プランナー 戸川さん:
あまり詳しくは言えませんが、この間の総選挙でも多数の議員をお支えしましたし、統一地方選でもお支えします。

傾向としては新しい政党の方が多いです。自民党などは組織がしっかりしているので、党がしっかりケアしますが、新しい政党や野党の小さい政党、無所属、新人は右も左もわからないということで、ペースメーカーとして伴走していくことが多いです。

小川キャスター:
真山さんは選挙プランナーを題材にした小説を書かれた経験がありますが、今回のケースをどのように見ていますか。

小説家 真山仁さん:
今回のPR会社は選挙プランナーではないと思います。SNS戦略やポスターの制作もやっていたようですが、選挙プランナーとはそのような部分的なものではなく、いわゆる外部にいる選挙参謀のようなものではないでしょうか。

つまり、選挙に勝つために作戦を練っていろいろな準備をして、選挙後には収支報告書などを作成できると思いますが、告示されると何もできなくなるので、選挙前に行うのは段取りまでです。

ボランティアであろうが何であろうが、選挙中に選挙に関わる仕事をしている人が参加するというのはあり得ません。私の取材相手も、とにかく選挙が始まったら絶対に現場には行かない、そもそも誰がやっていたかなんて絶対に言わないというのは当たり前だといいます。

「この人の成功は私のおかげです」という人は絶対にいません。そういう意味では、この問題で選挙プランナーが「ひどいことをする人」だと思われることがあれば残念です。

藤森キャスター:
戸川さんは選挙期間中は現場に行きますか。

選挙プランナー 戸川さん:
現場に行くことはありますが、スタッフと同じようなジャンパーを着るようなことは絶対にやりません。

イメージカラーのジャンパーを着て一体感を出す人もいるようですが、私は必ずスーツでバッジを付けて、専門家として一歩引いて裏方として、例えば表記がちゃんとしているか腕章をしているかなどをチェックします。今は映像に残ってしまうので、ちょっとしたミスを後々指摘されないようチェックして回ります。

選挙プランナーが語る「選挙とSNS」 運用の線引きとは?

小川キャスター:
SNSの運用について、気を付けていることもあるそうですね。

選挙プランナー 戸川さん:
「(SNS運用を)代わりにやってほしい」と言われることはありますが、代わりにやってしまうと、今回の件と同じで期間中であれば買収になりますので、基本的に外部に頼むという発想はやめたほうがいいと思います。

事前であれば何とかできますが、選挙が始まった瞬間に自分たちで回さなくてはいけなくなりますから、陣営の若い人や得意な人を着実に育てて、ポジションを持って回せるように構築していくことが重要です。

藤森キャスター:
戸川さんによると、SNS運用については、▼アカウントの立ち上げ、▼候補者の指示による撮影や画像の作成はOKですが、▼アカウントの管理・自ら投稿、▼動画の内容に関するディレクションなどはNGだということです。

選挙プランナー 戸川さん:
今までSNSを使ったことがない人であれば、アカウントを作ることすらできないかと思いますので、「代わりに作ってくれ」というのは、「電池を買ってきてくれ」とあまり変わらないので、代わりにアカウントを作成するのは良いでしょう。

作ったら「あとはやってください」とパスワードなどの権限を渡します。外から見て上手くいっていなさそうであれば、「もう少し(更新)頻度を上げた方がいいのでは」などの指摘はするかもしれませんが、ずっと持ち続けて24時間スマホを離さないとか、神経をすり減らしてやるようなことはまずありません。

真山仁さん:
準備まではOKですが、ブレーンワークになるとNGです。コンサルは(選挙が)始まる前までと決まっているので、線引きはよく分かります。怖いのであれば、全部自分でやりましょうということだと思います。

藤森キャスター:
ここのところ選挙の中で大きなキーワードになっているのがSNS戦略だと思います。SNSが選挙で使われるようになって10年以上経っている中で、これからどう向き合っていけば良いのでしょうか。

真山仁さん:
今までSNSは文字がメインで、いわゆる言葉で発信していた間は割と政治では軽く見られていました。この1、2年で動画が使われるようになり、切り取ったり加工したりできるようになりました。やはり動画は人の感情を喚起するのにすごく重要です。

ある意味、法律違反さえしなければ、どんな煽り方をしてもいい、どう作ってもいいということになってきて、今回の選挙で「SNSで動画を発信すればこれだけ効果的なんだ」ということを証明したと私は思います。

ただ、言論の自由の問題や、あくまでSNSは個人のものだということがあり、規制するとなるとマスメディアももっと厳しい規制の中に入ってしまうので、規制は単純なものではないと思います。

小川キャスター:
デマ情報の拡散や誹謗中傷などの影響がどんどん大きくなっていて大変な問題だと思いますが、どう向き合っていきますか。

選挙プランナー 戸川さん:
今回の知事選ではアカウントが停止されることが2回あったということですが、そもそもアカウントがないと発信できないので、スタート地点に立てないということで非常に問題だと思います。Xなどは一定数の通報があると、中身をあまり吟味せずに自動的にアカウントが停止されるようなことがあるので、それを逆手にとって悪用している事例もたくさんあります。

これは選挙に限らず一般のマーケティングでもよくあることですが、特に選挙では発信できないと著しく不利益が大きいので、対策をする必要があるように思います。ファクトチェックをしないと、“言った者勝ち”になってしまいます。

今の法制度でも対応は可能ですが、時間がかかりますし、実効性に乏しいので、新たな枠組みを作ることは必要かもしれません。

==========
<プロフィール>
戸川大冊さん
選挙プランナー 選挙法務など専門の行政書士
先月の衆院選をはじめ15年以上選挙に携わる

真山仁さん
小説家 「ハゲタカ」「ロッキード」など
選挙コンサルタントを主役にした「当確師」を執筆

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