銀行の貸金庫に預けられていた資産を銀行員が盗み出していた問題で、16日、三菱UFJ銀行の半沢頭取が謝罪会見を行いました。
【写真を見る】三菱UFJ銀行“貸金庫窃盗”はなぜ起きた?弁護士は「捜査難航の可能性」を指摘【サンデーモーニング】
40代の女性行員が、約60人の貸金庫から10数億円相当の資産を持ち出して私的に使っていたといいます。
4年半もの間、発覚することなくどんな手口で盗み取っていたのか。そもそも「貸金庫」とは…
実際に何を入れているかは銀行側も“把握せず”
銀行内に戸棚のように並んでいる貸金庫。大きさによって年間1万6000円から3万円で借りることができますが、皆さん、どんなものを保管しているのでしょうか。
三菱UFJ銀行によれば、土地などの権利書や株式などの有価証券、預金通帳や、宝石などの貴重品のほか、アルバムや日記など“思い出の品”も保管できます。
危険物などの保管は禁止されていますが、実際に何を入れているかはプライバシーの観点から銀行側も把握していないといいます。
別の金融機関では、20年ほど前に、貸金庫に拳銃10丁と実弾1000発が保管されていたことが発覚。
2023年も、脱税で得た現金2億5000万円が貸金庫に隠されていたケースがありました。
どのように約60人の貸金庫から十数億円を取り出したのか
さて、肝心のセキュリティーですが、貸金庫のカギは資産を預けている人自身が管理しているので、銀行側で勝手に開けることはできないはずでした。
では今回、三菱UFJ銀行の行員の女性は、どのようにして約60人の貸金庫から十数億円相当もの資産を取り出すことが出来たのでしょうか。
使われたのは、絶対に使えないはずのスペアキーでした。
利用客がカギをなくしてしまった時のために、スペアキーは銀行で保管されています。
このスペアキーを専用の封筒に入れ、その封を開けたらわかるように利用客の印鑑と銀行印で割印をし、専用の機械に入れて施錠。
取り出すと記録が残るという厳重な管理です。
しかし、問題の行員は支店長代理という立場で、この機械を管理する責任者でもあったため、勝手に封筒を取り出し、スペアキーを使って貸金庫を開けることができたのだといいます。
4年半に渡り資産を無断で持ち出し 発覚が遅れた理由とは
この行員が勤めていた支店には、2024年に入り利用客から「貸金庫の中身がない」といった訴えが数件ありました。
支店長代理として対応に当たったのもこの行員で、口実を作って金品を返すなどしてその場を取り繕っていたといいますが、10月に利用客からの相談を他の行員が受けたことで深刻な事態が発覚。
4年半にわたって無断で資産を持ち出していたことを認め「投資などに流用していた」と話したということです。
「捜査が難航する可能性もある」
この行員は懲戒解雇となり、三菱UFJ銀行は警察にも相談しているといいますが、メガバンクで勤務経験を持つ椎名英之弁護士は「捜査を進めるには盗まれた金庫の中身を知る利用者本人の協力が必要だが、そもそも秘密にしたい資産を保管している場合、捜査が難航する可能性もある」と指摘しています。
ベールに包まれた部分も多い貸金庫の世界。
ちなみに、東京の貸金庫専門会社によれば、昨今、闇バイトを含む強盗事件の増加や地震などの災害に備えて、貸金庫の利用者は5年前と比べ2倍以上になっているといいます。