【現役獣医が解説】犬の運動について|犬種による違いや起こり得るトラブル、制限された場合の対処法まで

2024-12-06 17:20

運動が大好きなわんちゃんも多く、一緒に楽しむことで飼い主さんとのコミュニケーションの手段の一つになることも多いお散歩などの運動ですが、楽しんでいる時に起きるトラブルもあります。どんなことに注意が必要なのでしょうか。

わんちゃんの好きな運動と適した犬種

アジリティトレーニングをする犬

わんちゃんは本来は野生で生活していたものを人間と一緒に暮らしやすいように改良してきた動物たちです。

かわいがり愛でるための愛玩犬、猟犬として使役を与えられてきた犬種や牧羊犬として広い大地をずっと駆け回っていたような犬種など様々です。

犬種によって得意とする運動も異なり、無理のないような運動を選択してあげることも大切です。

お散歩

わんちゃんをお家に迎えると必ずお散歩をしなければならないイメージがありますが、運動量の確保を目的とするのであれば、必ずしも必要なわけではありません。

小型犬で運動量が少ないわんちゃんの場合、室内で飼い主さんと一緒に遊ぶだけでも充分に発散が可能な場合もあります。

周りのわんちゃんのにおいや車などの生活音により多く触れて、社会に順応するためや、ずっと家にいるのではなく様々な刺激を受けるという意味で外に出ることはとても大切ですが、運動という点に関してはお散歩にこだわる必要はありません。

ただし、大型犬などの体力があるわんちゃんの場合、室内だけでは発散しきれない場合もあるため、運動が必要なこともあります。

アジリティ

広いスペースで飼い主さんの指示を受けながら、障害物をクリアしていく競技です。

本来使役犬として活躍していた犬種のわんちゃんたちは、飼い主さんからの指示を覚え、自分で考えながらお仕事をすることが得意です。

併せて、牧羊犬や猟犬などは広い大地を走り回っていた犬種であるため、体力もあり身体能力も高いわんちゃんが多いです。

おうちのわんちゃんの持つ特性を活かして、一緒にアジリティなどのドッグスポーツを楽しんでも良いかもしれません。

アウトドア

本来山間部で生活していたような犬種のわんちゃんや、古来からの野性的な本能を強くもつような犬種のわんちゃんの場合、住宅地のような歩きやすい場所だけでなく自然の多い場所でのアウトドアなども良い刺激になる場合もあります。

水場での遊びや山間部での飼い主さんとのトレッキングなどを好むわんちゃんもいます。

ただし、危険もたくさんあるため、感染予防やわんちゃん用の救命着の用意など対策を万全に行って一緒に楽しむことをおすすめします。

起こりやすいトラブル

包帯を巻く犬

運動を好むわんちゃんも多いですが、楽しい遊びにはトラブルもつきものです。

どんなトラブルに注意が必要なのでしょうか。

関節のトラブル

関節のトラブルでよく知られているのが股関節や膝関節のトラブルではないでしょうか。

小型犬であれば膝関節の膝蓋骨亜脱臼や股関節の大腿骨骨頭壊死など、大型犬であれば股関節形成不全などは歩き方にも変化が見られるのでよく知られています。

歩き方の異常を見ると骨折やねん挫などを連想しがちですが、関節のトラブルはよく見られます。

運動負荷が更にかかる条件として、すべりやすいフローリングなどの床材の場所での運動や、爪や足裏の毛の伸び過ぎ、体重の急激な増加などが挙げられます。

どんな犬種であっても、その子によって骨格は異なり、関節の形状が負荷に適さず負トラブルにつながりやすい子も存在します。

健診などで運動について注意を受けた場合は、おうちの子に負荷がかかりすぎない運動の程度を確認しておくと安心です。

また、わんちゃんに存在する関節は膝関節や股関節だけでなく、背骨や手首など小さな骨の集合でたくさんの関節が存在します。

歩き方や行動で変化が見られた場合、体の関節のどこかに違和感を感じている可能性もあるので受診を検討できるとよいでしょう。

循環器のトラブル

加齢によって機能が低下することの多い器官の一つに心臓などの循環器が挙げられます。

僧帽弁閉鎖不全などの心臓の機能や形状の変化が起こることで全身に血液を循環させることが充分に行うことができなくなることが多いです。

運動をすることで、より全身の器官に酸素を含んだ血液を循環させる必要があるため、心臓などの循環器系の器官に負荷がかかります。

そのため、過度の負荷によりチアノーゼと呼ばれる酸欠状態に陥ったり、湿疹をして意識を失ってしまう場合もあるため注意が必要です。

中高齢のわんちゃんだけでなく、先天性で生まれつき循環器に問題のある個体もいます。

気付かずに運動を続けて循環器に負荷がかかりすぎてしまう場合もあるため、定期的な健診を行なうことや、運動中の体調や様子の変化などを観察する習慣をつけると安心です。

また、健康なわんちゃんであっても肥満のわんちゃんは安静時よりも運動時の方が循環器への負担もかかります。

本来もつ心臓の能力以上に大きくなった体に循環を行なうことは大きな負荷となり、突然発作を起こすなどの場合もあります。

ダイエットのために運動をさせることは、体内の器官にも負担をかけるため危険です。

おうちの子に無理のない運動量をかかりつけの先生と相談して見つけましょう。

呼吸器のトラブル

運動をすると全身の器官は酸素を必要とし、その酸素を取り入れるために必要なのが呼吸器の機能です。

肺や気管などの機能の異常がある場合、トラブルになる場合があります。

高齢になって、気管が変性して呼吸がしづらくなることや肺が変性をして充分に取り入れられなくなり、酸欠状態であるチアノーゼなどを起こす場合があります。

健康な状態でも肥満などで気管を圧迫しやすい体型などの場合、呼吸が上手に出来なくなったり、酸素の供給が充分に行われず、呼吸困難や意識の消失などに至る危険性もあり注意が必要です。

