呆然とした様子を指す言葉、それが「鳶に油揚げをさらわれる」です。
しかし、そもそも「鳶に油揚げをさらわれる」とはどのような状況を意味しているのでしょうか。
この記事では「鳶に油揚げをさらわれる」がどのような言葉なのかをわかりやすく解説します。
「鳶に油揚げをさらわれる」とは
ここでは「鳶に油揚げをさらわれる」の意味を解説します。
「鳶に油揚げをさらわれる」の意味
「鳶に油揚げをさらわれる」は呆然とすることを例えたことわざです。
自分のものになると確信していたものを奪われたり、大事にしていたものを不意に横取りされたりして驚いている様子を表現した言葉です。
要は驚きのあまり立ち尽くしている状況を指すことわざといえるでしょう。
「鳶に油揚げをさらわれる」の用い方・例文
「鳶に油揚げをさらわれる」は自分が大事にしていたものを奪われたり横取りされたりして呆然と立ち尽くしている場面で使用します。
・例文1:友達に好きな人のことで恋愛相談していたが、気づけばその友達に意中の相手を取られてしまっていた。鳶に油揚げさわられるというのはまさにこのこと。
・例文2:学校の遠足でお弁当を食べようとしたら突然カラスがやってきて全部持っていってしまった。みんな鳶に油揚げをさらわれた気分だった。
・例文3:職場への通勤に使用していた自転車が盗まれてしまい、鳶に油揚げをさらわれた気分になった。
このように「鳶に油揚げをさらわれる」は突如として大事なものを取られるような場面で使用します。
第三者に奪われたり横取りされる場面で使用するため、そのほとんどはネガティブなニュアンスで使用すると覚えておきましょう。
「鳶に油揚げをさらわれる」の成り立ち
では「鳶に油揚げをさらわれる」は何から来た言葉なのでしょうか。
ここからは「鳶に油揚げをさらわれる」の成り立ちを紹介します。
由来となった「鳶」の習性
「鳶に油揚げをさらわれる」は「鳶」の習性から来た言葉です。
「鳶」は普段悠々と空を飛んでいますが、獲物を見つけると素早く空から舞い降りて獲物をさらっていくという習性があります。
その姿から「鳶に油揚げをさらわれる」が生まれたのだとか。
ただし「油揚げ」が「鳶」の好物というわけではありません。
これは単に人間が神社に供えるものとして「油揚げ」があり、それ「鳶」がさらって食べていたことにちなむとされています。
転じて、現代では「鳶=他人」「油揚げ=大事なもの」という認識から「他人に大事なものを奪われる」の意味で使用されるようになったとされています。
「鳶」とはこんな鳥
「鳶」は全長60cmほどにまで成長するタカ科の猛禽類です。
大型の鳥類として知られ「油揚げ」ほどであれば簡単に持ち上げられます。
別名で「トビ」とも呼ばれ、優れた飛行能力でも知られる動物です。
実際にほとんど羽ばたかずに尾羽で巧みに舵をとり、上昇気流に乗って輪を描きながら上空へ舞い上がるなど飛行スキルは鳥類でも指折りとされます。
「ピーヒョロロロロ」という鳴き声でも知られており、日本でも馴染みのある鳥といえるでしょう。
「鳶に油揚げをさらわれる」の類義語
ここからは「鳶に油揚げをさらわれる」の類義語を紹介します。
月夜に釜を抜かれる
「月夜に釜を抜かれる」は、油断してしくじることの例えです。
これは明るい月夜に大事な釜を盗まれてしまうことなどないと油断して、実際に釜を盗まれてしまう様子から来たことわざとなっています。
転じて、迂闊だったことで被害を被りながらも「どのような状況なのか」をよく理解できず間の抜け顔をする例えとしても使用されます。
要は驚きで茫然自失としている様子を指す言葉です。
その点が「鳶に油揚げをさらわれる」と似ているのではないでしょうか。
犬骨折って鷹の餌食
「犬骨折って鷹の餌食」は、苦心して手に入れたにもかかわらず直前で他人に取られてしまうことの例えです。
これは鷹狩りの際に犬が苦労して追い出した獲物を鷹に取られてしまう様子から来たことわざとなっています。
転じて、苦労して手に入れたものを取られることの例えとなったとか。
その点が「鳶に油揚げをさらわれる」に通ずるのではないでしょうか。
まとめ
「鳶に油揚げをさらわれる」は他人に大事なものを奪われたり横取りされたりすることを意味することわざです。
いきなり大事なものを取られ、茫然としている様子を指します。
ただし「鳶」の好物が「油揚げ」というわけではないため、現代的な意味とは違うという認識で使用しましょう。
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