一度は死刑判決が確定した袴田巖さんの再審無罪判決を受けて、最高検察庁は、長期にわたった再審手続きと捜査や裁判の問題点についての検証結果を公表しました。
1966年に静岡県で一家4人が殺害された事件で死刑が確定した袴田巖さんをめぐっては、再審=やり直しの裁判が開かれ、静岡地裁が今年9月、無罪を言い渡しました。
袴田さんは裁判中、一貫して無罪を主張していましたが、再審開始が確定するまでに40年以上かかっていて、再審手続きの不備が指摘されています。
袴田さんに無罪判決が言い渡されたあと、最高検は、再審手続きと捜査や裁判の問題点についての検証作業を進めていて、26日、その検証結果を公表しました。
請求から棄却まで26年以上の年月がかかった1回目の再審請求審では、弁護側からあわせて5回の証拠開示を求められたにもかかわらず、検察側は「理由がない」として証拠を開示しませんでした。
これについて検証結果では、「当時の状況下では、検察官の対応に問題があったとは認められない」としました。
一方、2回目の再審請求審では、検察が存在を認識していなかった5点の衣類などのネガフィルムや、袴田さんを取り調べた録音テープが後になって見つかったことについて、「捜査資料や証拠の保管・把握が不十分であった」としました。
検証結果では、捜査や裁判での問題点もまとめていて、検察官の取り調べについて、「袴田さんを犯人であると決めつけたかのような発言をしながら自白を求めた」「真摯に耳を傾けたものとは言えなかった」としました。
これらを踏まえ、今後の対応について最高検は、▼最高検にある「再審担当サポート室」の体制を強化するとともに、全国の高等検察庁に同様の組織を新設し、再審事件への対応について支援・指導を行うとしています。
また、▼研修を通して、検察官が証拠開示請求に統一的な方針のもとで適切に対応できる仕組みを構築するとし、▼より緊密に警察と認識を共有し、捜査資料などの管理を適切に行うとしています。
最高検は、「検証で明らかになった問題点を踏まえ、捜査当初からの適正かつ徹底した捜査や公判審理の充実に努めるとともに、再審事件では裁判所の審理が迅速かつ適切に行われるよう真摯に対応していく」としています。
「再審制度」は刑事訴訟法に規定されていますが、審理の進め方や証拠開示などについて具体的に定められていないことから、「審理が長期化している」と指摘されています。
袴田さんの再審では、無罪の根拠となった検察側の証拠が開示されるまでおよそ30年かかっていて、袴田さんの姉のひで子さんは「『再審制度』の改正を速やかに進めてほしい」と求めています。
再審制度をめぐっては、刑事手続きについて話し合う法務省の協議会で議論が行われているほか、超党派の議員連盟が議員立法を視野に議論を進めています。