おうちのわんちゃんの健康状態ではどの程度の運動が可能かということをあらかじめかかりつけの先生に確認しておくことは、トラブルが起こってパニックにならないようにするためにも大切です。

運動の制限が必要になったら?

おもちゃと犬

健康状態によっては運動の制限が必要となる場合もあります。

運動に対してあまり興味のないわんちゃんや、高齢になってのんびりすることも楽しめるわんちゃんであれば制限をすることもあまり難しくない可能性が高いです。

一方で運動が大好きな子や体力の発散が必要な子はどのように対応したらよいでしょうか。

絶対安静

器官への負荷をかけないようにするため、一切の運動も控える必要がある場合があります。

ケージレストとも呼ばれますが、絶対安静で運動を控えるためには狭めのケージやクレートなどが有意義です。

広い場所で声掛けをしても、しつけの面だけでわんちゃんを安静にさせることは不可能なことが多いです。

そのため、安静が必要な期間のみ、物理的に狭い空間にいてもらって必要以上に動けないようにすることで体を休めてあげることが期待できます。

動物病院への入院などでも、安静のために本来の入院ケージの広さを、段ボールなどで壁を作って動ける空間を狭くすることもあります。

お散歩時間を減らす

普段が活発に運動している子の場合、体調の変化が見られた時に運動量を減らすことを治療の一環としてお願いすることもあります。

例えば、関節の疾患がわかった場合など、完治するまでは絶対安静の場合もありますが、少しずつ改善してきたときに再発防止や悪化を防止するために負荷をかけすぎない程度の運動量に減らすケースや、循環器の疾患の初期であることがわかった場合などに今後の進行を緩やかにするためや急激な悪化で発作を起こすことを防ぐことを目的とするケースなどが挙げられます。

その場合、普段のお散歩時間を減らすことや、もしも排泄を目的としたお散歩なのであれば、目的の場所まで抱っこやバギーで向かい、その場で少し排泄のためのお散歩をしたらお家へ帰るということも運動制限につながります。

完全な制限が難しい場合はかかりつけの先生にその旨も相談してみることで解決策やしても良い運動の程度などを確認できる可能性があるでしょう。

室内での知育遊びに切り替える

発散というと運動を連想しがちですが、室内でも体を使わずに発散をさせてあげることも可能です。

わんちゃんにとってお散歩や運動は飼い主さんとのコミュニケーションの手段のひとつであり、飼い主さんと充分な信頼関係が築けていれば大きな楽しみや喜びとなり得ます。

一緒にいられるだけでも満足なわんちゃんもいると思いますが、中には一緒に遊ぶことで発散となるわんちゃんもいるでしょう。

そんなときに、あまり運動をせずに頭を使って一緒に遊ぶ知育遊びがおすすめです。

好きなおやつを中に入れて頭を使って取り出して遊ぶおもちゃや、最近ではわんちゃんの長けた嗅覚を活かしておやつの隠してあるところを探す「ノーズワーク」と呼ばれるおもちゃなども販売されています。

難易度も様々なので、最初から難しいものを選んでしまうとわんちゃんが楽しめなくなってしまう可能性があるため注意が必要です。

簡単な難易度のものから飼い主さんも一緒に遊んであげる習慣をつけると良いでしょう。

装具の見直しを行う

運動やお散歩が関節などの器官の負担になってしまう場合、軽減させられるような装具も販売されています。

椎骨などの問題であればコルセット、関節の体重への負荷を軽減できるハーネスや、気管虚脱などの呼吸器トラブルがある場合に気管を圧迫しづらい構造のハーネスなどもあります。

運動量が制限される可能性は高いですが、少しでも負担を軽減できるような装具を使用することで、限られた運動量の中でもトラブルを起こしにくくしてあげることができるかもしれません。

動物病院で教えてもらえる場合もあるため、かかりつけの先生に相談してみることをおすすめします。

まとめ

寄り添う犬と飼い主

人間は健康のために運動をしますが、わんちゃんの場合は飼い主さんとのコミュニケーションの手段の一つの選択肢として運動が存在します。

ただただ一日の生活の中に運動を含まなければならないわけではありません。

本来の目的を忘れず、他の方法でも充分な信頼関係を構築できるよう心がけることは大切です

しかし、祖先は野生で生活してきたわんちゃんたちなので、身体能力も高く運動を好む子たちも多いです。

運動を楽しみにする子たちにとって、いつまでも好きな運動をできるよう健康でいることは大切ですが、健康状態によっては運動をすることがトラブルにつながってしまう場合もあります。

健康状態によって適した運動量は異なります。

都度健康診断などで、おうちのわんちゃんの健康状態を把握しながら負担をかけないような運動量を維持できると良いですね。

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